第25話 取り敢えず
「やるなぁ。不意打ちとは言え、俺を一発でのすなんてよ。ギャオスをやったってのは伊達じゃないみたいだな」
エミとショーコに介抱されていたかっちゃんとやらは程なく目を覚まし、起き上って来た。
「俺の名は本田勝次だ。チーム内じゃかっちゃんて呼ばれてる。よろしくな」
そしてフレンドリーな笑顔で自己紹介して来た。
どうやら殴られた事に対する遺恨は感じていない様だ。
ある意味サッパリした爽やかな性格とも言えるが、だとしても、俺はこいつを屑だとしか思っていない。
「よろしくなって言われてもな」
……ぶっちゃけ、こいつのこの態度は俺が強いから成り立っているに過ぎないからな。
強い相手を認めると言えば聞こえはいいかもしれないが、それは逆に弱い奴は侮り、見下しているという何よりの証拠だ。
生きるために必要ならそう言う判断方法も仕方なしだとは思うが、高校生活にそんな判断はどう考えても必要ない。
よってこいつは只の屑である。
「俺はウィング・エッジとやらに入る気は全くないぞ」
「へ?」
「エミとショーコがどういってるのか知らないが、俺は入らないし集会とやらにも行かない」
俺の言葉に勝次が眉根を寄せ、ショーコ達へと視線を向ける。
「そんな目で見んなよ。まだ勧誘中だけど、あと一押しって所なんだからさ」
あと一押しとか、どれだけ甘く見積もったらそうなるんだろうか?
たっぷりの生クリームハチミツ添えかよ。
「いや、そうは全然思えない口ぶりだったんだが……」
「入る気ゼロだ」
勝次が再び此方に視線を戻して来たので、ハッキリと駄目押ししておく。
屑ではあるが、恋に目がくらんだバカ女共よりかは判断能力は真面だろうと期待して。
これで余計な勧誘が無くなれば万々歳なのだが。
「お前らなぁ……風早から過度な勧誘はすんなって言われてんだろうが」
「過度って、大げさ大げさ」
「そうそう。あたしらと安田はダチだからさ。ちょっとしたトークの合間に誘ってるだけだって。問題ないっしょ」
こいつら本気で言ってそうだから怖い。
ガン無視こそしてこなかったが、結構な塩対応してるんだがな。
「どうも……うちの奴らが迷惑かけちまってるみたいだな。悪い」
勝次が肩をすくませ、謝って来る。
二人の主張を素直に『そうか!なら大丈夫だな!』とか言って通すアホでなくて良かった。
「けどまあ……絶対損させないからよ。うちに入れよ、安田」
「……」
って、結局お前も勧誘するのかよ。
所詮は同じ穴の貉か。
「いっぺんだけでも集会に来いって。風早の……なんていうか……そう、オーラ!あいつの大物オーラ見たら、お前も絶対こいつについて行こうって気になるって!」
オーラがどうこうとか、胡散臭い宗教染みたいな勧誘である。
これならまだショーコとエミの方がマシだな。
そういや……オーラで思い出したけど、風早は気が使えるんだったな。
この前殺した気孔闘士6級と同じ様な力だろうか?
大した脅威になるとも思えないし、呪印関連程興味はわかないが、その辺りの情報も集めておいて損はない。
労をかけるつもりはないが、一度顔を出して確認するぐらいなら罰は当たらないだろう。
そう判断した俺は、集会に参加する旨を伝える。
「わかった。入る気はないが、その集会とやらに顔を一回出す位なら構わない」
「お、ほんとか。じゃあ今日の集会に、ショーコやエミと一緒に来てくれ」
「分かった」
「ほらな!もう一押しだったろ?」
ショーコが自分の手柄とばかりに胸を張る。
勘違いも甚だしいが、まあ放置でいいだろう。
どうせ入らない訳だし。
放課後、俺はショーコとエミに連れられ集会とやらに参加する。
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