第14話 お姉さん
「もうーう、ちょっと酷いじゃないのよぉ。昨日あたし貴方が来るのをずっと待ってたのよ」
朝のホームルーム前。
教室に筋肉達磨のおカマがやってきて、俺に文句を言ってくる。
「え?ギャオス?」
「じゃあ昨日の話マジだったんか?」
「マジかよ!」
その様子にクラス内が騒然となった。
ショーコやエミなんかは目を見開いてこっちを見ている。
「ギャオス。お前の額の文字が出る前に変わった事とかなかったか話せ」
俺は時計をチラリと見る。
ホームルームにはまだ少し時間があったので、ギャオスの苦情は無視して話を進めていく。
「もぅ、なんでそんな事を聞きたがるのかしら。不思議でしょうがないわ」
「不思議成分ならお前の圧勝だ。良いから早く話せよ」
まあどちらかと言うと、不思議より不気味ではあるが。
「それなんだけど……昨日考えて、そういやちょっとだけ不思議だなって思った事を思い出したわ」
「どんな事だ?」
「あたしこう見えて、子供の頃は虐められてたのよねぇ。おカマ野郎きもいんだって感じに」
子供の頃からおカマだったのか。
呪いのせいでこうなった訳じゃない様だな。
「で……その日は鞄を虐めっこ達に隠されて、私夜遅くまで探してたのよ」
「うわっ!?」
ギャオスが話しながら俺の前に座っていた鼻ピーを摘まんで放り投げ、空いたその椅子に当たり前の様に座る。
話の内容と、何気なくやってる行動のギャップが余りにも凄まじい。
「それがなかなか見つからなくって途方に暮れてた時に、変なお姉さんが鞄を持って来てくれたのよ」
「変なお姉さん?」
「そう、変なおねぇさんよ。顔にフードを被って、全身黒の……なんていうのかしら、占い師っぽい恰好をした人だったわ。不気味な雰囲気で、喋り方もなんかボソボソした感じで。私その人を見た瞬間『キモッ』て思ったのをよく覚えてるわ」
まあ確かに、子供から見たら不気味その物だろうな。
そんな女と夜に遭遇したら。
もっとも、今のお前はそれ以上に不気味な訳だが。
「それでそのお姉さんが私に鞄を渡す時こう聞いて来たのよ。『虐めっこを懲らしめる力が欲しくない?』って。もうほんと意味不明。でも私も鞄を見つけて貰った手前無視も出来なかったから、欲しいって答えた訳よ」
力が欲しくない?と来たか。
確かに怪しさ満載だな。
「それで?」
「それだけ。そのお姉さんとはそれっきりよ。だから額の文字とは何の関係も無し」
何かされた訳でもなく、ただただ不気味な変質者だった訳か。
「他はないのか?」
「他は特に思い浮かばないわねぇ。だってその翌日には、額に文字が浮かんできた訳だし」
「前日の話かよ!」
思わず大声で突っ込んでしまった。
怪しい女に『力が欲しいか?』と問われた翌日に、額にギャオスなんて文字が浮かんで来たのなら完全に真っ黒じゃねぇか。
何故それを疑わない?。
頭わいて……いや、それが呪いの効果の一種と考えればそれ程不自然じゃないか。
術者を追求しない様、精神誘導の効果が入っているのだろう。
ギャオスの呪印には。
「まあいい。放課後、その女と出会った場所に案内してくれ」
もう何年も前の話なので、痕跡が残っている可能性は極めて低いだろう。
とは言え、他に手がかりも無いのでそこを当たるしか手がない。
まあ見つからなかったその時はその時だ。
呪印の事は気になるが、生活に実害が出ないなら無理して追いかける必要はないからな。
「オッケー、放課後デートね」
「気持ち悪い事言うな」
「ふごっ!?」
気持ち悪い発言に思わず手が出てしまった。
まあギャオスは呪印があって頑丈だから、張り手で吹っ飛ばしたくらいならどうって事はないだろう。
鼻ピーが吹っ飛んだギャオスの直撃を喰らってはいたが、まあ些細な事である。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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