表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

2.『ダンジョン:深潭の底』

ニホン トウキョウ

<ダンジョン・深潭の底>入口

「はい点呼、1」

開拓者4人。上司(リーダー)、シエルの指示に従い点呼を行う。

「2!」

「3。」

「4、全員揃ってるよ、シエル」

全員がいることを伝えるベル。

「ありがと。それじゃ、深潭の底」

シエルの言葉。

「シエル・ロエ・オンプラント」

白銀の髪の美女、『始まりの軌跡』。天使の羽の如く白いローブに夜空のような紺色のワンピースを着用していて、胸元には金色の菱形の宝石があしらわれている。ローブの隙間からちらりと見えるのは古いおもちゃのネックレス。手には大きな旗を握っている。聖遺物、『ジャンヌの旗』だ。

「水咲ニナ!」

ニホン人の18歳。特例で在学中に開拓をしている高校三年生の異能者。水色の髪はハーフツインにしていてアイドルのような可愛らしい容姿である。目は宇宙をそのままガラスに閉じ込め嵌めたような不思議な色合い。髪の後ろにつけているリボンは前から見ると猫耳のようだ。

右腕が長袖、左腕が半袖、服の半分が白、紺にわかれている不思議なセーラー服を着用していて腰の左右にデザートイーグルを装備している。

彼女の視力の良さは長距離からの射撃に長けているが、筋力の弱さから拳銃を使っているそうだ。

「巴衛 ヒロト」

ニホン人。紺色の短髪、緑色の瞳にメガネをかけている。黒いジャージに耐異力チョッキをつけている、異能者。武器は柄の長い黒のハルバード。理由は…彼の戦闘を見ればわかるだろう。

「ベル・スプレンドーレ」

シエルと同じく西欧諸国出身の男。深い緑色に金色のメッシュが入っている

長い前髪はセンター分け、少し長い髪を後ろで束ねたスタイル。

聖遺物『ナポレオン1世の王冠』に見初められた後、このパーティにスカウトされた。

開拓者の多くは異力の力で色素変貌が起こり、生まれた姿と髪色、目の色が変わるため、開拓者パーティは基本カラフルである。

「「「「開拓、開始」」」」

"開拓の開始を認識,開拓記録を開始します。"

二の腕に装備している機械から音声が流れる。機械の名称は『ピニオール・パス』。ダンジョン内にある衛星と繋がり、開拓者の位置情報、開拓軌跡を自動記録する装置。また、バイタルサインも計測し記録する。一定の数値を超えると開拓に着くことが出来なくなることも。

異力を使った無線機器であるため、ピニオール・パスで位置共有、連絡も取れるスグレモノ。1つで幾つもの役目をこなす。

開拓開始を告げる音が聞こえると4人はダンジョンに吸い込まれて行った。


《深潭の底 第一層》

深潭の底は真ん中に底の見えない大穴が空いた円形の地下鉱区。地球では見ない水色や蒼の水晶がそこかしこにあり、坂を下るように二層へ続く道が存在している。

誰が作ったのか、なんのために作られたのかは謎ばかりであり、ただ一つわかるのは壁に巨大なモグラが掘ったかのような穴が空きまくっていることだけだ。

「リーダー、今回の任務は?」

ヒロトがシエルに問う。なぜなら今回の開拓の目的は彼女以外が知らないからだ。

大きな旗をたなびかせて歩くシエルが振り返ることもなく答える。

「異生物、ラウトタルピエダの駆除とサンプル採取だよ。深潭の底で何人かの死傷者、行方不明者が出た原因。流石に滅ぼすことはしないけど数は減らすようにって指示が出た。ついでに余裕があったら爪と毛皮と血液のサンプル採取。こちらは優先順位が低い。」

