閑話:《『始まりの軌跡』:旧い記憶》
今回はいじめの描写がガッツリあります。
フラッシュバックを引き起こすおそれがありますので、
苦手な方はブラウザバック推奨です。
「なんだよこの白い髪!wwwwwwおばあちゃんかよwww」
笑いながら髪を引っ張られる。
「痛い、やめて!」
「やめて、だってwww日本人じゃないくせに日本語話すなよwwwwww」
…また始まった、いつもの日常。
私はシエル。シエル・ロエ・オンプラント。小学四年生
私はずっといじめられている。
転校してきた小学二年生の頃、白髪で青い目と言うだけで、その容姿だけでやんちゃ坊主に目をつけられた。教師もクラスメイトも見て見ぬ振り。
最初のうちはものを取られたり、隠されたりだけだったけどその行為もだんだんエスカレートして。
今では机に落書きをされるのなんて日常茶飯事。
髪を引っ張られて、切られて、殴られて。なんていつもあること。
貰ったヘアピンを少しつけるだけで「おばあちゃんなんだからこんなの要らないだろwww」って笑われて、乱雑に私の髪からピンを外して校庭に投げられる。
給食に虫やゴミを入れられて、食べることを強制される。
下着を脱がされて、何かを入れられたこともある。
この間なんかは「髪黒くしてやるよ」って言われて笑われながら墨汁を頭にぶっかけられたし。
最初のうちは頑張って暴れて抵抗したけど、それももう疲れたし。そんな仕打ちにはもう慣れたから「掃除大変だなぁ」とか「お母さんになんて謝ろうかなぁ」とか。
そんなことしか考えなくなった。
そんなとある日。
今日もまた同じようにいじられ、なじられるのだろう。
ドアを開け、教室に入り、机へ辿り着く
机には"バカ!""学校来んな!""死ね!"などその他多数の言葉
…消すのめんどくさいなって考えながら席に座ろうとすると針が上に向いた画鋲がびっしり
何をしても無言、無表情の私にいじめっ子たちはつまらなくなったのか
「お前、臭いんだよ!」と言いながら私の頭に水をかけた
振り返ると空になったバケツを持って笑ってる男子生徒。
外のイチョウの葉なんかすっかり色付いた秋にこれはさすがに寒いな…。なんて考えながら俯き立ちつくしているとドアからバタバタと誰かが駆けてくる音がした。
「大丈夫か!?ずぶ濡れじゃん」
…高学年だろうか、知らない男子生徒が隣に立っていた
「とりあえずこれ着とけ、風邪ひくだろ」
そう言って彼は着ていたパーカーを私に差し出す
「…ぇ、あ、」
震える手で、上着を受け取り、着る。
人の好意なんていつぶりだろう
「お前、名前は?」
不意に名前を聞かれた
「え、」
「いや、名乗る前に名前を聞くのは失礼って母ちゃんが言ってたな…。俺はトモエヒロト!よろしく!」
彼が名乗る。彼はトモエヒロトというらしい
「シエル…シエル・ロエ・オンプラント…よろしく」
悲鳴以外の声は久しぶりで、震える
「シエル…見た目からして日本人じゃないよな…」
…あぁ、気づかれるよな。
私は次にくるであろう罵倒に心を構えた
「カッコイイな!シエル!」
「…は?」
びっくりして、思わず変な声が出た
「いや、俺周りに今までそういう人たちがいなかったからカッコイイ!」
物珍しそうに、でも嫌味は無い純粋な瞳でキラキラと私を見つめる彼
「ぁ、ありがとう…。」
精一杯お礼の言葉を絞り出す
「髪も白くて肌も白くて、きれーだな」
彼は、そう言って笑った。
「え…」
予想だにしていなかった言葉。驚きの次に溢れる、なんともいえぬ擽ったい気持ち。
「ぁ、あり…」
キーンコーンカーンコーン
朝の会の開始を告げる鐘がなる。
ガラガラと扉を開けて先生が入ってくる
「皆さん、席に着いてください。朝の会を始めます」
先生がそう言い放つ。
「あっやべ、シエル!またあとでな!」
ダッシュで走り去った彼の背中を見つめる。
