3.『打ち上げ』
俺達はダンジョンから出て、落下した俺の検査の為に病院へ向かう。
幸か不幸か体のどこにも怪我はなく、そのまま流れるようにマク○ナルドへ直行。
流れるようにベルが席を取り、便利な世の中になったなと思いながらモバイルオーダーで注文。
「んで、シエル。なんで毎度毎度打ち上げがマ○クなんだよ。」
待っている間、俺は開拓の度にマクドナ○ド連れて行かれる不満をシエルにぶつける。するとシエルは笑いながら答えた
「だって美味しいもん。何回食べたって飽きないじゃん。それに居酒屋とかだとニナが酔っ払った大人3人相手にしなきゃいけないから。可哀想でしょ」
最初以外は割と至極真っ当だな。と納得するが、更なる疑問が湧く
「それだったら別にマッ○である必要ないだろ。週3マックはきつい。もういい加減糖尿病になりそうなんだが?」
その疑問をぶつけると、シエルはまた笑って
「だーかーらー!さっきも言ったじゃん。美味しくて、好き。これじゃダメ?」
「ダメ?とか可愛く言っても飽きるもんは飽きる。もう時期全メニュー制覇しそうなんだわ」
明るい照明、ポテトが揚がる音。そりゃ最初はテンションも上がったさ。
何食べようかな?あれにしようかな、これにしようかなってな。
でも、飽きるもんは飽きるんだ。
ごちゃごちゃと考えているとベルが口を挟んだ
「トモヒロ、もう諦めた方がいいよ。この説得はもう13回目、シエルの気持ちは変わらない。あ、チキンフィ○オのセットはボクです。てりやきのセットはそっちの男性で、ビックマ○クのLLは彼女。ダ○チ2個はこの子です。」
幾度となく説得した事実をベルに突きつけられた後、彼はテキパキと運ばれてきたセットの内訳を店員に伝える。
なんでわざわざ説得した回数とか覚えてんだ…。とか思ったけど口には出さない。このパーティでは口は災いの元すぎるのである。
俺はおずおずとバーガーを口に運びながら、周囲を確認する。
チェーン店に行きたくない理由は飽きの他にもまだあった。
「ねぇ、見て!『始まりの軌跡!』顔ちっちゃ〜♡かわい〜♡」
「『始まりの軌跡』様…どうか御加護でわたしたちを護り続けて…。」
「ベルくんだ!サインほしいな、、、声掛けていいかなぁ」
「あ、ニナちゃん…フフ、今日も可愛い……。フフフ…」
「なぁ、シエル落せるかゲームしようぜw」
「やめとけw『神秘の業火』で一瞬で粉塵だぞw」
様々な、人の感情。
崇拝、憧憬、期待、恋慕、悪意、その他諸々。
人目につく場所だとすぐこうだ。
異能者は異力の効力でそれはもう目立つ存在になってしまう。
故に、仕方がないのだが…。
─不愉快だ。
聞こえてくる会話が憧れだとか期待だとかだけなら別に何も問題はない。だが、人間には必ずと言っていいほど悪意がある。
「…ニナとかいう女、ガキくせに開拓者で異能者とかどうなってんだよ。」
「シエル、実物顔いいな…ワンチャンあるんじゃね?」
「いつまでもあのテンションの緑髪どうなってんだよw精神幼すぎ」
「トモエヒロト、なにもしてないだろアイツwww絶対周りにおんぶにだっこされてる雑魚だわwオレでもよゆーでぶっ倒せるwwwwww」
…頭が痛くなるほどの、悪意。
俺は目は悪くとも耳が良かった。故に、悪意に触れることが多々ある。今までも、これからも。
「…アイツら、言いたい放題だな。」
苛立ちが押えきれず、そう無意識のうちに呟いていた。
目線は仲間への悪意を振りまく人間に鋭く刺さっている
慌てて顔を背けたように見えるヤツ、器ちっちぇよ。
俺のストレスゲージは溜まっていく。
「…ふふ」
シエルが、突然笑う
「あ?シエル、どうした?」
反射で態度の悪い声が出てしまう。
「ふふ、あははっ!ヒロキレすぎっ、くくっ…あははは!!」
急に笑い出す始まりの軌跡
さすがの俺でも急に笑い出すやつは怖いんだが。
「ヒロちースルースキル無さすぎー。ガン飛ばしてるのわかりやすいよ?…ふっ、ふふっ」
煽ったと思えば笑い出すニナ。
「そうだね。トモヒロはもう少しスルースキルを磨いた方がいいよ。あと、ニナとシエルは笑いすぎ」
呆気にとられた。毎回起こる光景ではあるけれど、なんで笑われてるのかはよくわからない。
「あはっ、はははっ!ふっ……。はー、はー、よく笑ったー!」
楽しそうな声を上げるシエル
「そんなに怒んなくても私たちはへーきだよ。ヒロが怒る気持ちはわかるけど。私たちのためにいっつも怒ってくれてありがとねー?」
立ち上がり、机に手を着いて真正面の俺を撫でるシエル。
俺の頭には疑問符しか浮かばない。
「てか、お前ら食べんの早くね」
「そりゃあヒロちーがガン飛ばしてる間に食べてるもん」
「トモヒロ、不快な空間に居続けたくないんだったら食べよう。食べて元気だそう」
やっぱりこいつらのテンションはよくわからん、が。
居心地の良さは確かかもしれない。
とりあえず俺は無我夢中でバーガーにかぶりつく
「いい食べっぷりだねー、ヒロちー」
「あんまり焦ると喉に詰まるから気をつけて。」
「ねぇヒロ、コーラ飲まないんだったら私にくれない?私のもうないんだよね」
「俺のだからやらんぞ。飲みたいんだったら買ってこい」
「えー、めんどくさ。…だからもらうね!」
突然の宣言。直後飲まれる俺のコーラ
「お前何やってんだよ、許さん!許さんぞ!!」
怒り心頭の俺。人の好物取るとか有り得ん。本当にこいつは人なのだろうか。
「ヒロちーコーラで怒りすぎ!あははっ」
「トモヒロ、ボクのファンタあげるからシエルのことは許してあげて」
平和な食卓。見慣れた日常
正直マックは飽き飽きだがここまでわちゃわちゃ平和にできるから結構アリだな、と思う。
「あー、あとさ、ヒロ」
不意に口を開くシエル
「ん?どうした」
「私がよくここに来る理由はさ、」
何かを語り出すシエル。突拍子のなさは変わらない。
「昔、ヒロが喜んでたからだよ。」
「…?いつだよ、それ」
身に覚えのない言葉に、記憶を辿ってみるが思い当たる節はなかった。
「さぁねー。」
聞き返したが、明るく返される。
「あと、私会食とかでたっかいもの食べさせられすぎてるからマ○クくらいのチープさでバランスとってるの。」
『始まりの軌跡』だからそれは仕方がない。国会などにも参加しているため、高いものなどとうの昔に食べ飽きたのだろう。
それでも、この主張だけはしておきたい。
「だとしても週3は多い!!!!!!!!」
くじらのはらです。マック週3は私でも辛い。
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