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温度差で風邪をひける企画もの

アリッサと幸せのお菓子貯金

作者: 空野 奏多

 アリッサは、優しく働き者な女の子。

 今日もせっせと、おしごとおしごと。


「疲れたでしょ? これあげるね!」

「ありがとうございます!」


 手のひらにころんと、飴玉1つ。


「あ、じゃあこっちからもあげる〜」

「わぁ、ありがとうございます‼︎」


 手のひらにころころと、飴玉2つ。


「頑張ってるけど、あんまり根詰めないでね。はいコレどうぞ」

「え、ありがとうございます!」


 手のひらにぽとっと、チョコレート1つ。


「いつもありがとね! これ後で食べて」

「えーわー! ありがとう!」


 手のひらにぽとぽとっと、チョコレート2つ。


 お仕事を頑張るご褒美に。

 お近づきの印に、ありがとうの代わりに。

 アリッサは、たくさんお菓子を貰いました。


 だけどお口は1つしかありません。おしごと中は食べられないし、なんとなくもったいなくも感じてしまいます。


 だから今日も、アリッサのポケットは。

 ぽこんと、膨らんでしまうのです。



 そう、これはお菓子貯金なのです。



 食べれば消えてしまう。

 そんな儚くて、不確かな貯金。

 あまいあまい、ご褒美の貯金なのです。


 けれど、貯めてばかりもいられません。


 アリッサは時々疲れてしまいます。

 時々、悲しくて泣きたくもなります。

 お腹が空いて力が出ない時もあります。


 だけど、そういう時に。

 このポケットの重さを思い出すのです。


 このぽこんと膨らんだ、ポケットに手を入れます。


 1つ、摘んで、包装を開けて。

 今日掴んだのは、飴玉でした。

 そしてころんと、お口の中に消えました。


 甘い味が、その優しさが。


 とげとげしちゃった心も。

 くよくよしちゃった心も。

 うじうじしちゃった心も。



 全部甘いお菓子に溶けて、自然と笑顔になれるのです。



 お菓子貯金は優しさの形。

 みんなのありがとうと気遣いの形。

 その甘さは、溶けて心の栄養になるのです。



 それは、使ってこそ意味のある貯金。



 ちょっと食べて、元気になったら。

 またきっと頑張っていける。

 前を向いて、笑顔になれる。


 アリッサはそうやって、また優しさを充電するのです。お仕事も大変だけれど、また頑張ろうと思えるのです。



 そう、このお菓子は魔法のお菓子なのです。



 だからアリッサも、頑張ってる人に。

 大変そうな人に、元気のない人に。


 アリッサの願いと優しさと想いを込めて、ちょっとだけお菓子をプレゼントするのです。



「はい、どうぞ。あなたの頑張り、私は知っていますよ」



 飴玉ころんと、あなたの手に1つ。


 それは笑顔を生む魔法のお菓子。

 優しさの貯金なのです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あったかくて、素敵なお話。 すごくじんわり、癒されました…… 実はさきほど、ちょっとだけいらいらして(炊飯器の時刻表示が消えたりいろいろした)、癒しを求めてチョコレートを口にしたばかりだ…
[一言] お菓子は、ありがとうや、おつかれさまの気持ちのメタファーなのかなと思いました。 温かい言葉ってそれだけで頑張れますからね。 何度も読み返したくなる、素敵なお話でした。 うーん! 大好き(*…
[良い点] かわいくて、いいお話! そんな飴玉もらったら、もったいなくて食べられないよぉ~
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