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第28話 条件

案内されたのは事務所の様な場所だった。


「ソファにかけてくれ」


言われて腰を下ろすと、風早は棚にあったいかにも酒の入っていそうなボトルの封を開け、ワイングラスに琥珀色の液体を注いで俺に手渡して来た。


「酒か?」


「まさか、お茶だよ。俺達は未成年なんだから」


口にすると本当にお茶だった。

なぜわざわざお茶をボトルに入れているのか、謎だ。


「こういう場所だと、そっちの方が雰囲気に合うだろ?」


俺の考えを読んでか、向かいのソファに座った風早が笑ってそう言う。

確かに、急須やヤカンは似合わんわな。


「さて、君も気の扱いを師匠から習ったみたいだけど……気孔闘士(オーラバトラー)の名前を気軽に口にするのはちょっと感心しないかな。まあ、ウィングエッジの皆になら聞かれても問題はないけどさ」


「なんでだ?」


風早は俺を気孔闘士だと勘違いしている様なので、それは訂正せずにそのまま話に乗る。

その方が話を引き出しやすそうだから。


「何でって……気孔闘士になる為の条件を知ってる人が聞いたら、俺達が人を手にかけた事があるって分かっちゃうからね」


人を手にかけた……か。

それって、人を殺した事があるって意味だよな?


禿デブ6級からの情報には無かった物だ。


「ふーん、そんな条件があったんだな」


「あれ?師匠から聞いてない?」


「聞いてない。所で……お前の言う師匠ってのは、ちょび髭生やした糸目で袴姿の爺さんであってるか?」


そもそも風早の師匠と、禿デブの指導者が別人の可能性がある。

そう思い、拷問で聞き出してたビジュアルで確認する。


「ああ、それが師匠だよ」


「そうか……因みに、俺は爺さんの名前すら知らないぞ。何せ才能があるとか言って、無理やり3日間ほど手解きを受けただけだからな」


俺は禿げデブからの情報を、自分の体験の様にしれっと口にする。


「ははは、名前は俺も知らないさ。一月ほど習ったけど、師匠は自分の事を一切語らなかったからね。知ってるのは才能のある人間を見つけて、気の扱い方を教えてる事ぐらいだね。才能があるのに埋もれさすのはもったいないってさ」


才能を埋もれさすのがもったいない、ねぇ。

気持ちが全く分からないとは言わないが、教える人間はちゃんと選べよとは思う。

禿げデブ6級とか、完全に屑野郎だったぞ。


まあけど……そもそもの大前提が人を殺す事だってんなら、基本屑以外いないか。


目の前の爽やかそうな風早を見る限り、人を殺した経験がある様には見えない。

が、上手く隠す奴はとことん上手く隠すからな。

見た目や物腰で簡単に判断出来る様なら、世の中苦労や拷問はいらないってもんだ。


「暇人だな。それより……人を殺せば誰でも気を扱えるのか?」


「いや、才能がある人間だけって聞いてるよ。それと……条件は単に殺す、じゃなくて、ギリギリの殺し合いで相手を殺して勝つ事だよ」


どうやらたんに殺しただけでは駄目な様だ。


「要は修羅場の経験か」


「そうなるね」


禿げデブは筋ものだったから、そういう経験があってもおかしくはない。


まあ尤も、その条件が本当かどうかって疑問はあるが。

殺し合いして生き延びたら謎の力が目覚めるとか、まるで漫画みたいな話だからな。

嘘くさい事この上なしである。


仮に風早が嘘を吐いてなくとも、大本である師匠と呼ばれる人物が嘘を吐いている可能性は捨てきれないしな。


え?

異世界帰りのお前が嘘くさい言うな?


それはそれ。

これはこれである。

一個不思議な事があったからって、だからそれ以外もとはならんよ。


「安田君。君がどうして人を手にかける事になったのか教えて貰っていいかい?」


それまで笑顔だった風早の顔が、真面目な物に変わる。


「もちろん、僕の方もちゃんと言うよ。これはお互いが信頼――いや、言葉は選ばずハッキリ言おう。お互いにとって相手が危険人物かどうか知るためだ」


何故他人と殺し合いになったのか?

それを確認しないと、相手が殺人鬼かもしれないという疑心暗鬼で、安心できないという事なのだろう。

肝っ玉の小さい奴である。


まあ風早の口ぶりから察するに、こいつの場合は自己防衛かなにかだったんだろうな。

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