34話 拠点への帰り道1
2日後の朝。
「さて、拠点に戻るとするか」
身支度を整え、朝食を終えた後、俺は宿を出発した。
フランに絡まれるという余計なトラブルに巻き込まれたが、それ以外は概ね目的を達した。
買い出しについては、食料や調味料、日用品の他に植物成長促進剤を使った畑を作ろうと思って色々な野菜や薬草の種も購入した。
魔石も魔導具店や錬金術店で購入できることがわかったので店に見に行ったのだが、《魔石(中)》は脅威度4以上の魔物からしか取れないとあって、思ったよりも高額であり今回は購入しなかった。
よくよく考えたら、魔力を消費すれば【創生】スキルで創れそうだしな……っていうかフランが求めているサフロスっていう花も創れたのでは……
うわぁ~最初から気付いておけば、拠点に連れて行く必要なかったな……
今から【創生】スキルで創ってしまうか……
いや……市場で販売されることがないって言っていたのに俺が今日持っていたら不自然だから駄目だな。
一度拠点には連れていって、フランが探索に行っている間に花を創り出して早々にお帰りいただくしかないかな。
そんなことを考えながら歩いているうちに町の正門前に到着した。
門の前にはいつからいたのか、マントに身を包んだ赤髪の少女が佇んでおり、こっちに気付いて声を掛けてきた。
「アタル来てくれたのね。正直、来てくれないかもしれないと心配だったの」
「いや、さすがに約束は破らないから、ちゃんと拠点には案内するよ」
「ふふっ、ありがと。私がいうのもなんだけど見ず知らずの私のお願いを聞いてくれるなんてお人好しよね」
そう言って笑いかけてくるフランにドキッとしてしまった。
性格がキツそうなフランが笑うとギャップがすごいな。
これがリアルツンデレという奴か……いや、甘えてくるわけではないからちょっと違うか。
「うんっ? どうしたのよ」
俺が黙っていると、フランは俺の顔を覗き込んできた。
「な、なんでもないよ! それじゃあ出発するか!」
俺は照れ隠しをするために前を向き、拠点に向け出発した。
…
「そういえば、フランはB級冒険者なんだろ。武器は何使ってるの?」
「私の武器は私の身長くらいある大剣よ」
自慢げに胸を張っている彼女をみるも、マント姿があるだけでどこにも大剣があるようには見えない。
「ふふん、私の武器はこれで出し入れできるのよ」
そう言ってフランは右腕に付けていた金色のブレスレットを見せてきた。
「このブレスレットには【換装】スキルが付与されていて、所持している武器を登録しておくと、半径100m以内なら魔力を込めるだけで他の場所に置いてあったり、収納バッグ等の中に締まっていても瞬時に武器を取り出せるのよ。今から大剣を出すからちゃんと見ていなさいよね」
フランが剣を握るかのように両手を重ねると、そこに真紅に輝く真っ赤な大剣が現れた。
「おぉーすごいな! それがフランの武器なのか」
「驚いたようね。これが私の大剣よ。魔力を込めると凄いんだけど魔力の消費が激しいから実際に魔物が現れたら見せてあげるわ」
大剣とそれを扱うフランに驚いたのはもちろんだけど、【換装】スキル便利だな。
「ああ、どんな能力があるか期待しとくよ。それにそんな大剣を扱えるなんて、見かけによらず力があるんだな」
「生身でも扱えないことはないんだけど、【筋力up】が付与された装飾品を付けてるのよ」
いや、生身でも一応扱えるならすごいと思うんだけど……この華奢な体のどこにそんな力が……いや、マントの下は実はムキムキなのか……想像すると何か嫌だな……
「そうなんだ。そうすると大剣は普段は収納バッグにでも締まっているのか? 魔境に行くには荷物は少ないからおかしいとは思っていたんだけど」
