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22話 もふもふ天国

 さて、この毛玉達をどうするかな?


 赤黒い毛玉達は怪我が治ったにも関わらず、この場から離れず、灰色の毛玉達は湖の周りを元気に駆けまわっている。

 時折、俺のところに来て、体を擦り寄せてくれるので懐かれているようで悪い気はしないのだが、土埃等で汚れていて微妙な気分だ。

 赤黒い毛玉にあっては、血生臭い上にポーションのせいでべたべただから余計ひどい。


 しかし、間近で見るまで気づかなかったけど、毛玉の正面にはつぶらな黒目とちっちゃな三角耳、逆三角形の黒鼻がついていた。


 うーん……犬の魔物かな?

 こんな魔物の情報は冒険者の資料室には無かったからわからないな…

 正式名称がわかるまでは、毛玉犬とでも呼んでおくか。


 とりあえず、ここまで出番の無かったあのスキルを使って綺麗にしてやろう。


 俺はスマホを操作して【女神の楽園】にログイン。【スキル編成】を開き、【解体】と【洗濯】を入れ替えた。


【洗濯】は旅の道中に【デイリー召喚】で手に入れた☆1のスキルだが、正直わざわざスキルを入れ替えてまで使うつもりはなかった。

 効果は洗濯力上昇(洗濯物の汚れが落ちやすくなる上に、洗濯した後は汚れがつきにくくなる)というお子さんが多い家庭では有用なスキルだ。


 毛玉犬達に体を擦り寄せられたせいで、自分の体や服もだいぶ汚れてしまったので、ついでに綺麗にしよう。


 俺は収納リュックから町で購入しておいた固形石鹸を取り出し、最初に灰色の毛玉犬達を洗うことに決めた。


「おーい、こっちにおいで~」


 俺がそう声をかけると、灰色の毛玉犬達はこっちを向いて動きを一旦止めた後、一目散にこっちに駆けてきた。


「うぉ!!」


 1体の毛玉犬が俺のお腹に飛び込んできて、見事にお腹にクリーンヒット。

 

「なかなか……やるじゃない…か……」


 俺は大の字に倒れながらそう呟くと、毛玉犬達に顔中を舐めまわされてしまった。


「うぅ……獣臭い」


 俺はじわじわ効いてくるお腹の痛みと舐めまわされたことによる獣臭さを我慢しながら、湖の方に毛玉犬達を誘導した。


 この付近の湖の中には、魔物はいなさそうだな。


【隠密】スキルに何の反応もないことから、そう結論付けただが、念のため、土魔法で水路を作り、少し離れた場所に毛玉達が入れる位の穴を作った。

 湖の水が水路に流れ込んできて穴に水が貯まったところで、ひとまず俺は自分の顔を洗った。


「ぷはー、冷たくてスッキリするな! 次はお前達の番だぞ」


 俺は毛玉犬を捕まえ、水の中に入れたが、嫌がる様子が見られなかったことから、石鹸でゴシゴシと体の隅々まで洗うことにした。



 数分後、土魔法で作ったバケツに入れた水で石鹸を洗い流してやると、真っ白な毛玉犬が出てきた。

 毛玉犬は身震いをして水が周囲に飛び散ったが、俺がタオルで全身を拭きあげてやると、もふもふな仕上がりになった。


「おぉー! すごいもふもふだ! 確かこんな犬いたよな…」

 

【洗濯】スキルの凄さに驚きつつ、目の前の愛くるしいもふもふ犬に心を奪われてしまった。


 このもふもふ感はやばいな…

 抱きついて埋もれたくなる。

 

 思わず抱きつきそうになったが、自分の体も汚いし、あと2体洗わなきゃいけないので何とか気持ちを抑え我慢した。


 続けてもう1体の灰色の毛玉犬も洗い、最後に赤黒い毛玉犬も呼んで綺麗にしてやった。

 赤黒い毛玉犬は灰色の毛玉犬よりも数倍大きい上に、血が固まってしまっている等、頑固な汚れがこびりついており、大変洗いがいがあった。

 しかし、【洗濯】スキルの効果か、見る見るうちに汚れが落ちていった。


 …


 …毛玉犬達を洗い始めてから1時間後。


 するとどうでしょう! あんなに汚かった毛玉犬が、大小3つの真っ白なもふもふ犬に!

 職人の匠な技を感じさせます。


 目の前には薄汚れた毛玉犬ではなく、以前とは似ても似つかぬ、もふもふ犬が存在していた。


 これは【洗濯】スキル様様だな! 別に必要ないとか思っていてすみません。


 心の中で【洗濯】スキルに謝罪しつつ、俺は自分自身も綺麗に洗った後、毛玉犬改めもふもふ犬達に抱きつき、このもふもふ天国を楽しむのであった。


 …


 数十分後、もふもふ天国を堪能した俺は我に返り、これからどうするかを考えた。


 今日は周辺の探索をするつもりだったけど、なんかこのままゆっくりしたいな…

 冬にコタツから出られなくなるのと一緒の気分に陥りながら、俺はもふもふ犬達に声をかけた。


「お前たちはこれからどうするんだ? いっそのことここに一緒に住むか?」


 このもふもふ天国がなくなるのは大きな損失なので、見違えたもふもふ犬達にそう声をかけると、


「「「ワオン」」」


と肯定の返事なのか3体が鳴き声をあげつつ、俺の顔をぺろぺろ舐めてきた。


 …っていうか、こいつらも魔物だよな。何て魔物なんだ?

 親の方は怪我をしていたわりに、レッドグリズリーと良い勝負をしていたし…

 少なくても脅威度3以上はあるだろうな。

 いや、こいつらが集団で襲ってきたら、可愛すぎて攻撃できないだろうから、それ以上の脅威度だな。

 あと、ここに一緒に住むのなら、名前が必要だな。

 雄か雌か確認しなくては。


 確認すると、大きいのが雌で、小さいのは雄と雌であった。


 母親と兄妹(もしくは姉弟)だったか。

 雄がやんちゃで、雌の方が大人しくてしっかりしてそうだから姉弟ってことにしとくか。


 名前は何にするかな…

 似たような犬種の名前を文字って、母親がポメラ、姉がニーア、弟がイアンにしとくか。 

 

「お前たちの名前はポメラ、ニーア、イアンだ。これからよろしくな」


「「「ワオン」」」


 3体の嬉しそうな鳴き声が周囲に響きわたり、俺の生活に新たな仲間が加わるのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ポメラニアン(に近い何か?)が仲間入り…だぁーーーーーーー!!! モフモフだよ!?モフモフ!!…モフモフは正義!! …後はヒロインが出てくれば…完璧の布陣だ… [気になる点] 毛玉三つ…
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