6.『ダンジョン:迷彩の遺跡:3』
<迷彩の遺跡 地下第二層>
ウロウロと彷徨い続けること約30分。
最初のうちは和気藹々としていたが、20分を超えたあたりから誰も口を開かなくなった。
「シエルサーン?そろそろ迷い始めて30分なんですけど?」
痺れを切らした俺が話す
「…うん、いや……みんなごめん」
足を止め、一言目からだいぶ間を空けて俺たちへの謝罪が飛んできた
「やっぱ迷った〜?シエルぴさっきからずっとおんなじとこぐるぐるしてるもんねっ」
悪意なく容赦なしにぶっ刺しにいくニナ。えげつねぇなと考えていたらベルがニナの頭を軽く叩いた
「いたっ!ベルたゆそんなに怒んないでよ〜!」
頭を抑え涙目で訴えるニナにベルはぴしゃりと言い放つ
「容赦なく人のこと刺しにいくの悪い癖だから治せって言ってるでしょ」
「むぅ〜、そうだけどさぁ〜」
ニナはぶーぶー文句を言う
「…あはっ、ベル、私は気にしてないからそんなに怒んないであげて…。ふふっ」
「シエルまで…はぁ…。とりあえず、この状況どうしようか」
呆れため息をついたベル。思考を切り替え現状をどうすべきか考え出した。
「ん〜、ホントどうしよう。私も正直ここまで迷うとは思ってなかったし」
シエルも考え、結局全員がこの状況をどうにかしようと考える。
「…あ。」
突然、アカリさんが声を上げた
「ここ、もしかしてミミクリーパピヨンの生息地帯じゃないですか?」
「…その根拠は?」
シエルが聞き返す
「この状況からの憶測でしかないですけど、まず前提としてミミクリーパピヨンは環境に擬態して、その中に迷い込んで出られなくなった生物を捕食する種族です。それで今私たちは30分も同じような場所をぐるぐる回っていた…。つまり、ミミクリーパピヨンの擬態によって外に出る道がわからなくなっている、という考察です。…どうでしょうか?」
「…なるほど、たしかにそうだね。ミミクリーパピヨンなら燃やせば狩れるかな」
静かにアカリさんの説明を聞いていたシエルは納得し、旗を構える
少しばかり息を吸って。
「『神秘の炎』」
直後、火が廻る。バサバサと大きな音を立てて飛び立つ巨大な蝶。
1匹、2匹程度だと思っていたソレの数は10を超えていた
「えー…思ったよりいるじゃん」
シエルがだるそうに声を上げる
「なぁシエル、これ燃やし尽くせるか?」
俺はシエルに問いかける
「できないわけじゃないけど燃やし尽くす前に私たちが死ぬね。」
淡々と告げられる重めの現実。
「死ぬのはやだ〜!!」
駄々を捏ねはじめるニナ
「死ぬの嫌なら頑張ろうね。総員、戦闘準備!」
号令、張り詰める空気。
己の口角が上がっていくのを感じる
「敵はミミクリーパピヨン12匹。数は多いけど虫と大して変わんないから狩りきれると思うよ。前衛はベル、ニナは支援。ヒロは私の護衛ね。
ハルノアカリ、あなたは私たちの後ろにいて。」
シエルの指示は半分ほどが右から左へ流れた
「りょーかい!」
「「了解」」
「わかりました…!」
各自、配置へついて。
「戦闘開始!」
号令、開戦の合図。直後、異生物へ放たれた無数の弾丸。7発ほどが蝶の翼を撃ち抜いて血の雨を降らし、辺りを緑に染め上げる
蝶は血みどろになった翼を羽ばたかせ風を起こし、あと少しで弾丸が己の体を貫くのところでその力を失わせていた
「ッ、あ!外した、ベル!」
声高にニナが叫ぶ。
「見えてるよ!気にしないで!」
ベルも叫び返す。大声を出すような距離ではないが、咄嗟に出る声なんてそんなもんだろう。
もはや捨て身の勢いの蝶がベルに突進をしかける。彼の身長の2倍の体長の生物へベルも走っていく。そしてその勢いのまま蝶の首に剣を振るった。
「…よし、1匹目!」
蝶の首を切り落とした彼の剣には大量の緑の液体、蝶の血液。
「ベル!まだ気を抜くな、残り10匹!」
上司の指示。ベルは気を引き締め直したようだ
「…厳しいかな、これ。」
独り言か、意見を求める言葉か。判別のつかない声色で話すシエル
「まだここでヒロを出すのは、いや……。」
思案し、1人呟き続けるシエル
「…あ、そうだ、こうしよう。」
彼女は何かを閃いたかのように声を上げた
「ヒロ、戦闘準備。」
…俺の出番だ。
くじらのはらです。数日更新なくてすみませんでした
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