第98話 お誘い
「なあなあ安田、明日って時間あるか?」
「ない」
金曜日の放課後、なんか知らんがショーコが聞いて来たので即答する。
まったく時間がない訳ではないが、こいつの為に使う気は微塵もない。
「いや実はさ、勝っちゃんから連絡があってさ」
俺の返事など無視して、ショーコが話を続けて来る。
こっちは断っただろうに。
事情とか一々話してくんるんじゃない。
「そんで、今うちはダークソウルがトップはってんじゃん」
勝手にはんな。
「その事話したらすっげー興味持って来てさ。勝っちゃんが」
「あっそ」
「おいおい、反応わりーな」
「興味ないからな。つか、かっちゃんて誰だよ」
「おいおい、忘れちまったのかよ。本田勝次だよ、本田勝次。ほら、ウィングエッジの」
「ああ」
そういやいたな。
確か、変な剃り込みいれた金髪五分刈りのヤンキーだったはず。
ほぼ面識がないに等しい相手じゃねーか。
そんな奴のあだ名を連呼されても、俺に分かる訳がない。
「んでさ、明日学校終わったら久しぶりに会う事になったんだ」
「あっそ」
「そこに安田もご招待ってわけよ」
「応じる気はねーぞ」
「そんな事言うなよ。勝っちゃん、すっげー安田に会いたがってたし。な、頼むよ。あたしの顔を立てると思ってさ」
「お前の顔を立てる謂れは……いや、分かった。俺も顔を出す」
断ろうとしたが、ふと思い立って返答を変える。
確か風早が学校を辞める時、ウィングエッジのメンツが一緒について行ったはず。
久しぶりに会ったと言っているので、本田勝次って奴は付いて行った組と考えて間違いないだろう。
つまり、風早グループの人間って事だ。
蛇っ子共の騒動は、帝真グループのから風早グループのスパイがサンプルや情報を盗もうとして始まっている。
つまり、帝真グループの情報はあるていど風早グループに抜けてるって事である。
このタイミングで、風早グループの息のかかった人間が俺と会いたがってる。
そんなもん偶然な訳ないからな。
周囲をちょろつかれても面倒くさいし、直接会って相手の腹積もりを探る事にしよう。
「お、ほんとか。さっすが安田、ツンデレだねぇ」
「誰がツンデレだ」
デレるデレない以前に、そもそも俺はツンツンしてなどいない。
「じゃあ明日な!エミ帰ろうぜ!」
ショーコが別の女子と話していたエミを連れて教室から出ていく。
「さて……」
俺も帰るとしよう。
因みに、山田は学級委員の仕事でHR後すぐに先生に引っ張ってかれてるので、今日は一人だ。
待ってやらないのか?
うん、待たない。
めんどいのでさっさと帰らせて貰う。
「風早グループか……」
どう対処するかは相手次第だな。
ちょっとした勧誘程度なら袖にするだけだし、ふざけた事をほざくようなら……叩き潰す、もしくは帝真一の様に制圧するまでである。
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