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雪太郎編 雪椿が咲く雪解けの季節3



 天華(てんか)と人の子が力の使い方を教義していると数日前の時のようにまた走る足音が近づいてきている。

 一瞬止まったようだが、再開した走る足音に何故か重圧なのが混じった気がする。

「……(よる)かなー」

 天華が呟くと同時にすぱーんっと襖が開かれる。

 目が異様に殺気立って肩で息をする黒髪の女性が扉を開いて立っていた。「正解」人の子もうなづいている。

 泥だらけで引っ掻き傷や諸々を治療せずにどうしてこっちにきた?!と人の子は盛大に引いている。

「汗とか、泥とか! ともかく汚いんですから、お風呂に入ってくださーい!」

 後からついてきていた小鬼たちは夜の服を掴んで部屋から出そうとしている。

「やですー!私も人の子とあそびたいんですー!」

 ちょい吊り目気味で夜は叫ぶ。

「これのどこが遊んでるように見えるの」

「……術の行使がやったことない夜には遊んでるように見えるのかもしれません……」

 人の子のツッコミに天華は答えるのだが、小鬼たちとの口喧嘩に「雪だるま!」や「雪合戦!!」とか漏れ聞くに晴れ間のある時に遊んだことを多分、足音が止んだ一瞬の間に聞いたようだった。

 そういえばと、あの晴れ間が見えた遊びの日に認定した日に無類の遊び好きの長身の黒髪の女性、夜がいなかった気がする。

「ひと、まず!!! お風呂に入ってきてって!!」

 小鬼Aが怒った声を出した瞬間、夜は涙目になっている。

「私、人の子の為に狩に行ってたのに。人の子が寒いだろうからってあったかーい毛皮獲って来ようと思って獲物を見て厳選して頑張ったのに」

 夜は両脚を抱えて顔を伏せて涙声で呟き続ける。

「明日……、またあそぼ?」

 人の子が気を使って声をかける。

 夜は、人の子の言葉にガバッと顔をあげて人の子を見つめる「あそんでくれる?」夜は首を傾げて人の子の言葉を何度も脳内で再生しているようで、“遊べる!!!”と涙が収まり表情が明るくなる。

 恐ろしき脳内自己再生能力……。と小鬼は口には出さなかった。

「お風呂はいってきます!」とまた走り出して出ていった。

 小鬼はため息混じりに夜が走って泥を落としていった後ををかき出し汚れを拭きつつ夜が出ていった方へとまた掃除道具を抱えてついていっていた。


 お風呂ついでに治療も受けてきたらしい夜はニコニコと天華と人の子のそばに控えている。

「所で人の子って呼び方どうなんでしょう?」

 夜はふと声を出した。

「……不便は不便……」

 小鬼たちもうなづく。

「……天華様見た目は同じか少し年上くらいの見た目ですもんね」

 夜は天華を見て首を傾げている。

 確かに、この姿で他人の前で人の子、人の子と呼ぶのは抵抗感が出てくる。

「雪」

 人の子を見つめて天華は悩む。

「雪だけだと女の子みたいですよ。人々は男の子には太郎とつけたがるみたいですよ!」

「そういえば多いね」

 小鬼たちは喋り倒している。

雪太郎(ゆきたろう)?」

「……」

 天華の言葉に人の子は氷のような色の目を見開く。

 小鬼たちもうなづく。

「雪太郎でいい?」

 本来であれば生まれたその時に両親から貰えるはずの最初の贈り物のはずだった名前なのだ。と天華は人の子を見て問いかける。

 両親から最初の愛情である名前が欲しかったのだろう。天華を見つめる人の子は嬉しそうにはにかんでゆっくりとうなづいていた。

「雪太郎が良い」と人の子は嬉し涙を流して呟いたのだった。

 そうして雪太郎は名前の問題提起は夜だとしても、天華からの最初の愛情を貰ったのだった。


 天華から名前をもらって次の日、晴れ間が出てきたので“夜が勝手に”遊びの日に変えた。

「まぁ、約束は約束ですから」

 天華は笑いながら了承をしていた。

 桜の色が目の端に写り天華は出入り口を見た。

「姉様?」

「珍しいな。この場所に日が差すのは」

 煉華(れんげ)は天華の隣に歩いてきて座る。

「貴重な晴れ間ですからね。遊び盛りの子達は大事な休みです」

 天華は“夜も混じってますが”と笑っていう。

「人の子も混じってるな」

「ああ、雪太郎ですか?」

 天華の言葉に煉華はうなづく。

「……いつか、夢茨(ゆめじ)とあわせてみたいな」

「仲良くなれるか不安ですね」

 親目線で2人は話しているのだが、目線に気づいた雪太郎は天華を見た。

「すきありぃー!」

 夜が天華を見ている雪太郎に目掛けて雪玉を投げるが雪太郎の目線の高さの所、顔をスレスレに通り過ぎていく。

「夜、当たってない」煉華は笑いを噛み殺しながら呟いていた。

 雪太郎は手に持った雪玉を夜に向けて投げつけ、それが見事に夜の顔に当たっているようだ。

「いったー! ちょ、氷で包んでるんですけど!? これどうなの?!」

 夜が騒いでいる中で雪太郎は天華たちに近づいていた。

「お前が雪太郎か……」

 金の眼が雪太郎を見た。

「雪太郎。私の姉様の煉華です」

「……よろしくな。 天華引きこもりだからどうにか外に連れ出してやってほしい」

 煉華は雪太郎に手を差し出す。

「よろしくお願いします」

 雪太郎は手を握り返して言っていた。

「天華の顔を見にきただけだから……っと忘れる所だった。……夜を貸して貰えたらと思ってきたんだ」

 煉華は天華を見て問う。

「夜をですか?」

「うん、強くなりたいって奴がいてな、私と月だけじゃ動きが読めるから、別の交流してない奴をと思ったら夜しか浮かばなくてさ」

 天華は悩む。

「あの子、手合わせに関しては手加減できませんけど」

「……」

 天華の言葉に煉華は少し悩む。

「手加減ない方が鍛えられるというものだ」

 前向きの言葉にして夜を手合わせ相手に引き合わせようとしているのがわかる。

「つい先日、熊くだして来たのですが……問題なければ連れていっても良いですよ」

「……どんだけ潜在能力隠してるんだよ。あいつは」

 天華の言葉に煉華は“下手したら月より強いんじゃないのか”と夜を見て考え始める。

「……また連絡する」

 煉華は屋敷から出ていったのを天華は“手合わせ相手大丈夫なのかなぁー”と遠くなる煉華を見送っていた。

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