漫才「キスアンドクライ」
二人「はい、どうもー」
ツッコミ「よろしくお願いしまーす」
ボケ「……あのさ、ちょっといい?」
ツッコミ「え?なに?」
ボケ「昨日、お前とキスする夢見ちゃってさ」
ツッコミ「いきなりどんな話ブッこんでんだよ!……え?一応聞くけど、どんなシチュエーションで?」
ボケ「いや、漫才中にオレがボケたら急に『なんでだよ!……チュッ』って」
ツッコミ「どういう状態だよ!気持ち悪いなぁ」
ボケ「気持ち悪い……か」
ツッコミ「え?」
ボケ「ううん、なんでもない……そんなことより漫才、漫才!」
ツッコミ「そうだな……いやー、最近彼女ほしいなぁなんて思っててね」
ボケ「……そうなんだ」
ツッコミ「うん、だからね、いつか気になる人ができた時のために告白の練習しときたいなぁなんて」
ボケ「……練習じゃなくて、本当だったらいいのに」
ツッコミ「なに言ってんだよ!……じゃあ、デートの帰りの車の中っていう設定で……いやー、楽しかったね」
ボケ「うん、すっごく楽しかった、はだかまつり」
ツッコミ「なに見に行ってんだよ!もっとこう遊園地とかそういうの!」
ボケ「楽しかったね、遊園地」
ツッコミ「うん、そうだね」
ボケ「メリーゴーランドとか」
ツッコミ「うんうん」
ボケ「楽しすぎて十回も乗っちゃったもんね」
ツッコミ「多すぎるわ!前世、騎馬隊かジョッキーかよ」
ボケ「あれも楽しかった、お化け屋敷」
ツッコミ「そうだね、ちょっと怖かったけど」
ボケ「楽しすぎて十回も入っちゃったもんね」
ツッコミ「だから多すぎるわ!」
ボケ「落武者の霊と打ち解けちゃって」
ツッコミ「間違いなく騎馬隊だな、前世は」
ボケ「あと、あれも楽しかった、ジェットコースター」
ツッコミ「あー、スゴかったね」
ボケ「絶叫してたもんね、落武者の霊も」
ツッコミ「なに一緒に乗ってんだよ!打ち解けすぎだろ!」
ボケ「十回とも絶叫してた」
ツッコミ「それも十回乗ったのかよ!飽きろよ!……いや、でもそんなに楽しかったならよかった……あのさ、オレ、ケジメつけたいタイプだからさ、君にちゃんと言いたいことがあるんだけど」
ボケ「なに?」
ツッコミ「あのさ、よかったらオレと……ツキ合っ」
ボケ「グーグー」
ツッコミ「おい、寝るな!ベタか!ちょっと、起きて起きて!」
ボケ「……え?あー、危ない!目の前にガードレールがー!」
ツッコミ「そっちが運転してたのかよ!じゃあなおさら寝ちゃダメ!」
ボケ「……おい」
ツッコミ「はぁ?なに?」
ボケ「……いいかげん『なんでだよ!』って言えよ!」
ツッコミ「なんでだよ!……あ」
ボケ「もー……」
ツッコミ「目を閉じるな!キスしねぇから!」
ボケ「ちぇっ……もうちょっとで正夢だったのに」
ツッコミ「気持ち悪いよ!え……オレとキスしたいとか、お前本気で思ってんの?」
ボケ「……サイテー。ツキ合ってもないのにいきなり何言ってんの?」
ツッコミ「急に漫才コントの設定に戻るな!」
ボケ「オレとキスしたい?なんて傲慢……!」
ツッコミ「だから、それは夢の話を受けてのセリフだよ!そんなツキ合ってもない相手とキスしねぇよ!オレ、真面目だからさ」
ボケ「……じゃあ、ツキ合ったらキスしてくれるの?」
ツッコミ「……それ、どっちの立場で言ってる?」
ボケ「どっちでしょーか?」
ツッコミ「惑わすな!……いや、そもそもオレ、女性にしか恋愛感情ないから」
ボケ「……男扱いなんて、ひどーい」
ツッコミ「やっぱ漫才コントのほうかよ!」
ボケ「えーんえーん」
ツッコミ「あー、ごめん、泣かないで!違うんだよ……あのさ、オレ、君の笑った顔が好きなんだ。だからさ、もう泣かないでよ……ねぇ、よかったら、オレとツキ合ってくれないかな?」
ボケ「……えーんえーん」
ツッコミ「なぜまた泣く!」
ボケ「違うの……嬉しくて」
ツッコミ「え?」
ボケ「やっと言ってくれた……知り合ってから随分経ったけど、やっと相方以上になれたんだって」
ツッコミ「やっぱそっちかよ!違う、漫才コントの中のお前とはツキ合いたいけど、現実のお前とはツキ合いたくない!」
ボケ「……じゃあ一生、漫才コントやる」
ツッコミ「なんでだよ!……あ……やめろ!唇を突き出すな!」
ボケ「……あー、面白いわ、相方からかうの」
ツッコミ「はぁ?」
ボケ「冗談に決まってんだろ。誰がお前に恋愛感情なんて抱くかよ」
ツッコミ「おい、やめろよ!ちょっと焦ったじゃねぇか!」
ボケ「まあまあ、おわびに遊園地デートしてやるから」
ツッコミ「なんでだよ!……だからキスしねぇって!いいかげんにしろ」
二人「どうも、ありがとうございましたー」