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4.『ダンジョン:迷彩の遺跡:1』

〈ダンジョン:迷彩の遺跡〉入口

「今日は開拓で置いてかれてしまった哀れな子猫ちゃんの救出をするよ」

シエルが話す

「…は、開拓で置いてく?」

俺は耳を疑った。危険に満ち溢れたダンジョンではソロ開拓が御法度なのだ。勿論、仲間をダンジョン内に置き去りにするなどあってはならない。

シエルが詳細を説明する。

「そう、それの救助に私たちが行くんだよ。詳細は詳しく聞かされてないけど、とりあえず判明してるのは20代前半の女性で髪は明るい茶髪に黒いパーカーを着用しているってことかな。彼女は4人パーティでダンジョンに赴いて、置いてかれちゃったみたい。彼女をパーティから抜けさせるためらしいけど。」

悪魔の所業すぎて俺は絶句した。ダンジョン内での死亡事故の保険金目当てなのだろうか…。

「まるで姥捨山だね…。兎にも角にもソロ開拓は危険が多すぎる、早く救助しよう。」

その女性に同情し、一刻も早く救助に向かおうとするベル

「ダンジョンに女の子1人置いていくなんて酷い人たち〜!」

置いていかれた女性のパーティメンバーにキレるニナ

「そうだねぇ。じゃ、点呼。1」

軽くあしらい、上司(リーダー)は点呼を取る

「2!」

「3。」

「4、全員だね」

「うん、よかった。みんな準備できた?」

「バッチリだよ〜!」

「大丈夫。いつでも行けるよ」

「なにがあっても無問題だ。」

シエルの問いに対する返答はどれも明るいもので、シエルはその事実に安心すると笑みを漏らした

「ふふ、じゃあ…。シエル・ロエ・オンプラント」

「水咲ニナ!」

「巴衛ヒロト」

「ベル・スプレンドーレ」

「「「「開拓、開始」」」」

"開拓の開始を認識,開拓記録を開始します。"

聞き慣れた音声。ピニオール・パスが開拓の始まりを告げると同時に俺たちの体はダンジョンへ吸い込まれた。


「うはー。でっけー森、でっけー遺跡」

出た場所はでかい古代遺跡。神殿のような見た目の遺跡はピニオール・パスで地図(マップ)を確認すると、石レンガなどで作られたソレは正方形の迷路のようだ。

遺跡の周りには無尽蔵に敷き詰められた木々。樹海と言った方がわかりやすいのかもしれない。

「なんか、黄昏○森にこんなのあったな」

シンプルに口から出た感想。何も考えずに発してしまったことに数瞬経ってから気づき、口を覆った。

「ん〜、ヒロちーなにそれ?」

え、伝わんない?そんなことある?

「え、伝わんない?そんなことある?」

本音も建前も同じだった。今の子黄○の森知らないの…?マジか…。

「…トモヒロ、どんまい。」

ただひたすらにショックを受けていると、ベルに慰められた

「慰めるにしたってもうちょっといい言葉あるだろ。」

突っかかる俺。マジでもうちょっといい言葉あるだろ、とかグチグチ心の中で呟いてると

「…ふっ、ふふっ…」

シエルが笑い始めた。やばい、これは長くなる

「くふふ、あはは!ヒロ、焦りすぎっ、あは!おかしー!」

焦り始める俺を見てさらに笑うシエル

「ふふっ、いや、こんなことしてる場合じゃ、くふ…でもヒロ、黄昏○森は古いよ、あはっ!」

理性はあったようでよかった、ツボに入ったら30分は笑い続けるから今回は全然マシな方だ。だが、黄昏○森は古くない。これだけは言いたい。

「ふっ、ふふふ、早く開拓進めよう…」

何とか落ち着きを取り戻したシエルが指揮を執る。

「シエルぴ、今回広いけどどこからにするの?」

ニナが冷静に質問をする

「…うーん、そうだね」

シエルは地図(マップ)を見ながら考える。

「うん、決めた。一層からしらみ潰ししよう。地上一層、地下一層、地下二層。遺跡型のテンプレートみたいなダンジョンだからトラップとかには注意して進む感じになるかな」

僅か数秒で考えをまとめ指示をする能力の高さには毎度目を見張る。さすがは我らが上司(リーダー)

