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第13話 報告

「おいおい、何でそんな平気な感じなんだよ……」


「もしかして郷田の奴に勝ったのか?」


教室に戻ると、俺に気付いたエミとショーコが大げさに驚く。


「ああ」


「いや強いとは思ってたけど、まさかあの郷田に、しかも無傷で勝っちまうなんてなぁ」


「でも郷田のバックにはギャオスがいるから、流石の安田もあれには敵わねぇだろ。さっさとうちに入った方がいいぜ」


「ギャオスなら一緒にいたからもうぶっ飛ばしたぞ」


「えぇ!?」


「はぁ!?」


俺の言葉に、二人がおまぬけな顔になる。

二人だけではなく、声が聞こえていたのがクラス全体が騒然となり――


マジか?

あの化け物倒したのかよ?

安田やばくね?


――的な言葉が周囲に飛び交う。


どうやらギャオスは相当有名な様だ。

まああの強烈なビジュアルのキャラだからな。

俺は25年のブランクがあったから忘れてたけど。


「いやいやいや、いくらなんでもそれは……なぁ」


「そ、そうだよな。あれに勝てるのはうちらのトップだけだし。安田も冗談がきついぜ」


どうやらエミとショーコは冗談と判断した様だ。

まあ別にいいけど。


「俺は昼飯まだだから」


そう言って席に着き、弁当箱を開く。


「安田君。さっき言ってたギャオスをやったって本当っすか?」


すると前の席の赤毛の鼻ピーが話しかけて来た。

話し方が昨日と違って下っ端臭が凄いが、まあ気にしない事にする。


「ああ」


「マジっすか。ギャオスをやったって事は、安田君がこの学校のナンバー2って事っすよ」


ギャオスはナンバー2って事は、それより強いと思われるショーコ達のトップがこの学校の番長って事になる訳か。


「どうでもいい」


「クールっすね」


クールねぇ……


喧嘩の強さに一喜一憂する意味が分からない。

しかも高々学生の。

命がかかってるなら分からなくもないが、そんな訳ないしな。


「時間がないからもう話しかけるな」


「うっす!」


昼休みが終わりそうだから、俺は急いで昼ご飯を食べた。

午後の授業が終わり、俺は山田の家へと向かう。

例の報告をする為に。


「あ、そういや……」


山田んちのインターフォンを押そうとして、不意に思い出す。

放課後、ギャオスに裏庭に来るよう言っていた事を。


「山田に話をしてから学校に……いや、面倒くさいし明日でいいか」


別に急いで聞く必要もないしな。

ギャオスも俺が行かなきゃ程ほどで切り上げて帰るだろう。


そう結論付け、インターフォンを押す。


「はい、もしもし」


「山田、俺だ」


家の中からバタバタと音が響き、ガチャリと勢いよく扉が開いた。


「は、入ってくれ」


「ああ」


山田の部屋に案内されると、奴のパソコンには電源が入っていた。

その画面には、マンションの一室で謎の爆発と言う見出しが映し出されている。

映っているのは当然、長友って奴のマンションだ。


「もうニュースになってるのか。早いな」


「そ、それじゃあやっぱり!」


「おう、もう二度とあの4人がお前らの前に姿を現す事はないぞ。映像の方も全部消去済みだ。安心しろ」


「昨日の今日で一体どうやって……いや、そんな事はどうでもいい。ありがとう。ありがとう、安田……」


山田が俺の両肩に手を置き、ボロボロと涙を流す。

俺はそんな山田の肩に手を置く。


「……」


とりあえず面倒事は片付いた。

けど、それで全ての問題が解決した訳ではない。


……妹さんの事があるからな。


屑共が永遠に消えたからって、彼女の受けた痛みや恐怖が消えさる訳じゃない。

山田は家族として、これからそんな妹さんを支えて行ってやらないとならないのだ。


山田達は何も悪い事なんかせず、真面目に生きていただけだってのに……


本当に腹立たしい話だ。

そう考えると、あの4人をもう一度ぶち殺してやりたくなる。

まあもう無理だが。


何とかしてやりたい所だけど……俺が下手に手を出すとどうなるか分からんからなぁ。


俺の習得した魔法の中には、実は記憶を消す物もあった。

なので暴行された記憶を消す事も可能ではある。


但しこの魔法はかなり大雑把な物で、特定の数日間の記憶だけを消すと言うピンポイントな使い方は出来ない。

そのため記憶を消す際は、数か月単位の物が消えてしまう。


高々数か月と思うかもしれないが、人の人格は記憶の積み重ねで形成されている。

そのため、数か月分の記憶が丸々消えてしまうと、精神や人格に多大な影響を与えてしまうのは目に見えていた。

下手をしたら人格障害で頭がおかしくなる可能性だってあり得る。


そう考えると、下手にその処置を施す事が出来ないのだ。

もし正気を失ってしまったら、流石にもう手の施しようがないから。

なので記憶の消去は最後の手段だ。


「山田。何かまた困ったら、遠慮なく俺に相談してくれ」


山田が落ち着いた所で声をかける。

可能な限り、俺は彼の力になるつもりだ。

だって友達だからな。

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