第16話 罪
翌日も公園で夜の見張りをしたが、特に何も起こらなかった。
因みに山田は休み。
その翌々日も。
まあ妹のケアをつきっきりでしてやってるんだろう。
「ん?」
学校から家に帰ると、アパートの前にスモークガラスのデカい黒の車が止まっている事に気付く。
それは普段は見かけない物で、なんか嫌な予感がしたら、案の定うちの扉の前にガラの悪そうな奴らが三人立っていた。
考えられる原因は、呪印を施した女が俺に気付いて回し者を――
まあその確率は低いか。
十中八九、一昨日ぶちのめした林亜美の彼氏関係だろうな。
俺の姿は見られていないが、林亜美には近所に住んでる事と名前を言ってしまっている。
彼女の口を割って俺んちに来ってところだろう。
教えたのはちょっと失敗だったか。
「あんたら家に何か用か?」
「お前この家の人間か?俺達は安田孝仁って奴に用があるんだが」
「俺が孝仁だ」
家にまでこられている以上、隠しても仕方ない。
堂々と名乗ってやる。
「嘘だろ?勝治の奴、こんなひょろいガキにやられたのか?」
「ボウズ。騙ってると取り返しのつかない事になるぜ」
リーダーっぽい角刈りサングラスのおっさんが、サングラスを指で上げて裸眼で睨みつけて来た。
本人は凄んでるつもりかもしれないが、本気の殺し合いを腐るほどの乗り越えてきた俺にそんなつまらない脅しは効かない。
真っすぐ睨み返してやる。
「別に嘘は言ってないぞ?茶髪ロン毛の、見た目だけの雑魚ストーカーだろ?」
「ふむ……その胆力。どうやらお前で間違いないみたいだな」
ビビらない程度で胆力とか大げさな奴である。
「おう、クソガキ。うちの奴に手を出してタダで済むと思ってんのか?」
チンピラっぽい坊主頭が凄んで来る。
そのまま殴り倒してもいいのだが、場所が悪い。
「場所を変えよう。人目のある所は好ましくないからな。おたくらだってそうだろ?」
「ほう……余裕だな。いいだろう、ならうちの事務所に案内してやる。そこでお前にやられた勝治の治療費と慰謝料の話をしようじゃないか」
どうやら金を強請り取るつもりの様だ。
まあこんな屑共にくれてやる金など一円も無いから、金以外で解決させて貰うとする。
「わかった」
「ついてこい」
俺は奴らに黙ってついて行く。
「おい、ぶつぶつ言ってんじゃねーよ!」
車に乗る直前、坊主頭に頭を小突かれたが我慢した。
どうせ直ぐに借りは返すからな。
「この車の中って、外から見えないよな?」
真ん中の席に座らされた俺は、スモークの事を尋ねた。
「あん?」
「ああ、見えないぞ。だからこんな事してもよぉ、周りは気づきようないって訳だ」
ボウス頭がポケットからナイフを取り出し、俺の頬に刃を押し付ける。
さっき見た感じだと中は見えなかったし、コイツがここまでするって事は、まあ絶対大丈夫って事なのだろう。
――これなら安心して動けるな。
そう判断した俺は、坊主頭の腕を素早く掴み、そして握り潰した。
「ぎゃあああああ!!俺の腕がぁ!!」
潰れた腕から盛大に血飛沫が飛ぶが、俺には付かない。
さき程ブツブツ言ってたのは、実は魔法だ。
あのタイミングで、体に物を弾くバリア系の魔法を張っておいたのである。
じゃないと汚れちまうからな。
「てめぇ!?何を!?」
更に車には、脱出不能のと防音の結界を張ってある。
設置型ではなく、車の動きに合わせて動くタイプの奴だ。
「ぐぁ!?」
「谷口さん!?」
グラサンの顔面を殴って黙らせる。
「て、て、てめぇ……こんな事してだたで済むと思って――ぎゃあああっ!?」
そして最後に、運転席の男の肩を掴んで砕いた。
「お前らを殺す」
俺は呻き声を上げる三人に、そうハッキリと宣言した。
本来なら、俺もこの程度で徹底的に誰かを殺したりはしないのだが……
まあ反社っぽい奴らのゆすりたかりをこれ位と言うのもアレだが、徹底的にやる程とは思っていない。
だが、こいつらは俺の家に来てしまった。
タイミングが悪ければ、母に余計な心配をかけていた可能性だってありえたのだ。
それは万死に値する罪である。
なのでこいつらにはそれ相応の罰は受けて貰う。
死と言う名の罰を。
もちろん、その前に拷問で色々と聞き出させて貰うが。
後々の余計な禍根を断ち切るためにも。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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