「なるほどね〜、ラウトタルピエダは結構凶暴だけどボク達で大丈夫かい?」

ベルが問う。

「うん、問題はなにもない。なんせ、私のパーティだからね。私達の敵がモグラっ子だなんて、彼らが役不足だよ。」

自信満々に答えるシエル。

「やっぱりシエルはいつでも自信に満ち溢れてるね〜っ。流石『始まりの軌跡』!」

茶化すニナ。

よく見る構図、見飽きることはない。

慎重なベル、自身の力、仲間の力を信じきっているシエル、茶化すニナ。静観する俺

別に話に入れないわけではない、が。

喋ると体力を消耗する。如何せん俺は開拓者になる前は一流のニートだったから体力は未だない。

シエルが気にかけてくれていたから何とか人の形を保っていたものの、彼女がいなければ秒で餓死ルート一直線であった。

そんな回想も程々に、ダンジョンのニ層目へ到達する。

《深潭の底 第二層》

二層でも見える景色はさほど変わらない。地面や壁面に刺さっていたり埋まっていたりする水晶の色が紫や赤紫に変わることくらいだろうか。

「ここからはラウトタルピエダの生息区域だ、気を抜かないでいよう。」

シエルの忠告。開拓は命懸けのため、異生物の生息区域では語気が強くなる開拓者も多い。

俺はこれから遭遇するであろう異生物を今か今かと心待ちにするばかりであるが。

「ヒロ、楽しい?」

不意にシエルから声がかかる。

「楽しいって、なんでだ?」

「だって〜、ヒロちーさっきからニコニコ笑ってるもん」

続いてニナの声

「トモヒロはいつもこうだからね。敵が近づけば近づくほど愉悦の笑みを浮かべる」

最後にベルの追い打ち。

「え、俺そんな風に見えるか?てか、毎度思うがヒロちーってなんだ、トモヒロってなんだ」

「んー?ヒロちーはヒロちーだよっ!」

「トモエ ヒロトだからトモヒロ。わかりやすいだろ?」

謎に普段からハイテンションの2人から謎の説明を受ける、正直困惑しかない。

「わからんわからん…理解出来んわ」

とりあえず理解することを諦めた。

「総員、戦闘準備!」

唐突に、シエルからの号令。

直後、ラウトタルピエダがすぐ横の壁を突き破り顔を出す。

「ヒロちー、伏せて!」

ニナの声。

すぐに伏せた俺が元いた場所を、異生物の大きな爪が斬る

「はーい、いっくよ!」

ニナの右手に握られたデザートイーグルの銃口に異力の粒子が集まる。

その隙に、俺は異生物の死角へ。

「ロ・シュトラール!」

その青い弾丸は放たれ、異生物の右手を撃ち抜く。

ギュィィィィィィ!!!!

巨大な奇声、絶叫。

右手に穴を空けられた怒りからモグラのようなソレは頭をブンブン振って小さなヒトを攻撃する。

「…そろそろかな。ヒロ!」

俺の名が、叫ばれる

「ヒロ、好きに暴れろ。」

トリガーが、引かれる。

さっきからウズウズしてたんだ。ニナの見せ場はできたし、俺もよく耐えたものだ。

「了解!リーダー!」

口元がニヤリと歪む感覚。

俺は手に持っていたハルバードで異生物の喉を思い切り突き上げる

ギュゥゥゥ……!!!

低い唸りをあげるデケー怪物

怒り心頭のようで、壁を完全に突き破り、全体で通路を塞いだ。

間一髪潰されぬように避けた俺をまっすぐ捉えて、大きな口、牙で俺に噛み付いてくる

走り、避ける。

デカイ図体では小回りはきかないようで。

「トロいな!こっちだぞ」

そのまま、怪物の左手にハルバードを振るう

ギュァァァァァ!!!

