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魔法図書館の日常  作者: 佐倉涼@もふペコ料理人10/30発売
第二章 エルフの少女と滅亡の魔法都市

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修復作業の仕上げ④

 そして翌日、待ちきれなかったエセルはいつもよりも早起きをし、いそいそと朝食を取り(今日は焼いたトマトとベイクとビーンズにコケモモのジャムをたっぷりと塗ったトーストを食べた)、それから駆け足で森を抜けて魔法図書館へと行った。


「おはようっ。メアリーさんいる!?」

『もちろん、いますことよ』


 息も絶え絶えのエセルとは違い、メアリーが至極優雅に奥からやってきてエセルを出迎えてくれる。


「本、出来上がったかなぁ」

『ええ。先ほど様子を見たのですが、糊も乾いているようですし、きっと大丈夫でしょう』


 いつもはマールにどんぐりをあげるところだが、それすらも忘れて図書館の奥へとすっ飛んでいった。足元で「ヂィィ!」と怒りの声を上げながらマールがちょろちょろしているけれど、「あとでね!」と言う。

 作業机の上には昨日同様、重しをした『エクレバー冒険記』が静かにエセルの来訪を待っていた。

 エセルは少しドキドキしながら重しがわりの本をそうっと外し、本を持ち上げ、そして開いてみた。


「わ……くっついてる!」


 あれほどまでにボロボロだった本は見事に復元し、本来の形となっていた。

 ぱらぱらっとめくったエセルは感動し、本を掲げてその場でくるくる回り出す。


「すごいすごい! ちゃんと本になってる!」


 エセルが直したものなので、図書館に所蔵されている魔法書に比べたら形はいびつだが、それでもきちんと直せたのだ。


『初めてなのにここまで綺麗に直せたのは、エセルさんの素直さと根気強さのおかげですわ』

「えへへ……嬉しい。メアリーさん、色々教えてくれてありがとう」

『こちらこそ、楽しいひとときを過ごせて満足ですわ』


「今日はこの本を読んで過ごそうっと」


 そうしてエセルは、ふといいことを思いつく。


「そうだ! 天気がいいから外で読書しようかな」


 最近は図書館にこもりきりだった。フィカにもたまには外に出て息抜きをした方がいいと言われたし、一石二鳥だ。

 エセルは完成したばかりの本とフィカと一緒に作った栞を持って、図書館の外に出た。

 図書館のすぐ前にはお昼を食べたりお茶会をしたりするためのテーブルセットがある。ここならば読書をするのにもってこいだ。

 朝晩は冷え込む日も増えたけれど日中はまだまだ日差しが暖かく、過ごしやすい。瑠璃色のワンピースの上からケープを羽織れば問題なく外にいられる。

 図書館前のテーブルはちょうど木々がまばらに生えていて、木漏れ日が気持ちいい。

 エセルはいつも座っている方の椅子を引いて腰掛けた。視線をまっすぐ前に向けると、大地と一体化しているドライアドのローラスが見える。今日も今日とてリスたちがせっせとローラスの足元にドングリを運び込んで隠していた。リスの数が増えている。ローラスの周りはきっと居心地がいいのだろう。

 エセルは足元でリスを遊ばせるローラスを眺めつつ、『エクレバー冒険記』をぱらりとめくった。

 前回読んだのがどこまでか忘れたし、結構時間が経ってしまっていたので、最初から読むことにする。

 こうしてエセルはメイホウの森を遠く離れてエクレバー少年とともに束の間の冒険の旅へと出たのだった。




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