タイトル未定2025/05/04 22:12
煙草を吸った事はないです。しかし急に煙草を吸い、かっこ良い人が書いてみたくなりました。
2050年の東京、世界は確実に便利なって来た。
自動運転は、事故を起こす確率が格段に減った。しかしそのためには、最新の地図を読み込ませる必要があり、天気を毎日読み込ませるためにも、毎回、人間が作業をする必要があった。
一時期それらの全ての情報が、自動ダウンロードされていたらしいが、そこにバクが入り込んだ。その結果、多くの車をイカしたオブジェしてしまった為、そうなってしまったらしい。
だから今、自動的にダウンロードされているのは、厳つい警備体制のプログラムが同時流されている、交通情報だけになっている。だからこの時代でも、開発当初のカーナビの様ような緩やか開発向上であるらしい。
その中で驚くのが、およそ2割の人間が、ダウンロードの手間を惜しんで、自分で車を運転しているらしい。
車を最初から自分で、運転しょうとする人間は最初から除いている状態でね。人は確実便利な暮らしの中に居るが、それとともに別に新たな手間が加わって来ている。
そしてそれは今日、俺の身に起こった。
今日は5月4日は、親父の誕生日であった。母は買い物に行き、俺1人の台所。だから1人煙草を吸っていた。俺が生まれ時から変わらないキッチンで、1人換気扇の下で煙草を吸う。
勝手に火を調整してくれるガスコンロや、皿の下洗い不用、食器洗い機のメンテナンスも自動で行われる物まで幾らでも、新製品が出てきている。しかしうちの母は、そういうのは嫌いな人間で、もちろん自動運転の車も乗らない。
「一から自分の手でやらないと、やっぱり手作りって気がしないのよ」
そう言って、俺がプレゼントとした米を適当にいれるだけの炊飯器を、勝手に親戚にあげてしまった。それなら俺が使うのに。そんなキッチンを見ながら換気扇の下で煙草を吸っていると……。
「ただいま」玄関から声がする。5つ下の麻美が大学から帰ってきたようだ。
騒がしい物音との後に、「うん? お母さーん、お兄ちゃん帰って来てる? ちょっと、本当に臭いんだけどー」
麻美は、明らかに苛立ちの混じる。声でそう言った。
そしてドンドンドンドンと、怒りを滲ませ歩いてくる。
「お兄ちゃん! うちで煙草吸うのを辞めって言ったよね」
麻美は白のブラウスに、生地をふわふわさせた淡い色のピンクのミニスカートを身につけていた。
「麻美、可愛い服を着ているな」
「今は、そんな話しをしてないよ、お兄ちゃん」
妹の言葉から少しだけトゲが抜け、コンロにもたれかけ、後ろに両手の指をかけている俺の横に並ぶので、煙草を携帯用の灰皿に片付ける。
「これでいい?」
「出来たら、煙草をやめてほしい」
「出来ない」
そう言って俺がリビングへ行き、ソファに座ると、麻美も追いかけて俺の横にポンと言う感じに座った。
「体に悪いっての知ってる。運命がどう転がるかわからないなら、煙草を吸って死にたい」
「じゃあれやって! 『死んじゃった?!』」
「あぁ……?」
『死んじゃった!?』は、2050年、便利な世の中に便乗したようなアプリだ。世の中は確実に便利になって来ている。しかしその中で革新的な分野があった。それは日本では体感型ゲームであったらしい。
そしてある日、ネットの海の中『死んじゃった!?』がアップされていた。
ゲームを自分へとつなぐと、モクモクとした。霧の中で階段を上がる、自分に気付く。そして自分が死んでいる事に気づくのだ。生前の重い後悔に苛まれ、天国の門の前で、泣きながら悔い改める。
そうすれば自分のイメージ通りの神の使いが現れて、ログアウトを促してくれるというものだ。ゲームからログアウトした人々は、それこで生まれ変わる、とまではいかないが新しい価値観で人生を歩める。らしい……。
それをネットの海から探し出し、使用した奴もびっくりするが、そんなびっくりする奴が多かったらしく。今、結構なブームになっているようだ。
「煙草を吸えなくなって、後悔していたらどうするんだ?」
「とにかく、やってみてお兄ちゃん!」
俺は煙草を辞めてって話しが、気持ち良く終わるなら……って軽い気持ちで、それを使用した。耳の前に、2つペタペタと機材をはるのは冷たかったが、まぁそれだけだった。
そして俺は死んでしまった。理由はわからない。
「煙草のせいかもしれない」
そんな重い気持ちを胸に抱えながら、階段を歩く。
白い階段は、もうすぐ終わりを見せている。心なしか、いつもより空気が旨い様な気がする。煙草を吸わなけば、ここまでとはいかないが、もっとマシな空気が吸えていたかもしれない。
そう思いながら辿り着いたのは、扉と男がただ立っているだけのステージ。
「現世はどうでしたか?」
真面目だけが、取り得えなような黒髪と眼鏡の男。彼は、俺にそう言った。
「煙草はすべきではなかった……。だが、待ってくれ。よく考えたいから、煙草を吸ってもいいか?」
「はははは、今日、1番、面白い返事が聞けたので、吸ってもいいですよ。本当に人間は変わっていて、面白い」
その男が了解したので、煙草を吸う。口の中に苦味が混じる。煙草の煙も最悪だ。
だが、最悪の煙の向こうに、今やカビのが生えた様な、アンテックな格好良さがあって嫌いじゃない。
「ところで、うっかり確認し忘れたけど、アンタは不死身で副流煙とかには無関係なんだよな? 違ったらすまなかった」
「いえ、僕はそこの階段からここの床までの創造主であり、ただの人間です。しかしネットの上からでは副流煙は届きませんよ」
「あぁ、それは良かったが……、ここは死後の世界じゃないのか?」
「目覚めれば全てわかります。私の事は覚えていないでしょうが……。では、ログアウトはこちらです。どうぞ、煙草の吸いすぎに気をつけて」
男は、そう言って古びた木製の扉を開くと、その中から眩い光が放たれた。
ふたたび目を覚ますと、懐かしの実家のリビングで、妹がニヤニヤと、そして少し心配そうに俺を見ていた。
「どうだった? お兄ちゃん」
俺は帰って来ただろう、母親のローストビーフの匂いに埋もれながら、少し考える。
「麻美……少し、考えたいから外で煙草を吸って来ていいか? 30分、煙草の煙が消えたら帰ってくる」
「え?! 煙草なの? お兄ちゃんには煙草での後悔とかないの? 呆れた……」
そう麻美は言い、心底呆れた顔で言った。そう言うのもわかる。
「俺は格好悪くてもいいよ。だが、あのステージでも、煙草を吸うのはやり過ぎた。神が言うのだから、少し気をつけよう」
「へー、お兄ちゃんも改心とかするんだね」
そう、麻美が言ったが、俺の言った神は、昔の言葉の神キター! 神降臨! ってな感じで使われていた神だが、あんなプログラム描けるような人物には、敬意をはらいたい。
たから彼の助言を聞くのと、煙草に支配されつつある、俺にはあまり格好良さはないなと思ったからだ。
俺はまんまと流行に乗っかり、科学の便利さに煙草に関する自分の醜態を見せられ、感心する事になってしまった。本当に科学の進化の中にある煩わしさには辟易する。
せめて、あの扉の前に立っていた男が、0と1の作り出した者ではなくあって貰いたい。
終わり
見ていただきありがとうございます。
また、とこかで。