「そうよ。腰につけているポーチに【収納】スキルが付与されているのよ。ただ、収納バッグを所持していると変な奴に目をつけられるかもしれないから、アタルみたいなG級冒険者はやめといたほうがいいわよ。まあ、収納バッグは高額だから手に入れるのは難しいかもしれないけど」
やっぱり目をつけられるんだな。たしかにG級冒険者が収納バックなんか持っていたらカモにしか見えないもんな。
見た目でわからないようにでかめのリュックにしといて良かったわ。
「へえ、そうなんだ。まあ、俺にはこのリュックがあるから暫くは必要ないかな」
「あなたのリュック大きいけど、ポケットもたくさん付いていて便利そうよね。作りもしっかりしているし、見たことがない斬新なデザインね」
「まあ、特注品だからな。開口部も広いから大きめの物もしまえるのが自慢だよ」
…
そういった会話を続けているうちに魔境が見えてきた。
「ようやくここまで来たけど、一旦入口付近で食事を兼ねた休憩をしてから魔境に入る形でいいか?」
「ええ、あなたの拠点に連れて行ってもらうんだから、あなたの指示に従うわ」
「それじゃあ、休憩にするけど飯はどうする? ちゃんと持ってきてるか?」
「バカにしないで! ちゃんと持ってきてるわよ」
そう言って、フランは懐に手を入れてゴソゴソしていたと思うと、干し肉と果物を取り出した。
「えっ……それだけ! 料理を作ったりはしないの?」
「冒険中にはしないわよ。火や煙、臭いがすると魔物が寄ってくるじゃない。だから、基本的にはこういった干し肉や果物、パン等しか食べないわ」
おぉ、思った以上にまともな理由だな。
あれ……そう考えると魔境の中で普通に料理を作って食事をしていた俺って危なかったのかもしれないな。
まあ、何事もなかったのだから今後気をつければいいか。
「なるほど勉強になるよ。でも、まだ魔境の入口前だから何か作ってもいいか?」
「ええ、構わないわよ。この辺なら見とおしもいいから万が一魔物が近づいてきてもわかるから」
「それじゃあ、お言葉に甘えて作らせてもらうよ。フランの分も作るから少し待っててくれ」
「えっ……私の分も作ってくれるの……それじゃあお願いしてもいいかしら。ちゃんとお金は払うから」
「いや、お金はいらないよ。友好の証として遠慮せずにいただいてくれ」
「友好の証ね……それじゃあ遠慮せずにいただくわ」
そう言うとフランはにかんだ笑顔を見せた。
うん、ご飯で喜んでもらえそうで良かった。
さて、待たせるのも悪いから簡単に作れるものにしとくか。
俺は土魔法を使って、簡単に竈門を作り、そこに拾ってきた乾燥した木の枝を入れて火をくべた。
竈門の上にはリュックから取り出したフライパンを置き、油を入れて加熱した後、そこに切った玉ねぎ、ピーマン、ベーコンを入れて炒めた。
ある程度炒めた後、水と塩を入れて沸騰させたら、乾燥パスタを投入してかき混ぜながら加熱。
蓋をして火を止めたら放置する。
数分後、蓋を開けて加熱して水分を飛ばしたら、以前【創生】スキルで創っておいた某メーカーっぽい味のケチャップを投入して混ぜ合わせる。
最後に味見しつつ。塩、胡椒で味を整えればナポリタンの完成だ。
「さあ、お口に合うかわからないけど食べてくれ」
「すごく美味しそうね。野営中に食べる料理とは思えないわ。それよりもあの竈門を作ったのって土魔法でしょ。あなた詠唱していなかったわよね……もしかして無詠唱で使えるの?」
「ああ、土魔法だよ。特訓したら無詠唱で使えるようになったんだよ。そんなことより、冷めてしまったら美味しくなくなるからさっさと食べてしまおう」
詳しく聞かれても困るので話を逸らした俺をジトっとした目つきで見つめるフラン。
しかし、ナポリタンを食べると目を瞬かせて、食事に夢中になったので、二人して黙々と食事を摂るのであった。




