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魔法図書館の日常  作者: 佐倉涼@もふペコ料理人10/30発売
第一章 エルフの少女と魔法図書館

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「本喰い虫」駆除大作戦③

 エセルはベレー帽から麦わら帽子に被り直した。日除けにとロフとロネが用意してくれた麦わら帽子は、バタフライブルーベルをドライフラワーにした飾りがついていて可愛らしいものだった。帽子のツバに沿って巻き付けられた青いリボンは見た目にも涼しげだ。

 メイホウの森は、エセルが暮らしていたであろう森よりもおそらく暑い。

 エセルは今まで、歩いているだけで汗をかくという経験をしたことがなかったと思う。しかしここ最近では、歩いているどころか日向でじっと立っているだけで汗が噴き出してくる始末だった。

 幸い木陰は温度が低く、吹く風はよく冷えているので助かっていた。フィカの家から魔法図書館まで毎日木陰を選びながら歩く。影なのでそうそううまいこと続くわけもなく、影が途切れたところは全力で走ったり、ジャンプしたりしながら歩いていた。そんなことも楽しい。

 今はフィカが相変わらずの速度で歩くので、置いていかれないようついていくのに必死でそんな余裕はないけれど。

 フィカは森の中を月湖の方角に進んでいて、この辺りにはすっかり友達になったユニコーンが住んでいるのだが、今日は姿を現さない。

 フィカはユニコーンと相性が悪いと言っていたからそのせいなのだろう。エセルがこの辺りを歩いているといつもならすぐに駆け寄ってくるのに、気配すらなかった。

 たたた、とサンダルを履いた足で懸命に追いすがるエセル。ちなみに服も夏用に変わっている。スカート部分は春に着ていたケープ付きのワンピースと同じサファイアブルーだが、袖にフリルのついたブラウスは白で、爽やかな色合いと薄手の生地が夏にぴったりでとても気に入っている。

 そんな夏の装いなのはエセルだけではなくフィカもで、フィカは赤いスカートに黒い袖なしブラウスという格好だった。デザインは似ているが、やはりフィカのものよりフリルは少なく、代わりに刺繍が多い。細部を見ると違うのだがぱっと見似ているこの服装は「お揃いコーデ」というらしい。ウキウキ顔のフィカが服をくれた時に教えてくれた。

 ちなみにローラスは春と変わらない白いローブ姿だ。

 彼の場合、服は人化した時に自分で魔法で再現したものらしく、年がら年中同じ服装でいても問題ないのだとか。初めて人化した時は素っ裸だったらしく、大層驚かれたのだと言う。

 森の中は春よりも木々の葉が青々と繁り、春とは異なる花が咲き誇っている。色とりどりの花を横目に、フィカがずんずん森の奥に進んでいき、立ち止まった場所はだいぶ草木が生い茂った、一段と鬱蒼とした場所だった。エセルの背丈ほどもある草が生えていて、埋もれてしまいそうである。


「ここがいいわ」


 フィカはそう言うと、本喰い虫の入った籠を手頃な木の枝に麻をより編んだ紐で括り付けた。宙ぶらりんになった籠の中には未だ気絶したままの本喰い虫が入っている。

 フィカが籠の蓋を開けて、蓋の部分に呪文を施した。前までなら聞き取れなかったであろうそれが、今のエセルにははっきりと内容が理解できる。


「【ルーンの力を示せ。内から外への逃亡を許さず、侵入せし者を捕らえ、閉じ込めよ】」


 残りの二つの籠も別の木に括り付けて同じ呪文をかける。


「これでいいわ。あとはエキナリウスがかかるのを待つだけよ」

「どのくらいで罠にかかるの?」

「早ければ数時間、遅い時には数日ね。この辺りに住むエキナリウスが獲物を探して土の中から出てきて、本喰い虫の匂いに気がつくのを待たないと」


 どうやら今すぐに捕獲ができるわけではないらしい。


「アタシは明日の日中、用があって出かけるから、エセルちゃんとローラスで確認お願いね」

「ええ」

「はいっ」


 翌日、ローラスと二人でこの場所を訪れることが確定した。


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