18話 資料室
冒険者ギルド2階の資料室へ行くと、いくつかの本棚が並んでおり、棚には『冒険者の心得』、『魔物解体新書』、『薬草図鑑』等といった本に混じって、数十枚の紙を綴った冊子がいくつか収納されていた。
俺が知りたかった魔境の情報については、冊子に書かれていると受付のエリーさんから聞いていたので、試しに1冊の冊子をとると表紙に『魔境に生息する魔物について』と書かれていた。
冊子の中身を確認すると、ちゃんとした本というよりは、冒険者が実際に戦った際の魔物の特徴や攻撃方法、素材になった部位等が書かれていたが、ページ毎に字体が違ったので色々な冒険者のメモ書きを寄せ集めたものであろう。
読みづらいけど初見の魔物だと何するかわからないから、こういったメモ書きでも魔物の特徴や素材がわかると参考になるな。
冊子を見ていくと魔境に生息する魔物はほとんどが脅威度3以上の魔物だとわかった。
魔物の脅威度については、以前倒したジャイアントラビットが脅威度1であるが、それでも一般人が倒すのは厳しそうであった。
ちなみに魔物に対する冒険者の推奨等級としては
脅威度1がG、F級 ジャイアントラビット等
脅威度2がE、D級 ゴブリン、コボルト等
脅威度3がD、C級 オーク、リザードマン等
脅威度4がC、B級 オーガ等
脅威度5がB、A級 グリフォン等
脅威度6がA、S級 ワイバーン等
脅威度7がS級 レッサードラゴン等
脅威度8がS級複数 各種ドラゴン等
となっており、ゲーム等でお馴染みのモンスターの名前がいくつも載っていて楽しみが増えた。
あくまでこれは推奨等級であるため、実際にはワンランク下の魔物を複数名で討伐するのが冒険者の基本とのこと。
魔境の魔物のほとんどが脅威度3以上ということであれば、少なくてもC級複数名での探索が理想だということだろう。
それでも複数の魔物が現れた時のことを考えると厳しいので、魔境が一向に開拓されない理由もわかるというものである。
うーん…俺の実力だと魔境に行くのはやばいかな…
まあ、【隠密】スキルがあるから、行ってみてやばそうだと思ったらすぐ撤退すれば大丈夫だろう。
そう自分に言い聞かせ、その後は採取できる薬草や鉱石等についても調べ、資料室を後にした。
思ったよりも魔境に関する情報は多くなかったが、ある程度の情報については入手できたし、冒険者登録も出来たので良しとしよう。
後は一応、どういった内容の依頼があるか確認しておいて、町に戻ってくる時に需要のありそうな素材等を持ってこよう。
けど、素材を運ぶとなると、大量に収納できたり、素材の劣化を防ぐスキルやアイテムが欲しいな。
町中で収納リュック(【収納】スキルが付与されたリュック)が売られているのを見かけたが、通常より2、3倍のものが入るだけで100万Kもの値段がついていて買うのは諦めた。
店の人に高額な理由を聞いたところ、スキルの付与には色々な素材を使用している上に成功率があまり高くないらしく、【付与】スキルの所持者も少ないのにも関わらず、需要はあるためどうしても高額になるとのことであった。
それなら【付与】スキルを【召喚】で入手できたら、それだけで生活には困らなそうだ。
何かと便利そうだし、いずれは欲しいな。
それよりも、スマホにインストールされているアプリ【女神の楽園】の【アイテム】機能が召喚されたもの以外にも適用されれば素材運びについて困る必要もなかったんだけどな…
運営がいるのか謎だが、改善要望出せないかな?
まあ、俺には【創生】スキルがあるから、【収納】スキルが付与されたリュックと同じようなものがきっと創れる筈だ。
今更だが旅の道中に気づいていれば、もっと快適な旅を送れたかもしれない。
とりあえず、宿に戻ったら創れるか試してみよう。
収納リュックを創るのに成功しても、しなくても、明日は食料や消耗品を買ったり等、魔境に行くための準備に充てて、明後日の朝には魔境へ向けて出発だ。
そんなことを考えつつ、俺は依頼の貼られた掲示板を確認したり、町中を散策した後、宿に戻った。
宿に戻り、夕食を終えた後、自室に篭って早速、【創生】スキルで収納リュックが創れるか試してみることにした。
とりあえず、空間拡張されるんだからリュック自体は大きくなくても良いと思うけど、小さすぎると他の人にひと目で収納リュックってバレて目をつけられるかもしれないから、1週間の荷物が入りそうな80ℓサイズの大型リュックにするか。
リュックの見た目は店で売っていたような何らかの魔物の革っぽい感じにして収納口は大きめ、せっかくなのでサイドポケットもいくつか付けておこう。
収納量はとりあえず六畳一間くらいの大きさをイメージ。
できるかわからないから魔力を限界まで込めて【創生】スキルを発動。
今まで使った【創生】スキルの中でも、一際強い光が放出された後、「ポンッ」と大型リュックが現れた。
おぉー! まじで出来たのか!?
早速、確認してみるか…って、あれ、力が抜けて、意識が……
魔力を限界まで込めた反動なのか、俺は全身の力が抜けて、ベッドに突っ伏してしまい、そのまま意識を失ってしまった。




