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 そんな自分の道化に塩対応な球体と歩いていれば、目の前にドアが見えてきた。相変わらず無機質な扉である。

「ここか?」

『肯定、敵影なし……中には誰もいないようです』

「急に襲われるのは、マジで勘弁なんだけど……」

 エイトの肯定と解析を聞いて扉の目の前に立てば、俺の存在に反応したのか空気が抜けたような音と共に扉を開く。

 部屋の中はそこそこ広く、簡素な休憩スペースのような場所があり、棚が大量に並んでいる。どうやらここは倉庫らしい。

『恐らく、最下層で働く者たちの休憩スペースを含めた場所だったようです

 一花のIDで入れたと推測しております』

「なるほどな」

 ますます自分の身体がわからないが、一旦そういうものだと思っておいた方がいいだろう。今はここを探索する他ない。


『食料と飲料水はあるようです』

「食料ね……」

 棚には、銀色の袋でパウチされたものがいくつか乱雑に置かれている。そのうちの一つを取ると、少しだけ感じる重み。言葉がわからずにくるくるとパウチを回していると、エイトが察したのか『固形食糧』だと教えてくれた。試しにパウチを開けて中身を取り出す。

 この世界の飯に興味があったのもあるが、なんとなく小腹がすいたのである。


 一つ取り出してみれば、見た目こそ某バランス栄養食品のように、長方形で穴がいくつか空いたお菓子だった。


「おあぁ……」


 ただし、見た目は海外のケーキもびっくりなくらい、レインボーである。食欲減衰するレベルの毒々しさだ。毒ではないのだから食べても大丈夫だ、というエイトの声に恐る恐る食べてみる。


「…………」


 口の中の水分が奪われるのはいい。だいたい予測していた通りだ。だが、食感はもそっとしていて、噛めば噛むほど不快感が増す。なんというか砂を口に含んでいるようだ。そして、なによりも――まずい。


 とにかくまずい。

 ひたすらまずい。


 脳を直撃する甘さが支配したかと思えば、防腐のためなのか酸っぱさが口の中に広がる。そのあとで、塩をぶち込みまくったようなしょっぱさが、舌の上でコサックダンスを始めるという、味の調和というものをかなぐり捨てたような味である。

 調理技術や調味料がないからまずいのではない。どちらかと言えば、人が食事を楽しむという行為を捨てて、効率と栄養だけを求めた結果できたというものだ。


『完全栄養食、と記載があるのですが……一花の顔を見るにそれは難しいようですね』


 ただの栄養を得るだけの機能を持った食べ物に、何の意味があるのかと問いたい。


「くっそまずい」

『そのようですね』


 飲料水を飲んで舌のうえに残る不快感を洗い流す。

 うぇ……と舌を出して眉間に皺を寄せる。他の食料も同様なのだろうか、と考えたが、それよりも優先すべきはエイトの修理だ。

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