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第76話 撃墜

――地中深くに開けた穴の中。


「リアルタイムの監視だと?」


ボロボロになっているワーウルフの女――嵐子(らんこ)の言葉に俺は眉を顰める。


「は、はいぃ……」


先程取り出した機械は、予想通りGPS機能を備えた物だった。


GPSは位置情報を送るだけなので、それ自体はたいした問題ではない。

だがどうやら、帝真グループが極秘で海外から打ち上げた人工衛星が任務中の彼らの姿をリアルタイムで監視していた様だ。


「お前らの姿を監視してるって事は、人の姿まではっきり見えるって事だよな」


「ぎゃあっ!?わ、私はそう聞いてます!!」


腕をへし折りながら訊ねると、イエスの返事が返って来た。

もう一本折っても返事は変わらないので、まあ本当の事なのだろう。

嘘を吐く意味は薄いし。


「宜しくないな」


人の姿までハッキリ見えるって事は、俺がヘルハウンドの奴らを始末していたのも見られていたという事だ。


空中を含めた周囲に気を配ってはいたが、成層圏超えた先までは流石に……


まあそこまではいい。

俺は闇を纏っていたからな。

その姿から特定される様な事はないだろう。


問題はその後、そのまま俺の姿を追われていた可能性がある事である。


戻る際、近くの山に下りてから森の中なんかを移動したので大丈夫な可能性もあるが、楽観的な考えは足を掬われる原因となりえる。

ここは追跡されたと、俺の身元が割れたと考えた方がいいだろう。


「いったん戻ろう」


母もタリスマンを身に着けているので、攻撃されたとしても怪我する様な事は無いだろう。

だがそんな事は問題ではない。

誰かが接触してきて、母を煩わせる事自体が問題なのだ。


俺が留守の間に、何かして来る奴らがいるかもしれないからな。


俺は嵐子の首をへし折って亜空間に放り込む。

そして人工衛星からの監視を巻くため、魔法で横穴を掘ってかなり離れた場所から地上に出る。

念のため服の色を変え、以前剥いだ皮を頭に付けて人相も変えておいた。


これで人工衛星に追跡される心配はないだろう。

俺は急いで家の付近まで戻り、そして少し離れた場所からアパートを観察する。


「まだ何もされてないな」


特に異変は感じない。

帝真グループは、直ぐには動く気はない様だ。


「もしくは見つかっていないか……」


勿論、そんな楽観的思考で判断する気はないので魔法で周囲をサーチしておく。


「ふむ……4組ほど怪しい奴らがいるな」


近場で道路に突っ立っている人間や、車の中にいる怪しい奴らが確認出来た。

この辺りは治安が余り宜しくないので真夜中にうろつく様な奴もいるが、じっと動きがないあたり、監視と考えて間違いないだろう。


「さて、どうしたもんか……」


普段なら、情報封鎖に迷わず動くところなのだが……


見つかったのは昼過ぎで、既に監視が家の周囲に立っている様な状態だ。

相手が大企業だと言う事を考えると、正直、俺の情報がどれだけ広がっているのか想像もつかない。


違法な事を扱ってる部署だけならともかく、グループ全体で危険人物としてデータが共有されていた日には、どう足掻いても綺麗に納めるのは不可能だ。

それこそ、少しでも関わってそうな奴らを問答無用で片っ端からデリートしまくらない限りは。


「流石にそれはなぁ……」


一応、人としての良心は持ってるつもりである。


母の命に係わる様なら話は変わって来るが、現在がそこまでの危機かと問われると……


花形の戦闘部隊であるヘルハウンドの弱さから判断するに、そこまで大した脅威だとも思えないしな。

帝真グループ。


「まあ力で黙らせるのが無難か」


――手を出せば、ただでは済まないと言うレベルの力の誇示。


下手につつけば大爆発する様な危険物に、好んで手を出す馬鹿はいない。

まあ自殺願望や破れかぶれで相手に動かれてしまうと想定は崩れてしまうが、金持ち共がそういう行動に出るのは極稀だろう。


「じゃあ取りあえず……」


監視してる奴らをとっ捕まえるとしよう。


その前に、誰も近付けない様、アパートの周りに強めの結界を張っておく。

既に中にいる人間は出入り自由で、それ以外の人間は中には入れないタイプの結界だ。


魔法の痕跡が残ってしまうのが玉に瑕だが、まあそこは致し方ない。

どうせもう監視されてる様な状況だしな。


「まずは一番近い奴から……」


被っていた皮を脱ぎ、敢えて顔は晒しておく。

力で黙らせるのなら、顔を隠す意味はないからな。


「よお」


人では捉えられない速度で近づき、死角から唐突に姿を現す形で俺は監視っぽい奴らに声をかけた。

相手からの反応で、監視かそうでないかを確認するために。


「こんな夜中にまで監視とか、ご苦労な事だな」


「なっ!?」


二人組が突如姿を現した俺に絶句する。

こういう驚いて動揺している時ってのは、素が出やすい物だ。

だから驚かせたのである。


「なに驚いてんだ?帝真は、こんな無能な奴らが監視しなけりゃならない程人材不足なのか?」


そして確信を持った口調でダメ押し。

これで相手は、もうばれてるから隠しても無駄だと誤った判断をするはず。

まあ絶対じゃないけど。


「くっ……なぜ我々の事が――がぁっ!?」


狙い通りあっさり自白してくれたので、通信とかされる前にその場にいた二人組の首をへし折って俺は亜空間へと放り込む。

それを4回程繰り返す。


「やっぱ全部監視だったな」


全員反応が分かりやすく、判断は簡単だった。


「んじゃ、次は人工衛星を落とすか……」


力を見せつける一環として、当然人工衛星は落とさせて貰う。

魔法で撃ち落とす事も出来るが、その場合は広範囲をカバーする相当強力な魔法を使う必要が出て来る。


何故なら、位置が分からないから。


「そんな魔法を使うと周囲に甚大な影響が出ちまうからな。直接叩き潰さんと。取り敢えず情報を――」


まずは結界を張って、その中で捕らえた奴らを軽く拷問する。

聞きたいのは人工衛星についての情報である。

人工衛星は結構な数があるらしいので、特徴が分からないと別の物を落としてしまう恐れがあるからだ。


まあ捕らえた奴らは下っ端だろうから、駄目元ではあるが。


「特殊なロゴが入ってるのか。分かりやすくていいな」


捕らえた奴らの中に、案外立場が上の奴が混ざっていた。

そいつは人工衛星関連の情報を持っており、見事に聞き出す事に成功する。


「嘘だったら地獄を見せるぞ?」


「う、嘘ではありません!本当です!信じてください!」


取り敢えず全員を殺して亜空間にしまい、魔法で上空へと高速飛翔する。

上昇して行くと次第に空気が薄くなっていき、気圧や気温の影響も出始めるが、俺に影響はない。

厳しい環境下だと、タリスマンが勝手に防御してくれるからだ。


まあなくても全然平気ではあるが。

呼吸も24時間ぐらいなら、しなくても問題ないし。


――あった。


更に上昇して行くと、一つの人工衛星を発見する。

それには聞いた通りの独特なロゴが描かれていた。


……思ったより小さいな


人工衛星のサイズは車ぐらいだ。

家ぐらいの大きさを想像していたので、思わず『あ、こんなもんなんだ』とか思ってしまった。


まあどうでもいいか。


俺は魔法を放ち――


『バースト!』


人工衛星を粉々にしてから地上へと下降する。

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