第17話 剥製
「6人か」
彼らの集団は小規模な物で20人程。
その内、今回の件に関わってるのはその中で6人の様だ。
「もう一回確認した方がいいか?」
血まみれでぐったりしている3人に尋ねた。
拷問は小一時間ほどで、これからさせる事があるので既に傷は回復させてある。
「ひぃぃぃぃ……」
「か、勘弁してください!」
「本当なんです!」
念には念を入れるなら後数セットは続けたい所だが、俺には時間制限がある。
母の帰宅だ。
いつもは大体7時前ぐらいなので、それまでには家に帰っておかないと。
帰宅時に俺がいないと余計な心配をかけてしまう。
現在は5時ちょっと前。
6時半には家に帰りたい所である。
「取り敢えず、6人のうち直ぐ呼び出せる奴を呼べ。後、そいつにお前の着替えも持って来させろ」
「わ、分かりました!」
俺の命令に、助手席に移ったグラサン――いや、もう割れて粉々になっているので元グラサンだな。
そいつがスマホを使って外部と連絡を取る。
その際、妙な事を口走らない様念押しの意味を込めてその首元を背後から掴んでお脅しをかけておく。
余計な真似をすれば即座に握りつぶすぞ、と。
「す……直ぐ近くにいるみたいで、10分でやって来るそうです」
「そうか」
そいつか来る前に車内を軽くあぶって血を乾かしておく。
引き込んだ時に血がつかない様に。
程なくして、紙袋をもったチャラそうな奴が車の窓をノックする。
「谷口さん。持ってきました」
グラサンを見ると頷いたので後部座席を開けると、そいつが車に乗り込もうとして動きを止める。
その異様さから。
何せ車内には血の乾いたにおいが充満している上に、どす黒く汚れまくっているのだ。
真面な神経をしていたら、積み重なる違和感から動きを止めるのは当然の事である。
「うわっ!?」
俺はそんなチャラ男をの髪を掴み、そのまま中に引きずり込んで素早く扉を閉めた。
「て、てめぇ!何しやが――げひゃっ」
騒ごうとしたので、腹に一発入れて黙らせる。
「今日の事で、こいつが余計な事を周りに喋ってないか確認しろ」
拷問するのが確実だが、こいつには大事な役割がある。
下手に傷つける訳にはいかないので、上の人間であるグラサン――谷口に聞き出す様命じた。
俺自身で尋ねないのは、聞いてもだんまりする可能性が高いからだ。
「わ、わかりました。おい、高頭。お前、今日の事誰にも喋ってないだろうな」
「げほっ……げほっ……きょ、今日の事って?」
「林亜美と、が……ガキを追い込むって話だよ!」
「ど、どならないでください。言ってませんよ。下手な事口にしたら締められるのに、そんな馬鹿な事する訳ないじゃないですか……」
チャラ男は周りに吹聴していないと言う。
その言葉を鵜呑みにするのは余りにも愚かだが、所詮下っ端が何かを言っていてもそう大した影響はないだろう。
時間も無いので巻いて行く。
「そ、それより。このガキなんなんですか?いきなり殴ってきて……」
「死神だよ。お前にとってのな」
「ぐげっ……」
チャラ男の首に素早く手刀を入れる。
気絶させるためではない。
内部の骨を粉砕し、即死させるためだ。
「……」
死んで動かなくなったので、その死体に素早く詠唱して魔法をかける。
かけた魔法は特殊な魔法だ。
内部を腐らせ、最終的には消滅させる。
剥製製作なんかにピッタリの魔法と言えるだろう。
因みに生きている相手にかける事は出来ないので、対象の死亡確認にも使えたりもする。
「ひぃぃ……」
「……」
中身が腐って消えて行く事で、チャラ男の体が空気の抜けた風船のようにしぼんでいく。
それをみて三人が恐怖に目を見開く。
「お前らもこうなりたくなきゃ、しっかり働けよ」
俺は口の端を歪め、彼らに脅しを入れておく。
まあどちらにせよ、こいつらは死ぬ事になる訳だが。
それも自分達から進んでそうなる様、懇願する事になる。
何せ《《人柱》》になって貰わないとならないからな。
「さて……」
中身が完全に消滅し、皮だけになったチャラ男の背中の一部を俺は切り裂いた。
これから何をするのか?
簡単な事だ。
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