一歩目~二十歩目
1.
ちう。
わたしは、たびねずみ、です。
たび、ねずみ、だから、たびを、します。
じぶんの、ために、たびを、します。
あるひ、であったひとは、わたしに、ついてゆきたい、といいました。
ので、ごいっしょしたのですが、わたしの、たびでは、なくなってしまいました。
ので、さよならです。
よいたびを。
2.
わたしは、たびねずみ。
こよいのやどに、ゆかしたを、おかりしようとしたら、みつかってしまいました。
そのひとは、テレビ、なる、はこ、のまえで、いろんなかおをします。
なにの、においも、しないのに。
てざわりも、ないのに。
そういうと、すこしわらって、チーズをくれました。
ちう。
3.
わたし、は、たび、ねずみ。
あるひ、でんしゃに、のってたら、おとこのひとに、おどろかれ、ました。
ねずみ、だって、でんしゃに、のります。
のれます。
これが、ほんとうの、ちゅうちゅうとれいん、です。
そういったら、おとこのひと、とても、うれしそうなかおに、なりました。
ちう。
4.
わたし、は、たび、ねずみ。
ちっぽけ、なので、わたげにも、のれます。
ふわふわと、みおろす、さきには、マッチばこ、みたいな、ちいさな、まち。
あそこの、ひとは、かみさまに、だって、つくれない、りっぱな、まちだ、と、いうのです。
だれもが、じまんがお、で。
ふしぎ。
ふしぎ。
ちう。
5.
わたしは、たび、ねずみ。
たびの、あいだには、ごいっしょする、かたも、まま、います。
しかし、ほとんどの、ひとは、たびの、とちゅうで、あしを、とめます。
たびを、やめて、しまいます。
でも、いま、ごいっしょ、している、かたの、いばしょは、まだ、みつからない、ようです。
ちう。
6.
わたしは、たび、ねず、みー。
からだは、とても、ちいさい、です。
おおきな、おと、だと、ふきとび、ます。
みみ、も、ちいさい、ので、たいして、きこえない、だろう、と、いわれます。
でも、よくきこえ、ます。
めの、でるおと。
みずたまりの、あくび。
あなたは、きこえますか。
ちう。
7.
私は旅鼠。
何時もは緩慢話します。
そうしないと息が続かないのです。
身体が小さいと肺も小さいのです。
でも今日は頑張って早く喋っています。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
ちょっ、と。
……。
……。
……。
つか、れて、……。
しまい、まし、……。
た。
……。
……。
ちう。
8.
わたしは、たびねずみ。
よく、たびするなんて、すごいと、いわれます。
でも、ほんとうは、だれもが、たびしてるの、です。
あるくだけ、なら、ほうろう、です。
みたいもの。
ききたいもの。
それを、もとめること。
もくてきさえ、あれば、たび、です。
だから、あなたも、たびびと。
ちう。
9.
わたし、は、たびねずみ。
ちっぽけな、からだには、ことば、が、つまっています。
いろいろな、ひと、の、いろいろな、でんごん。
にもつは、もって、ゆけない、ので、ことば、だけ。
めいっぱい、つめこんで、ます。
ねむれない、よる。
みみをすませば、こもりうた、がわりにも。
ちう。
10.
わたし、は、たびねずみ。
なにもない、と、いわれる、むらを、みました。
ひとつ。
ふたつ。
たくさん。
でも、ほんとうは、あるのです。
かぞくや、こいびと、ともだち。
だれかにとって、かけがえの、ないもの。
ずっと、かわらず、そこにある、しあわせ。
どの、むらにも、ちゃんと。
ちう。
11.
わたしは、たびねずみ。
ちう。
……。
ときには、だれかの、はなしを、ききたいことも、あります。
けっして、おじゃまは、いたしません。
ちいさいので、いないふりも、できます。
どうぞ、ごじゆうに。
きいて、よいなら、せいいっぱい、あいづちも、します。
なみだだって、うけますとも。
12.
わたしは、たびねずみ。
そこは、とても、やせたとち。
おとこのひとが、いっしんに、つちをほって、いました。
その、うしろには、ちいさな、はたけ。
まばらに、くさが、ゆれて、いました。
よそなら、もっと、よいものが、できるのに。
かれは、ここが、いいのだと、わらいました。
ちう。
13.
わたしは、たびねずみ。
こよいは、ほしも、こおって、おっこちてくる、よる。
ぱらぱら、じめんで、おどる、ぎんいろ。
そばで、すわってる、ひとの、いきも、ぎんいろの、もやみたい、です。
さむい、よる、です。
ちっぽけな、わたしでも、あなたの、てを、あたためられ、ますか。
ちう。
14.
わたし、は、たび、ねずみ。
あなたの、たびは、いつまで、つづくの。
そう、きかれ、ました。
わたしは、ずっと、ずっと、さがして、いるの、です。
わたしと、おなじ、たびねずみ。
さがして、さがして、たびを、して、います。
はろー。
はろー。
あなたは、いま、どこに、いますか。
ちう。
15.
わたしは、たびねずみ。
みちには、いろいろな、ものが、おちています。
ほとんどの、ものは、ひろわれる、ことは、なく。
そこに、おきざりに、されたまま、です。
それは、ほんとうに、ひつようの、ないもの、なのでしょうか。
ときには、ふりかえって、たしかめて、みません、か。
ちう。
16.
わたしは、たびねずみ。
よるの、こうえんに、ちいさな、ホルンの、ねいろ。
ほんとうは、がくだん、なんだと、そのひとは、いい、ました。
まちの、あちこちで、みんな、じぶんの、パートを、えんそう、しているんだよ。
くるまの、ライトが、さみしそうな、えがおを、てらします。
ちう。
17.
わたしは、たびねずみ。
きょうも、どこかで、だれかの、おまじない。
わんさぽん、あ、たいむ。
あ、ろんぐ、たいむ、あごー。
むかし、あるところで、の、ものがたり。
ぶたいごや、で。
だんろの、そば、で。
みちばた、でも。
いまでも、ここでも、ない、ばしょに、たびする、かぎ。
ちう。
18.
わたしは、たびねずみ。
だれもいない、むらには、とけいだいが、ひとつ。
みんなが、チクタクとよんでた、それは、もう、うごかないのです。
それでも、あおい、みずのなか。
さかなたちに、かこまれて。
うろこの、ひかりを、うけて、チクタクは、すこし、わらったみたい、でした。
ちう。
19.
わたしは、たびねずみ。
ときには、たびさきで、であった、かたの、はなしを、する、ことも、あります。
まだむ。
あなたの、むすこさんは、たくさんの、はなに、かこまれて、しあわせそう、でしたよ、と。
しかし、わたしは、よいねずみ、では、ないので、うそ、だって、つきます。
ちう。
20.
わたしは、たびねずみ。
よんほんの、あしが、あれば、たびは、できます。
けれども、のりものを、つかうのも、あり、です。
とくに、うみを、わたる、ときには。
どんな、ふね、でも、いいもの。
ゆうれいせん、でも。
みためを、きに、しなければ、けっこう、きのいい、やつらです。
ちう。