02 中学二年生の十一月
中学二年生の十一月
休み十日、早退三日
学校に行けないほどの頭痛。感染症が怖いとか言ってられない。これはもう早急に病院にかかろうと決意。
でも近くのクリニックじゃきっとダメだ。痛み止めを出されて「様子を見ましょう」で終わる気がする。
私はネットで調べまくった。
うつ、精神疾患、偏頭痛、腫瘍……頭痛の原因は様々あるが、原因不明なことも多い。思春期に多い『起立性調節障害』の病名や病院の思春期外来という存在を知ったのもこの時だ。
娘の頭痛の原因の大半はストレスではないかと感じていたので、思春期外来が一番しっくりくると思って予約を取ろうにも、大体が大学病院で紹介状がないとダメだった。
元々コロナ禍で、病院は新規受診に非常に慎重。滅多なことでは来ないで欲しい感というか、軽症は自宅近くのクリニックで何とかして欲しい感がホームページの案内からヒシヒシと伝わる。更には紹介状があっても診察予約が取れるのは三ヶ月以上先だった。
調べた中には、大学病院の分院みたいなクリニックがあり、紹介状が無くても最初の一歩として専門的に思春期の症状を見てくれるところもあったが、やはり完全予約制で一ヶ月以上先しか空いておらず。
命には関わらないかもしれないけど、そんなには待てない。私の初動が遅れたのもあって、うちの子は今、待たずに動かないとダメだと思った。
こんなに予約が埋まっているということは、同じ年代の子たちが何かしらの症状を抱えて苦しみながら、大勢が診察を待っているということで。
ここに来て、娘の頭痛が大変なことなのかもしれないと、足下がズブズブの沼地のような気味悪さと焦りを感じた。
遠くてもいい。日常生活に支障が出るほどの頭痛を診てくれるところはないかと、ネットサーフィンをしまくり、中学生などの思春期の頭痛についてコラムを載せていたクリニックのホームページにたどり着いた。おしゃれでも読みやすくもないページだったが(失礼)、私が探していた情報がドンピシャに載っていた。頭痛の仕組みや考えられる原因、思春期の患者に対しては、検査しても脳などに頭痛をもたらす機能的な異常がなければ、提携している大学病院の思春期外来に紹介状を書いてくれるというもの。
家からおよそ一時間半。行ける。電話すると、一番早く取れる初診の予約は三日後。さっそく予約して受診することができた。
まずは結構細かい問診を受け、投薬で二週間様子を見ることに。
娘の頭痛はほぼ変わらない。
痛み止めは飲むと効くが、朝は頭痛で起きられないことが日に日に増えた。
クリニックで出された薬を飲みきって二週間後に受診。
診察は待ち時間もあり二時間超え。予約の意味は……と目の光を失う。
娘の状態があまりにも変わらないので、薬を変えてまた二週間後受診することになった。
薬局で「十四歳にこの薬ですか……?」と、薬剤師とクリニックとで電話のやりとりが始まり、薬が出るまでにさらに一時間近くかかった。
そんな薬剤師が引っかかるような薬を出されたの? と不安が募る。
結局、薬はちゃんともらえ、薬剤師が確認に時間がかかった理由も聞けた。通常こどもには処方注意の薬のようで、クリニックの医師はきちんと分かっていて症状の改善のために処方していた。どっちも専門職。こういう確認はむしろありがたいのだが、いや、疲れた。
娘は終始文句か無言。連れ回してすまんが、お前の病院だ。
この頃、娘は夜に寝付けないこともプラスされていた。
週に二日くらい、学校に行ければ良い方になってきた。
薬が効いてくれれば……と心の底から願う。そう願うのに、痛みは目に見えないから、痛くない時も痛いと言っているのでは……。ただのズル休みでは……と思ってしまう自分がいた。
もともと共働きで、ここ数年職務上の責任も重くなってきて、そもそも自分自身に余裕がない。
そして娘の不調。
焦りと疲れ。
仕事は繁忙期。
旦那に通院の付き添いをしてもらうのは無理。
なんせ思春期の娘である。父親と通院なんて娘の方からの絶拒。
先が見えない。
真っ暗闇の中に立っている不安感。
娘に寄り添うしか出来ないのに、寄り添いきれない、疑っている自分が嫌だ。
しんどい。