両手から血を吹き出し、尚も攻撃を続ける

愉悦の笑みを浮かべたヒロトを見て、始まりの軌跡は微笑む

「…ふふ。」

「楽しそうだね、シエル」

ベルが話す

「ヒロが楽しそうに笑うからついね」

始まりの軌跡が答える

「シエルぴいつもそうだね〜。ヒロがヒロがーって」

ニナも話す。3人の目線は暴れる男にのみ注がれ続けている

「しょうがないでしょ?なにも楽しくないって一切合切外にも出なかったあのヒロが、楽しそうに笑うなんて、夢にも思わなかったんだよ」

「…そうだね。」

ニナが、目を細める

「まぁ、トモヒロが楽しければ結果オーライって感じ?」

「そうそう。あ、いい感じに弱ってきたし、そろそろかな。」

「ヒロ!そろそろ…」

言いかけた時、穴のギリギリに立っていたヒロトが

「ヒロ!危ない!」

異生物に、突き落とされた。


☆☆☆


やべ、ふざけすぎたか。

真っ逆さまに、奈落の底へ落ちていく体。

さすがに死ぬかな、とか呑気なことを考える

ここから受け身をとってもさすがに死ぬ。終わった

─いやまぁ、死ぬ時は死ぬか。

目を閉じ、落下していく感覚に身を任せた。


✪ ✪ ✪


「おや、目を覚ましたかい」

でかい部屋で目が覚めた。

書斎のような部屋,床で寝転がされていたため、体が痛い。ただ絨毯は豪華で分厚い赤い絨毯。金の刺繍が施されている

「誰だお前。ここはどこだ。」

「落ち着いてくれ。ワタシは別にキミに危害を加えるだとか、取って食べたりだとかはしないよ。」

…女の姿を見て驚いた。

雪を思わす白い肌、紅い鮮血で染め上げられたような紅い瞳、絹にも見紛う長く伸びた白銀の髪、夜空より暗い色のトンガリ帽子とローブ。

「紅茶でも飲むかい?それともコーヒーがお好みかな」

アニメで見るような、魔女。

これは現実なのか?それすらもわからなくなる

「いや、先に自己紹介だったか。ワタシはペル・N・スパーコナだ。よろしく、異世界からの来訪者。」

「…は?」

異世界?わけがわからない。そんなもの、現実で、現代で耳にするなど…そんな事有り得るのか?

…いや、そもそもダンジョンがある時点でそんな疑問は意味をなさないか。

「取り敢えず、ワタシはキミの名前が知りたいのだが。教えてくれないか?それを聞かないことにはキミを元の世界に返すことすらできないからね。」

捲したてる女。いや、ペル。

「…トモエ、トモエ ヒロト。」

不思議と、答えてしまった。

「ふぅむ。トモエ ヒロト、か。」

そう呟いて黙りこくったペル。

正直現在の状況が理解出来る上限をゆうに突破しているが故にさっさと仲間の元へ帰りたい。

彼女はデカイ本棚の本を取り出してはパラパラとページを開き、閉じて棚へ仕舞う。

幾度か繰り返された後、何かを見つけたのか本のページを開いたまま机に本を置いた。

「…あぁ、あった。ココだね。」

「今からキミを元の世界に返そう。キミはきっと元の世界に戻ってしまったらワタシのことは忘れてしまうだろうけど、大丈夫だ。またワタシたちは逢える。」

不思議なことをずっと話し続けるペル

とりあえず今のこの不思議メーターぶっちぎりの現象からはなんかようやく解放されそうだ。

「次はゆっくりしていってくれたまえ。お土産話も忘れないでくれよ。」

何故か、瞼が落ちる

眠い、耐え難い眠気。

「──あぁ、そうだ。シエルによろしくね」

意識が落ちる直前、そう聞こえた


☆☆☆


「……ヒロ…ヒロ……起きて!!」

「うわっ!?」

大声にびっくりして、起き上がる。

「ヒロちー起きた!よかったぁ…。」

ホッとした表情のニナ

「トモヒロ、起きるの遅いよ。心配したじゃないか」

ベルからは謎に説教を食らう

「えっと、今は何が起きてどうなったんだ?」

困惑しながらも状況を確認する。状況がわからんことにはなにもできない

「ヒロがラウトタルピエダとの戦闘中に奈落に落ちて、とりあえず聖遺物の力でラウトタルピエダは焼き払った感じ」

あっさりとそう答えるシエル。こわい

「サラッと聖遺物使ったこと自白される世界怖いです、リーダー。」

「不注意で落ちたヒロが悪いでしょ…まったく。」

「シエルものすごく心配してたんだからその言い草は無しだよトモヒロ。」

またもや謎に宥められる

「ちなみにアタシたちがいるここは第三層ね。」

「…なるほど、ちなみにラウトタルピエダのサンプル採取は…?」

「シエルが焼き払ったから何も成果なしだね。」

ベルが答える

「orz」

「ヒロちー何そのポーズ笑」

ニナが笑う。伝わらない、マ?

「若者には分からんか…。ヒロちーショック」

「…はぁ、とりあえずヒロも起きた事だし撤退しよう。ここじゃ何が起こるかわからない」

溜息をつき、リーダーが指示をする

「「「了解」」」

二層へ向かい歩き出す。

「あ、」

俺は、何かを思い出した

「意識失ってる時に、なんか。白髪の女から"シエルによろしく"って言われたんだがリーダー心当たりあるか?」

「白髪…?それ以外の特徴は?」

「すっげー長い髪と、でかい魔女帽子見たいな黒い帽子と…」

「─紅い、瞳。」

そう答えるとシエルが眉をぴくりと動かした。

だが、それは一瞬で。

「…知らないかな、そもそも白髪の知り合いなんていないし。」

そう返され、静寂が訪れる。歩く音だけがダンジョンに響き渡っていた。

くじらのはらです。おやおや…?

よろしければブクマといいねお願いします

作品作りの励みになります

Twitterもフォローしてくれたらもっと喜びます

Twitter:@kujirrrranohara

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