表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/103

第82話 慎重

「ふむ、例の対象の事で火急の用件か……」


先程まで会議中だった帝真一は、執務室に戻った所で秘書にそう告げられ眉をしかめた。


「はい」


「昨夜安田一家を監視していた衛星からの信号が途絶え、しかもその日の午前中にその対象の件に関する急用で佐藤が会いに来る。点と点を繋ぐ確実な根拠はないが……事が連続して動く以上、何らかの因果関係があると疑うべきか」


安田親子、もしくはどちらかが魔法使いである事を前提に帝真一は考え込む。


「魔法の事が分からない以上、過小評価は避けるべきだ」


彼は魔法に関して深い知識を持ち合わせてはいない。

その最大の要因は、日本という国では魔法が制限されてしまう謎の現象があったためである。

そのため、国内で活動する彼にとってこれまで魔法は脅威たりえなかった。

要は優先順位が低かったのだ。


――そして不明だからこその、強い警戒。


「最大限評価するとした場合……監視されている事に気付き、衛星を何らかの方法で攻撃。その後監視者であった佐藤の元に短時間で辿り着き、何らかの方法で懐柔して彼を手足の様に動かす。そして準備万端の状態で佐藤に同行し、ここに乗り込んで来る。そんな所か……」


今の状況で考えうる最悪を、帝真一は想像する。


もしこの想像が当たっていた場合、佐藤と迂闊に接触する事が危険である事は間違いないだろう。

だが魔法の事を詳しく知る人間がこの場に居たなら、その想定をきっと鼻で笑っていたに違いない。


――そんな事は不可能だと。


行動自体は、衛星への攻撃を除けば優れた魔法使いなら可能ではあるだろう。

問題はスピードだ。

昨日の今日でセキュリティレベルの高い帝真一の元まで辿り着くのは、いくら何でも現実的ではない。


――そう、普通であれば。


だが帝真一は魔法を深く知らず、そして知っている者もこの場にはいない。

それ故、最大限の警戒を以って慎重に行動に当たる。


「セキュリティレベルを最高レベルに引き上げさせろ」


帝真一が秘書にそう命じた。


「名目は私の命を狙う危険な魔法使いの迎撃だ。捕獲は考えなくていい」


「畏まりました」


「私は念のためこの場から退避する。用意しろ」


セキュリティを過信せず、迎撃を突破された場合に備えての退避。

万一に備えるその慎重さは評価に値するといえるだろう。


だが彼は知らない。

下手に身を隠すという行為が、無駄な手間を増やされた勇者の怒りを買う羽目になる事を。


まあもっとも……怒りを買おうが買わなかろうが、彼の悲劇はもうこの時点で決まっている訳だが。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


『面白い。悪くない』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。


評価は少し下にスクロールした先にある星マークからになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作宣伝
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
『現代ファンタジー』ユニークスキル【幸運】を覚醒したダンジョン探索者が、幸運頼りに頂上へと昇りつめる物語
素行不良で僻地に追いやられた第4王子、自分が転生者だった事を思い出す~神様から貰ったランクアップで楽々領地経営~
王家から追放された無能な第4王子が転生者である事を思い出し、神様から貰ったランクアップのチートで自領を発展させつつ面白おかしく生きていくお話
最強執事の恩返し~転生先の異世界で魔王を倒し。さらに魔界で大魔王を倒して100年ぶりに異世界に戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。お世話になった家なので復興させたいと思います~
魔界で大魔王を倒して戻って来た勇者は、かつて転生者だった自分を育ててくれた侯爵家が没落した事を知る。これは最強男勇者が執事となって、恩返しとして侯爵家の復興に尽力する物語
― 新着の感想 ―
ああ、間違えたかー 真一くん残念
[良い点] 無知ゆえに備え、しかし無知ゆえに誤る。 保身の行動が余計な手間扱いな時点で彼我の差は歴然か(合掌)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