閑話 不在
その朝、セントレイアに激震が走った。
「開けろ!セントレイア憲兵隊だ!」
早朝のアークポラリス商会の扉を叩くのは、数人の成人男性の姿だ。セントレイア商業区画のアークポラリス商会本店は案外落ち着いている。
「これは憲兵殿、いかがされましたか?」
クリスは落ち着き払った口調で憲兵の相手をする。ちなみに、セントレイアでは憲兵が一般人に対しても警察の役割を担っている。
「どうしたもこうしたもない。アークポラリス商会商会長リリエルに逮捕状が出ている。今すぐ引き渡せ」
憲兵の班長なのだろうか、他の憲兵とは少し違った服装をした男が逮捕状をクリスに見せる。
「本日、会頭はまだ出社しておりません。出社次第出頭するようにお伝えしましょう」
クリスはなんとしてでも憲兵を追い返したい。
「それでは遅い。ここで待たせてもらう」
憲兵はなんとしてでもリリエルを連行したい。
結局、その日リリエルがログインするまで憲兵はアークポラリス商会の前にいた。
* * *
「ということがあったらしい」
前線組の会議で今朝の出来事を語るのは白瀬だ。
「白瀬が言うならその通りなんだろう。さて、リリエルについてどうするべきか」
「救出作戦とかどう?」
雷人の進行に、ドレミが投げかける。
「ウェスティニアにみんなで殴り込みに行こうよ」
「私は反対だ。そんなことをしてみろ。ウェスティニアだけでなく、この世界全てを敵に回すことになるぞ」
ニコラテラスは明確に反対をする。
「それじゃあ、リリエルを見捨てるということ?」
ドレミは不満を持っているのか、1段階下がったトーンで質問をする。
「そうとは限らないんじゃないかな?リリエルならきっと、何か策を立てていると思う。少しの間、様子を見てもいいんじゃないか?」
「俺もそう思う。リリエルならきっと帰ってくるさ」
雷人の考えにヴァーナが賛成する。
「それで……もしそれでリリエルが帰ってこなかったら?ゲームを辞めちゃったら?」
「そんなことはないだろう。私が思うに、リリエルはそんな人ではない。自分のやるべきことから逃げ出しはしないだろ?」
議場は既に、ドレミ派とニコラ派に分かれている。そこに一石を投じたのは、白瀬だった。
「盛り上がってるところ悪いんだけど、リリエルは自分でウェスティニアに出頭しようとしていたらしいよ。この意味、わかるよね?」
「決まりだ。おそらくリリエルは何か策を既に仕掛けている。俺たちはリリエルの帰りを待つだけだ」
それだけ言って、雷人は席に着いた。