私は、彼にお礼を言うことが出来なかった。
とりあえず私は画鋲をどかして、席に着く。
「はい、これで朝の会を終わります。日直さん」
「起立!気をつけ、礼!」
礼をすると、濡れた髪から水分が滴り落ちる。
その直後、なにかが背中に当たる感覚がした。
「着席」
着席と同時に背中にぶつかったものを見る。
クシャクシャにまるめられた、ノートの切れ端。
あぁ、またいつものだ。と思うが、紙を開いて中身を見る
するとそこには"ブス!学校来んな!!"とでかでかと書かれていた。
はぁ、とため息を一つついて、机の中を見る。
どこかで聴こえる笑う声
ドアを勢いよく開ける音が鳴り、彼…トモエヒロトが私に駆け寄ってきた
「シエル!あの…さ」
机からゴミを出している私を見て、彼は固まってしまった
…嫌われちゃったかな。
少し悲しくなる。
「…」
彼は、無言でどこかへ歩いていった。
…また1人か。
いつもの事だ、だけどなんでか少し苦しい
涙が溢れてきそうになるのを必死に抑えていると
「おい!なんであんなことするんだよ、謝れよ!」
どこかで怒鳴り声が聞こえた。声の方向を見ると彼と、先程笑っていた男子生徒が向かい合っている
「な、なんだよおまえ…関係ないだろ!」
怒鳴り返す生徒。
「関係なくない!友達がいじめられてて関係ないって思うやつなんかいない!!なによりおまえ達のしてる事はすっっっっげぇだせぇ!!!」
響き渡る声。
─友達
その響きで、涙のダムは決壊した
「うっ…ひぐっ……えっぐ」
嗚咽を漏らしながら、それでも声を必死に抑えてると「なんなんだよお前!!」と怒声を飛ばす男子生徒に目もくれず彼がすっ飛んできた
「あ、ごめん。急に友達は嫌だったか?」
優しくそう問われる
「いや、じゃない…くて、うれしく、て……」
泣きながら、そう答える
「よかったぁ…。あ、」
安心した表情を浮かべたかと思えば、またどこかへ行く。
掃除ロッカーが開く音がしたと思えば、彼が掃除用具を持って登場する。
「一緒に掃除しよう。」
優しく、笑いかける彼。
「…うん。」
片付けて、最後のゴミを捨て終わった時彼がクラス中に響き渡る声でこう叫んだ
「お前たちのやってることはすっっっっげぇだせぇ!!!!もう二度とすんな!!!!」
怒りの声。
「………」
静まり返るクラス。静寂
「わかったな!!?わかったら返事!!!」
「……はーい。」
だるそうに答えるクラスの人たち。その直後、盗まれたものが次々と返ってきた。
「ひろ、と…ありがとう。」
「どーいたしまして!」
ドヤりながら返ってくる言葉。
「なんで、こんなこと…」
疑問に思い問うてみると
「なんでって、ヒーローは困ってる人を助けるからな!」
「…ふふ」
急に笑い出すシエル
「なんだよ急に、不気味だな」
そう返す
「いや、ちょっと昔のこと思い出しただけだよ」
「えー?どんなこと?シエルぴ教えて教えて〜?」
「ニナ、暴れない」
窘めるベル
「ちぇー。ベルたゆのケチー!」
ぷりぷり怒り出すニナの姿は愛らしさがある
「今度教えるからニナは落ち着いてー?」
苦笑して、暴れだしたパーティメンバーを落ち着かせるシエル
「教えてくれるの!やったやったー!シエルぴ好き〜!」
勢いのまま抱きつこうとするニナ
「危ないからっ、ははっ!」
笑い始めるシエル。
「んでシエルサンはなんで笑ってたん?」
俺も気になってきたから質問すると、彼女の笑みは止んで
「んー?」
わざとらしく聞き返し
「秘密だよ。さ、行こ」
振り返り、不敵な笑みを浮かべながらそう返答した。
くじらのはらです。書きたかった話。
小説書き始めて1ヶ月経ちました。これからもよろしくお願いいたします
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