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20話 魔境探索

 魔境。


 それは人が未だ足を踏み入れていない未開の地。

 どんな危険が待ち受けているかわからないが、言葉では表しきれないスケールの大自然、未だかつて発見されていない魔物、植物、鉱石等の数々が俺を待っている。


 …ということで、正気に戻った俺は魔境の入口付近に設置されている兵士や冒険者がいる拠点をスルーして、すでに魔境の中を探索している。


 俺は【隠密】スキルを使い、気配を消しつつ、周囲の気配を索敵しながら注意深く進んでいく。

 

 魔境内は遠くからも見えた樹齢数百年超えは確実であろう巨木がいくつも生えており、近くで見るとその存在感は圧倒的であり、見たこともない巨大な植物や色とりどりのきのこ等も生えており、幻想的風景を醸し出していた。


 こんな風景が見れただけでもきた甲斐があったな。


 そんなことを考えていると、100m位離れた地点に何かしらの生物の気配を感じた。


 もしかして魔境に来て初めての魔物か!

 とりあえず気付かれないように近づいてみるか。


 気配を感じた方に慎重に進むと、木の棍棒を持った二足歩行の豚頭の魔物が1体おり、近くに生っていた木の実に貪りついていた。


 おぉー! あれはオークかな。

 確か脅威度3の魔物だった筈。

 1体だけだし、土魔法が効くか試してしまおう。


 オークの動きはあまり速くないはずだから、万が一、土魔法が効かなくても逃げ切れるだろう。


 素材としては、肉が美味いらしいが、なんとなく二足歩行の生き物を解体したり、食べるのは嫌悪感があるから今回は諦めよう。

 また、魔物には動物と違って、体のどこかに魔石があるらしいけど、先程と同じ理由でスルーだな。


 ……ということで今回は素材を気にせずにオークを倒すことだけに集中しようと思う。


 オークはこっちに気付いていないから、ジャイアントラビットやオオカミを倒した時と同じように土壁で囲んだ後、石の杭で串刺しにしてしまうか。

 もし倒せずに、土壁から出てきそうなら地面に穴を開けて落とした後に埋めてしまおう。

 もしくは、砂で目潰しした後に遠くから、石の礫を飛ばしてみても面白いかもしれない。


 色々な倒し方を考えながらも、とりあえず攻撃してみようと思い、俺は念のため、ジャイアントラビットを倒した時よりも多く魔力を込めて土魔法を発動させた。


 その瞬間、オークの四方の地面から土壁がせり上がり、オークを閉じ込めた後、地面や土壁から石の杭が突き出された。


「グモオオォ……オォ」


 石の杭の効果があったのか、オークの悲痛な呻き声が聞こえた。

 土壁はオークが暴れているのか、激しく揺れたり、ひびが入ってしまったが壊れることはなく、数分もするとオークの呻き声は聞こえなくなった。


 念のため、もう一発!


 土壁内に追加で石の杭を突き出したが、オークの呻き声は聞こえなかったので倒せただろう。


 見たくないけど、どのくらいの効果があったか確かめるために死体を確認しておくか。


 気が進まなかったが、今後の戦闘方針を決めるのに必要だったことから、土壁を解除したところ、全身串刺しのオークの死体があった。


 うわー……効果があるのがわかったのはいいけど、この方法では素材は回収できないな……


 まあ、脅威度3の魔物にも土魔法が効くことがわかっただけでも収穫はあったな。

 今度は土壁で逃げられないようにした後、足元に穴を作って落としてから生き埋めにしてみるか。

 倒した後に掘り出せば、素材もほとんど傷付かないと思うし…

 

 そんなことを考えつつ、俺はその場を後にして。魔境の探索を続けることにした。


 …


 それから数時間後。


 見たこともない魔物や植物を見つけてテンションを上げたり、色々な周囲の景色に見惚れたりしているうちに俺は見事に現在地を見失い、いわゆる迷子になってしまった。


 うーん…これは想定外だな。

 予定では今日は魔境の入口近辺の探索を行う筈だったのに。

 もうすぐ暗くなってしまうから、そろそろ寝床も確保しないとな。

 

 寝床の心配をしつつも、迷子になってしまったので、開きなおって適当にぶらついていると、木々がなくなり開けた場所に出た。

 

 開けた場所の中央には、サッカーコート程の広さのある湖があり、そこの水は湖の底が見えるんではないかと思われるくらい透きとおっていた。

 また、湖の周辺には色とりどりの草花が咲きほこっており、綺麗な風景であった。


 うわぁ…きれいな景色だな…

 よし! 拠点はここにしよう!


 水源があり、開けた場所であることから、様々な魔物が近づいてくる危険は高いが、どうせ拠点を作るなら景観がきれいな方がいいので、この場所に拠点をつくることにした。

 湖の中に何らかの生物の気配もするけど、注意しておけばきっと大丈夫だろう。


 いよいよ、俺のほのぼのスローライフが始まる!


 拠点となる場所が決まったことで、俺は思わずにやついてしまったが、とりあえず寝床を確保すべく行動を開始した。


 まず、湖からある程度離れた場所に土魔法で深さ2m程の穴を掘り、穴は崩れないように補強した。

 その後、俺が立てるくらいの高さの横穴を掘り進め、ワンルームくらいの広さにした後、壁を補強して、換気用の穴を天井に開ければ、あら不思議、見事な地下室の完成!


…ということで、ひとまずは地下に住むことにした。

 入口は安全面を考えて土魔法で埋めておいて、出るときにまた穴を開けるつもりだ。

 魔境の地下は巨木により根が張り巡らされているため、土の中を進む魔物が今のところ確認されていない。

 どっかには棲息しているのかもしれないが、現時点においては地上よりは安全なのでここを仮の寝床にするつもりである。

 将来的には湖を眺められるロッジや巨木にツリーハウスなんかを作り、そこで生活してみたい。


 寝床の確保をした後、収納バッグに入れていた干し肉などを食べつつ、デイリー召喚を行ったり、デイリーミッションを受け取ったりしながら、今後の予定について考えることにした。


 現在地がわからないのは流石にまずいよな…

 どこか高い場所から覗けば、周囲が確認出来るかもしれないが、木々が高すぎるからそれも厳しいだろう。

 運良く、他の冒険者に遭遇することがあれば、魔境の入口の方向を教えてもらう。

 もしくは、地道に目印をつけながら1方向の探索を行うかだな。

 

 まあ、脅威度3のオークにも土魔法が通じたし、ここでの生活も何とかなるだろう。

 食料や水についても、今のところは収納リュックにそこそこ入っているので問題ない。

 湖の水が飲めるかどうかだけ後で確認しておこう。

 

 とりあえず、明日はこの周辺を中心に探索してみて、他に住みやすそうな場所が見つからなければ、できる範囲でこの場所を開拓してみるかな。


 そんなことを考えつつ、初日の魔境探索を終えたのであった。

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