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第95話 ファイト

息子が小学校を卒業した。

神の力を持て余し、能力に難があった息子にはきっと辛い日々だったろう。

でも息子は頑張って試練を乗り越えて見せた。

私はその事を誇りに思う。


「た、助けてくれ」


「わ、我々をどうするつもりだ」


「教師を誘拐だなんて!あんたおかしいんじゃないか!!」


息子の苦難は試練だと神様は言った。

だからこれまで我慢して来た。

けど、卒業する以上、もう小学校の教員と息子が関わる事はない。


―—そう、つまり彼らはもう息子の試練とは何の関係もなくなる。


なら、もう我慢する必要はないわよね?

いじめを黙認してきた彼らには、ちゃんと罰を与えないと。

担任と、それを管理する教頭と校長の三人には。


「試練で必要な事だったとはいえ、貴方達の犯した罪が消える訳じゃない」


「何を訳の分からない事をいってるんだ!」


「ふざけんな!解放しろ!」


彼らは自分達がどれほど重い罪を犯したか、それを知りもしない。

また、私もそれを説明するつもりはなかった。


馬の耳に念仏、なんて言葉があるでしょ?


真面な人格をしているのなら、そもそもいじめを見逃すはずもない。

つまり、彼らの様な人格破綻者には話を説くだけ時間の無駄なのだ。

なのでここは速やかに罰を下す。


「ぎゃあああああ!」


「痛い痛い痛い!」


「ぎいいいぃぃぃぃ!!」


私が呪いをかけると、彼らは激痛にのたうち回った。

やがてその人としての形は崩れていき、ぎゅっぎゅっと圧縮され、最後は手の平大の肉団子へと変わる。


「自らの罪をその姿で償い続けなさい」


彼らは死んではいない。

ちゃんと生きている。

神の子を害した罪を、彼らには生きて償って貰わないと。


「そうね。10年その苦しみに耐えなさい。そしたら、10年後には元に戻してあげるわ」


まあその時まで、彼らの精神が正常でいられるかどうかは知らないけど。

狂っていたとしても、それが償いなのだから仕方ない事である。


「同級生達はどうしようかしら」


同じ中学に行った者は、業腹だけど引き続き放置せざるをえない。

息子の乗り越えるべき試練を、母である私が台無しにする訳にはいかないから。


だが、別の学校に行った子供達は話が変わって来る。


「まあ子供のしたことだし……手足に深刻なダメージが残る程度でいいかしら」


教員たちの様に肉団子にしてもいいのだが、相手は物の分別のつかない子供だ。

そこまでするのは流石に酷という物。

ここは手や足の関節を粉砕し、障害が残る程度で見逃して上げるとしよう。


「神様。こんな風に考えてしまう私は甘いでしょうか?」


神様に尋ねると、甘いと返されてしまう。

でも、それがお前なのだから構わないとも言ってくださった。

神様は本当に寛大なお方だ。


その3年後、息子が高校に入学した。

中学時代もやはりいじめは続き、その卒業と同時に、関わった教員は全て呪いで肉団子へ。

更に、いじめを行っていた子供達もほぼ全て別の高校に行ったので、その子達も肉団子へと変える。


小学校はまだ小さな子供だから見逃したが、中学にもなっていじめを続ける者に情けはいらない。

彼らには犯した罪の代価を、10年の刑で支払って貰う。


息子が入った高校は、お世辞にもいい所とは言い難かった。

そんな環境でも、あの子は必死に頑張っている。

能力は相変わらずであるが、本当に頑張り屋さんだ。

親として誇りに思う。


ある日、息子が車にひかれたと連絡が入った。

一瞬血の気が引いたが、直ぐに神様が、試練だから問題ないと私に教えてくれる。


駆け付けた病院で寝かされた息子は、意識不明の状態だった。

体の状態を確認すると、その肉体に魂が入っていない事が分かる。


神様のおっしゃる通りね……


この事故の影響で、息子の魂は異世界へと旅立った。

そしてこれは、神様が最初から用意していた息子への試練だったのだ。


「頑張るのよ」


神の力を持つ肉体に対して、息子の人としての魂は弱すぎた。

だから異世界で魂を鍛え、そして全ての試練を乗り越えた時、この子はこの世界に顕現する事となる。


そう、神様の封印を解く使命を持つ、真なる神の使徒として。


ああ、もちろん、言うまでもないとは思うけど……息子を跳ね飛ばした男は肉団子に変えて罰したわ。

試練の契機である事と、その罪の有無は別物だもの。

ちゃんと罪は償わせないと。


「たか……ひと……」


「母さん……」


「孝仁!たかひとぉ!!」


それから一月ほどして、息子――孝仁の魂が返って来る。

その姿を一目見て、息子がどれほど成長したのかが私には良く分かった。

そのため、感極まり私は孝仁へと抱き着く。


ああ、本当に立派になって……


もうこの子は、どこに出しても恥ずかしくない神様の使徒だ。


直ぐにでも神様の事。

そして孝仁が背負った使命を伝えたかった。

だけど、それは神様に止められてしまう。


『使命を知れば余計なプレッシャーになってしまう』


と。


神様は、孝仁を使命で縛る事を良しとせず。

そんな事を伝えなくとも、息子は確実に課せられた使命をを全うするともおっしゃられた。


「分かりました」


真実を伝えれない事をもどかしく感じながらも、私は神の命に従う。


「……」


深夜遅く。

息子が出かけた気配を感じ、私は目を覚ました。


「ふふ……使命を全うしにいったのね」


孝仁に課された使命。

それは、この地球で力――神様由来の力を使う事だ。


息子が力を使えば使う程、神様の力は地球に広がって行く。

そしてその力が世界に満ちた時、忌々しい封印は解け、神様はこの世に顕現される事となるのだ。


「頑張って、孝仁」


私は息子の頑張りを、陰ながら応援するのだった。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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ギャオスはお母様の仕業だったか
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