56話 果物狩り
翌朝。
「フラン、おはよう」
「おはよう、アタル」
「二日酔いは大丈夫か?」
「アタルとは違うから大丈夫よ」
「うぐっ……」
フランと朝の挨拶をした際、昨日はフランが結構な量のお酒を飲んでいたので二日酔いの心配をすると、先日、俺が二日酔いで苦しんでいたのを引き合いに出されて心に思わぬダメージを受けてしまった。
そんなやりとりをしつつ、身だしなみを整えたり、朝食を食べるなど、出発の準備を済ませると拠点と世界樹を収納し、ポムムルの町へと向かった。
町に到着すると、昨日と同様に貸し馬車屋へ馬車を預けた後、『ポムムル観光協会』に向かい、観光協会に到着すると、受付窓口で果物狩りの際の注意事項などについて説明を受けた後、20歳位の女性の案内人の案内で近くの果樹園まで馬車で移動することになった。
「ふふっ、果物狩り楽しみね」
「ああ、そうだな。今日の《贅沢コース》はブドウ、モモ、リンゴ、ミカン、スターラの5種類の果物狩りができるみたいだし楽しみだな」
「その中だと私はモモが一番好きかしら。見た目もピンク色で可愛いし、噛むと甘い果汁があふれでてきて美味しいのよね」
「見た目が可愛いかはともかく美味しいよな。それよりスターラがどういう果物なのか知らないんだけど美味しいのか?」
「スターラは町に来るときに道沿いに見かけた虹色の星形の果物ね。見た目は派手だけど、皮を剥くとぷるぷるの透明な果肉があって、その果肉が甘酸っぱくて美味しいのよ」
見た目や形は違うが、ぷるぷるの果肉というと前の世界にあったライチみたいな感じか? どんな味がするのか楽しみだな。
そんな会話をしているうちに目的の果樹園に到着したのか、馬車が停止した。
「お客さん、到着しました。果樹園は周囲に魔物除けがあるので敷地内は安全ですが、敷地の外は危ないので指定された場所以外には立ち入らないようにお願いします。
こちらで《贅沢コース》の果物を全て採取できますので、採取方法や注意事項について説明していきますね。聞くよりも実際にやってみせた方が分かると思いますので私に付いてきて下さい」
そういうと案内人の女性は、まず、ブドウの生っている木の前に行くと、ブドウの底部を手で抑えると枝と果実の間の茎をハサミで切り落とした。
ブドウ自体は粒の大きい巨峰のような見た目で、ちゃんと実を剪定していたのか、大きさが均一なまん丸な実がついており美味しそうであった。
「ブドウはこんな感じですね。美味しいものの見分け方としては、色が濃いのと、実の表面に白っぽい粉のようなものが付いている方が甘くて美味しいですよ」
白色の粉のようなものは確かブルームっていうんだったか。
ブドウの脂から出来ていて、雨や病気から実を守り、中の水分も逃さないような役割があるとテレビで見た気がするが、この世界でもちゃんとそういう知識があるんだな。
「次はモモの収穫方法について説明しますね」
続けて案内人は、モモが生っている木の前で立ち止まると、実のなっている付近の枝をしっかりと持ち、モモを片手でがっちりと掴むと引っ張りながら少しだけ捻った。
すると枝からモモが綺麗に外れ、俺はその手際に感心した。
「モモはこんな感じで収穫します。モモを引っ張る時に無理矢理引っ張ると実の根元が傷付いて痛んでしまうので注意してくださいね。
甘いものの見分け方は、糖度が上がると皮に亀裂が入り、白い点々が出てくるので、そういった特徴があるものの方が甘くて美味しいですよ。
また、この品種だと色が濃いものの方が甘味が強いのでそういったものを選ぶといいですね。
最後に注意点としては痛みやすいので収穫しない場合は手で触らないでください」
モモの収穫方法などについても説明を受けた後、リンゴやミカン、スターラについても同様に収穫方法や美味しいものの見分け方について説明を受けた。
「へえ、果物の収穫方法がそれぞれ違うのにも驚いたけど、美味しい果物の見分け方は勉強になるわね。今までに何度かその辺に生っている果実を採って食べたことはあるけど、腐っているかどうかくらいしか気にしたことなかったわ」
「ああ、こういうことを教えてもらえると今後店とかで果物を購入するときにも役立ちそうでありがたいよな」
フランと二人して案内人の説明に感心していると、いよいよ自分達の手で果物を収穫することになった。
俺が年甲斐もなくわくわくしてしていると、フランも同じ気持ちなのか、そわそわして落ち着かない様子であった。
そして、いざ果物狩りが始まると、俺はまずフランと一緒にモモ狩りをすることにした。
案内人の説明どおりにやってみると、思ったよりも簡単にモモを採ることができた。
モモは皮ごと食べられ、その皮には栄養も豊富だと聞いたことがあるが、俺は実の表面にある産毛が気になったので、皮を剥いてからモモにかぶりつくと、甘い匂いと果肉から果汁が溢れ出て、とても美味しかった。
「うーん、やっぱりモモは美味しいわね! いくらでも食べられそうだわ」
俺がモモを味わっていると、フランも美味しそうにモモを頬張っており幸せそうな様子であった。
「「「ワフッ!」」」
「ああ、ごめんな。ポメラ達も食べたいよな。今、採ってあげるから、ちょっと待っていてくれ」
ポメラ達は俺とフランだけがモモを味わっているのを見て、我慢できなくなったのか、早くモモを食べさせろと催促してきた。
そんなポメラ達のために急いでモモを採ってあげると、ポメラ達はワフワフいいながら、美味しそうにモモにかぶりついており、見ていて微笑ましかった。
モモ狩りを充分に堪能した後は、続けてブドウ、リンゴ、ミカン、スターラと順番に果物狩りを楽しんでいったが、最後のスターラのころには、他の果物を食べ過ぎたことでお腹が一杯になっており、1個だけ食べると、残りはお土産として持ち帰ることにした。
スターラは見た目は虹色で派手であったが、果実自体はモモと同じように枝から生えており、採取方法についても同じであった。
表面の皮はそこそこ厚かったが、皮を剥くとフランが言っていたとおり、ぷるぷるの透明な果肉が出てきて、食べてみると俺の想像どおり、ライチのような味や食感で甘酸っぱくて美味しかった。
「果物は美味しかったし、今日は楽しかったな」
「そうね。どの果物も美味しかったし、食べられなかった果物もまだ色々とあるからまた来たいわね」
「「「ワフン」」」
帰りの道中、果物狩りに満足した様子を見せるフランやポメラ達を見て、俺はまたみんなで果物狩りしに来ようと思うのであった。




