閑話 新発見のその先に
その日、リリエルは新発見をしたフィロソフィアにとある交渉をしようと彼女のアトリエのドアを叩いた。
「リリエル、値下げはできないさ。その理由は君が最もよく知っているだろうね」
「ええ、ですから交渉に来ました。ここだけの話ですが、ソフィアさんに卸す雷毒竜の素材を値下げする準備があります」
フィロソフィアは体をリリエルの方に向けて、話を聞く姿勢をとる。
「それは……確かに私にとっては嬉しいが、しかし君の利益が減るだろう?」
「ですから、ここからが交渉です」
リリエルは続いて条件を提示する。
一つ、雷毒竜の加工品を値下げすること。
一つ、購入した雷毒竜の加工品の八割をアークポラリス商会に売却すること。
「これらを守っていただけるのなら、現状の末端価格の5掛け──つまり半額から37.5掛けまで下げましょう」
「つまり、鱗であれば30,000シルバーで売ってもらえるということだね?」
フィロソフィアは頭の中で利益の計算をする。
「ええ、鱗は30,000シルバーでお譲りしましょう」
「それなら戻しは45,000シルバーでどうだろうか」
「35,000では足りませんか?」
「安いな。42,000だ。これ以上は下げられない」
「42,000ですね。お受けしましょう」
これで加工された雷毒竜の素材も次第に流通していくだろう。
「リリエル、君のおかげで錬金術がまた発展するだろう。君の名を錬金術史に刻むことを私は約束しよう」
「私は私の仕事をしたまでです。安く買って高く売ることだけが、私の仕事ではないですから」
商会に帰ったリリエルは、満足そうな顔をしてログアウトをした。




