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魔法図書館の日常  作者: 佐倉涼@もふペコ料理人10/30発売
第二章 エルフの少女と滅亡の魔法都市

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エクレバー冒険記 ネイト・クレバリー著①

 エクレバー冒険記は、タイトルが表す通りに冒険物語だ。


 十五歳のエクレバーという少年がある日、幻の宝石を求めて旅に出るところからはじまり、旅の途中にさまざまな出来事に巻き込まれ、さまざまな種族と仲良くなる。

 そこには楽しいこともあれば辛いこともある。


 一人称で語られる物語は終始軽快で、エクレバーの心情が常に描かれているので物語に没頭しやすい。


 エクレバーは心優しい少年で、争いに巻き込まれても敵の命を奪うことに抵抗を感じ、どうにかして和解できないかと方法を模索する。剣や魔法を使うことも出来るのだが、それで誰かに致命傷を与えることを恐れてあまり使わずにいた。

 旅の途中で立ち寄った花の妖精の村では、山に恐ろしい竜が住み着いて困っているという話を聞く。竜はしばしば村にやって来ては、大きな足でどしんどしんと村を踏み荒らし、雄叫びを上げては妖精たちを脅かしているらしい。そんな話を聞き、エクレバーは竜に会いに一人山に登る。


 山で待ち受けていた竜はエクレバーを威嚇したり攻撃したりせず、むしろ歓迎してくれた。


 エクレバーは竜の喋る言葉はわからないが、どうやら竜は一人で寂しく、友達が欲しかったらしい。妖精の村に降りて行ったのも怖がらせるつもりはなく、むしろ仲良くしたかったようなのだが、うまく伝わらなかったようだった。

 こうしてエクレバーは寂しがりやの竜と友達になり、以降は竜と旅をする。

 妖精たちは誤解していたことを謝り、もし旅の途中で何か困ったことがあれば力になると約束してくれる。


「いいなぁ、私も竜の背中に乗ってみたいなぁ」


 ここまで読んだエセルは栞を挟んで本を閉じ、そんな感想を口にした。

 そういえばこの下りは以前にも読んだことがある。

 あの時は読みながら寝てしまい、竜の背中に乗ってエクレバーと旅をする夢を見て、そしてベッドから転がり落ちたのだった。

 恥ずかしい記憶が蘇り、エセルは一人むずむずとした気持ちになる。


「エセルさまー、お昼の時間です」

「もう待っていたのです? そんなにお腹が減っていたのですか?」


 昼食の時間になったらしく、ロフとロネがぴゅうっとフィカの家の方角から飛んできた。

 柳の枝を編んで作ったバスケットも一緒に飛んできている。


「お外が気持ちよかったから、ここで本を読んでいたの」

「なるほどです」

「確かに今日は日光浴にちょうどいいのです」

「ロフは日中はできれば、葉っぱがしげる木の枝に留まって寝ていたいですが……」


 エセルに同意するロネとは違い、フクロウのロフは日差しに眩しそうに目を細めている。


「ぽかぽかお日さまは気持ちいいのです。あたたかな地面の上でゴロゴロしたいのです」


 ロネは小さな翼をパタパタと動かしてテーブルの上に着地すると、四つ足を揃えて行儀よく座り、ついでに尻尾で前足をくるんと巻き込んで目を細めた。その様子はごく普通の黒猫と変わらない。


「お昼自分で食べるから、ロフもロネも寝ていていいよ」

「本当です!?」

「やったなのです!」


 二匹の使い魔は「やった♪ やった♪」と喜びのダンスを踊り出した。

 エセルは二匹をニコニコと見て、バスケットの中を覗いた。瓶入りの飲み物とパンが二つ。トーストしたパンの間にたっぷりの卵が白いソースで和えられた具材が挟まれていた。手に取ったエセルはぱくりと口にして、そして目を丸くした。


「このソース、初めて食べた! ベシャメルソースとかホワイトソースとは違うんだね。なんていうの?」

「これは、マヨネーズです! 最近ニンゲンの街で流行っているらしいです」

「フィカさまがレシピを持ち帰ってくれたので、再現したのです」

「へええ、マヨネーズ……」


 濃厚な卵の味が感じられつつも、少しの酸味があるのでさっぱりしていて食べやすい。

 エセルは夢中になってパンを食べ、瓶入りのエルダーフラワーのジュースも飲んだ。

 味わいつつ昼食を終えると、いつの間にか姿を消してしまったロフとロネを探した。

 ロフはローラスの枝に留まってうとうととしているのがかろうじて見えた。木の葉にまぎれているが、よくみると白い翼がチラチラとしている。

 ロネはエセルの足元で丸くなっていた。先ほど口にした願望通り、お日さまがよく当たる地面の上で体を温めながら一眠りしているのだろう。


 二匹のそんな様子を見ていたらなんだかエセルも眠くなってきた。

 大きなあくびをしたエセルはバスケットをどかし、机の上に突っ伏す。

 腕を枕にして頭を乗せたら、心地よさに身を任せて、そのまままどろみの世界へと引き込まれていくのだった。


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