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第90話 ナイスアイデア

――深夜、帝真グループ所有の別荘。


「だから、君たちの気持を聞かせて欲しい」


蘇生させた三人に、これまた蘇生させた田所勝(たどころまさる)が問いかける。


田所はラミアの研究をしていた奴だが、最後は命を賭けて三人を救った人物だ。

全然知らない俺から説明を受けるより、こいつが話をした方がいいだろうと思って蘇生させたのである。


というのは建前で、子供三人に残酷な話を俺の口からするのは気が進まなかったので、その役をこいつに丸投げしただけな訳だが。


「私は……生きていたいです。苦しくても……だって、美香ちゃん達は生きたくても生きられなかった……だから!どんなに苦しくても私は生きないと!みんなの分も!」


「僕も……僕も生きていたい。エリカおねぇちゃんと一緒に」


「あたしも……お姉ちゃんと一緒に生きます」


どうやら三人は今の状態が改善されなくとも、生きていたい様だ。

正直、子供故の楽観的判断に見えなくもないが、まあ本人達がそれ望むのならその決断を尊重しよう。


案外、ドMで苦痛大好き。

この姿も超カッコイイ。

とか思ってる可能性もワンチャン……いやまあないか。


「分かった。君達の意思を尊重しよう。ただ、苦しくて我慢できなくなったらいつでも言ってくれ。俺なら……君達を苦しませる事なく楽に死なせてやることが出来るから」


「「「……」」」


三人が怯えた目で俺を見る。

此方としては最大限を気を使ったつもりなんだが、どうやら怖がらせてしまった様だ。

死じゃなくて、眠らせるって言葉にした方が良かったかな?

やっぱ子供の扱いってのは難しい。


因みに、俺の事は死んだ人間すら生き返らせる事の出来る凄い魔法使いで、三人を助けたのは俺だって事はちゃんと伝えてある。

田所の口からだけど。


「お兄さんは……お兄さんは、本当に死んだ人も生き返らせられるんですか?」


一番年上の女の子が、恐る恐ると言った感じに口を開いた。


「ああ。けど……他の子達の蘇生は無理だ」


死体が一部でも残っていれば蘇生は可能だが、帝真グループは実験の過程で死んだ遺体は全部焼却処分してしまっていた。

普通、サンプルとか置いてそうなもんだが、生きた検体が残っている状態で途中退場した子供達の細胞はいらないと、そう判断した様だ。


なので、彼女達以外の被害者を蘇生させる事は出来ない。


「そう……ですか……」


俺の返事に、女の子が俯く。


「で……だ。君達はそのままじゃ生活できない」


暗い雰囲気だったので、少し待ってから口を開く。

余命宣告的な部分はもう過ぎたので、ここからは俺が話をする。


「さらに言うなら体調管理のために、帝真グループの力が必要だ」


「「「……」」」


「だから……君達にとっては余り嬉しくないだろうが、帝真グループが君達の世話をする事になる。それは了承してくれ」


自分達の人生を狂わせた会社だ。

そいつらの世話になるのは、気分的に嫌だろう。

けど、それを放棄すると、本気で悲惨な事になってしまう。

だから、彼女達には我慢してもらうしかない。


つうか、これも大概いやな話だな。

田所にさせりゃよかった。


「ああ、帝真グループの事なら心配ないぞ。もう君達に手を出す様な真似はしないから。しこたまボコボコにしてやったからな。それと、身の回りの世話は帝真グループとは関係ない人間にやって貰う予定だから」


流石に身の回りの事まで帝真グループの人間に担当させると、ストレスが半端ないだろうからな。

一番身近な事は、関わりのない他の人間に任せる。


丁度一人、暇そうな上に、俺に大きな貸しがある奴に心当たりがあるからな。

世話はあいつにやらせばいいだろう。


「あの……色々、お世話になります」


年長の少女が頭を下げると、他の二人も俺に頭を下げた。


「気にしなくていいさ。あ、そうだ!」


――その時、ふと名案が思い浮かぶ。


「帝真グループには恨みつらみもあるだろうから、これからいくらでもボコボコにしてくれていいぞ。死んでも蘇生できるから、研究者とかでもバンバン殺してくれていいからな」


我ながら最高のアイデアである。

恨んでる相手を、好きにサンドバッグに出来る。

これはつらい現実の発散にもってこいだ。


「え、あ、あの……その……」


「……」


「……」


「ん?」


なんか反応が今一だ。

復讐し放題なんだが?


『やった!復讐だ!』


『やられた分は100倍返しよ!』


『ゴートゥーヘル!』


的な反応を予想していたのに、肩透かしもいいところである。

復讐し放題なんだから、普通はもっとテンション上がるよな?

俺が彼女達の立場なら、げらげら笑いながら100万回は殴り殺すし。


まあ子供だから、まだ状況をよく呑み込めていないだけなのかもしれないな。

落ち着いたらきっと殺しまくるはず。


こんな絶好のチャンス、見逃すなんて正気の沙汰じゃないし。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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