「あ、でも、隠し扉みたいなのは積極的に見つけて開けよう。その中に閉じ込められてるかもしれないし。なにか質問ある人は?」

「特になし。」

「ボクも特にないよ」

「アタシも大丈夫!早く行こ!」

全員が答えたと同時にウキウキのニナが颯爽と遺跡に内に繋がる扉へ走り出す。

「こらニナ、そんなに突っ走るとトラップひっかけるよ?」

ベルが追いかけ、忠告したと同時に

「あ、ヤバ!」

ニナが声を上げた。足が何かに引っかかったのかそのまま彼女の体は前方に傾いていき、地面に。

─と思いきや、そのまま体が見えなくなった。

「ヤバ!ヤバヤバ!ベル!ヘル…」

そこで、声が途切れる。

「あーあ、こうなると思ったよ…。」

シエルが落胆の声を出す。だが、その声には失望以外の感情も混ざっているように聞こえた。

ニナが落ちた箇所へ辿り着くと、そこにはでかい穴と長めの蔦?茎?のようなもの。これに引っかかってトラップが発動した感じか…。

彼女が落ちた穴を3人で覗き見て俺はシエルに問う。

「どうするシエル。この穴に俺らも入るか?」

「…いや、仕方ないか……。ヒロ、ニナのこと追える?」

シエルは何かを逡巡させたかと思えば俺に頼んでくる。きっとソロ開拓の危険性を鑑みたのだろう。

「余裕。なにがあってもニナを引きずって戻ってくる。」

「はぁ、やっぱりこうなるか…。ニナに後できつく言っておかなきゃな…。」

現状を憂い、ため息を着くベル。その表情すら様になるイケメン具合は羨ましい。

そんなことを考えてる場合ではないか、と気合いを入れ直す。

1つ、息を吸って。

「ふぅ。トモエヒロト、水咲ニナの捜索にあたります。」

「了解。健闘を祈る」

ピンと糸を張ったかのような真剣な声。先程までの明るさとは打って変わった物言い。

それは、命を落とすかもしれない仲間のための言葉。いわば、無事に帰還するための願い、祈り。

シエルからの言葉を聞き、俺は暗く深い穴へ落ちた。


「んー、くらーい!」

嘆くニナ。落ちた所は手を伸ばした先が見えなくなる真っ暗な闇。

声の反響具合から、この空間がそこそこ大きいことがわかる。

「…どうしようかな。」

考える。正直、ダンジョン内でパーティとはぐれてしまった時は無闇矢鱈動き回るとろくな事にはならないのだが、1人でこの空間に居続けると気が狂ってしまいそうだ。

「とりあえず、歩く…?」

歩き出そうと立ち上がり、1歩目を踏み出したところで

「うぉー!!やべぇ!どんだけ深いんだよこの穴!」

怒号。それは仲間、ヒロちーのもの。

その声に反応し振り返った時、ヒロちーはハルバードで回転斬りをして華麗に着地した。

「いった……。手すっげぇ痺れる…。」

石レンガに己の武器を叩きつけたヒロちーは、アタシを見つけて。

「お、ニナ発見」

そう言ってくれた


「お、ニナ発見」

長い落下の後、落っこちてったニナを見つけた

なにも考えずした回転斬りの衝撃で手の痺れがエグいが、とりあえず見つけられて安心した。

「…ヒロちー、アタシのこと探しにこんなとこまで落っこちてきたの?」

不安そうにこちらに問いかける彼女。

「大正解。」

俺は胸を張って答える。

「…アハ、ばかじゃん」

暗くて見にくいが、彼女の明るい笑顔が見えた。

「馬鹿で悪かったな。ニナはこれからどうするつもりだったんだ?」

「あー、えっと、とりあえず明るいとこ探そうかなって思ってたよ」

「なるほどな。でもな、ニナ。こういうダンジョンには決まって…」

そう話すと俺は壁をまさぐり始めた

「…ヒロちー、なにやってるの。」

ニナから少し距離が離れてしまったため、表情を伺うことはできないが何故か引かれていることだけははっきりわかる。

「……お、発見。」

壁の石レンガを押すと、壁の灯りが灯っていった。

「すごーい!なんでわかったの!?」

ニナが少しオーバーとも取れるリアクションをする。俺からしたらそんなに驚くことではない。

ラノベでよく読むダンジョンものの設定ではお決まりであるから。

「明るいところ、見つかったな。」

そう俺が言い放つと、ニナは少し呆気にとられたようで。

「…そうだね!」

間が空いて、明るい声が返ってきた。


「…だれか、いるんですか、!」

不意に、聞こえた声。

「…誰だ」

警戒し冷たく返すと、少し震えたその声から反応がくる

「私…!ここにずっといて、出れなくて…!助けてほしいんです。パーティのメンバーからも見捨てられてて…」

「あれ?ヒロちー、これって…。」

ニナも同じことを考えたようだ。

「むー…あ、見えた!見えたよ、ヒロちー!」

なにかを見つけたのかはしゃぐニナ。元気いっぱいで若さを感じる。羨ましい

「案内してくれ。」

「ここから直線距離で150m先くらい!ダッシュしよ!」

突拍子もないこと言い出した、こいつ。

俺が固まっているとニナはもう既に走り出していた

─元ニート、走ります。

くじらのはらです。パーティ分断!

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