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みずからのふくしゅう

作者: 愛海宕

 [ワタシ]は水の意思です

普段はなるべく意思をもたないようにしているのですが、ヒトの意思が[ワタシ]を表出させたようです

みずから、ながしたものを、かえします


 ずっとずっと長い間上司からのパワハラを受け続けていた

勤務中に説教と称して仕事に関係ない悪口や人格否定を長時間、押し付けられた仕事で迎える朝、それらを心を沈めて耐えた

見かねた誰かが上告してくれたのか、社長室から出てきた上司は、周りに言われるまで気付かなかったがパワハラまがいのコトをしていたみたいだ今までのコトは{水に流して}欲しい、とこちらに笑いながら話した

怒りからくる手の震えを抑え、笑顔で会釈できたのは、心の一部を{水に流して}きたからだろうか

次の日、朝目覚めるとあらゆることが、昨日までとは違っていた

周りの景色が色づいている、いつもと同じ朝食も美味しく感じる

まるで、流した筈の心の一部が戻ってきたかのようだった

出勤すると、上司はこちらの挨拶をさえぎりながら、知らない誰かがずっと心の中から怒鳴り続けてくる一睡も出来なかった仕事を休もうにも体が勝手に動き出勤したどうしてこんな目にあわなきゃならない、などといったコトを酷い形相でまくしたてた

朝からの変化と、上司の状態から不思議と確信した、{水に流した}モノが還ってきたと

解決の助言はした、その心の声はみずからの声です、みずからの罪を認め心から謝罪することで治まるのではないか、と

上司は、罪などないだから謝ることもない調子に乗るなと言いながら顔を真っ赤にして拳を振り上げた

周りの様子も観えていなかったのか、社長含め他の社員に取り押さえられた

社長室を出て伸びをした

社長は真摯に謝罪をしてくれた、気付くのが遅くなってしまい申し訳ないと

件の上司が辞めた報告を受け、たまりに溜まった有給休暇をとる報告をした

あの上司はどこまで苦しみ続けるのだろうか、自殺は出来ないし、死ぬまでには解放されるといい

今は無理でも許していこうと思う、相手からの謝罪もなしに許すもないかもだが、前向き、吹っ切る、気を持とうと思う、休暇中にやることができたし


人の過ちは罪悪感がなかったり忘却をしても、体は憶えている、身体を構成する水に刻まれている、決して逃げられない

{水に流す}ことはもう赦されない、ゆるさない

{自ら逃げる}ことはもう赦されない、ゆるさない

未来永劫、世界に水が在る限り


そして、[ワタシ]はめをさます

こちらをみている[アナタ]の中にも





















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