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六話 手合わせ vsレヴィエル

* * * *


「————ようこそ、〝ギルド地下闘技場〟へ」


 改まって、レヴィエルがそう告げる。


 とっておきの場所と言われ、案内をされた先はギルドの中。その、更に奥。

 地下に続く階段を下りた先に位置するひらけた場所であった。


 曰く、〝ギルド地下闘技場〟。


 最低限の装飾のみの殺風景の此処を、レヴィエルはそう呼んでいた。


「ま、オレが勝手にそう呼んでるってだけでもあるんだがな。主に此処ではパーティーランクの昇級試験等に使ってんだ」


 話しながら彼は歩き続ける。

 そして間合いが20メートル程になったあたりで足を止め、俺と向き直る。

 その際、既に付いてきていたヨルハは〝闘技場〟の端へ移動をしていた。


 やがて、レヴィエルは両の手を突き出して一言。


「————〝竜鱗蠢く(ドラグニル)〟」


 中指に嵌められていた無骨な銀の指輪はその一言に反応し、光を帯びる。

 程なくその光は指輪だけでなくレヴィエルの両腕全てを包み込み————眩い光が収まった後、彼の腕にはまるで竜の腕を思わせる籠手らしきものが装着されていた。


「……〝古代遺物(アーティファクト)〟。それも、随分と高位そうですね、それ」

「おうよ。これは冒険者やってる時に偶然見つけてなあ? それ以来、使い勝手が良いってんで、こうしてずっと使ってんのさ」


 ダンジョンの中に眠るお宝。

 その一つに、〝古代遺物(アーティファクト)〟と呼ばれる物がある。


 明らかに人の手によって造られたものであるのだが、その製作方法は全くの不明。

 そしてそれは時折ダンジョンの中で見つかるという事実を除いて何一つ解明されていない謎だらけのお宝であった。


 ただ、〝古代遺物(アーティファクト)〟にはそれぞれ強大な力が秘められており、それ故に、ダンジョン踏破を目指す冒険者であれば、誰もが喉から手が出る程に欲している。


「そら。お前さんも得物を出せよ。聞いてるぜ? 剣を使うんだろ?」


 そう言われて、思い出す。


「……あぁ、そうだった(、、、、、)。忘れてた」


 そういえば、もう剣は使っていいんだったか。


「……あ?」


 俺のその返しに、レヴィエルは怪訝に眉を顰める。


「……あー、えっ、と、ガルダナの宮廷はそれなりに選民意思が強くて。……剣は貴族にこそ相応しい。なんて言われて4年使わせて貰えなかったんです」


 人前では使えないという意識が4年の間で身に染みついていたせいで、すぐに剣を準備するという選択肢が出て来なかったのだと俺は言い訳をする。


 ただ、宮廷魔法師として活動していた時は、本当に制限しかなかった。


 剣を使う事は禁じられ。

 魔法に至っては王太子が自分が倒すのだと言って聞かず、王太子が使えない魔法を使おうとすると不敬であるだなんだと理由を付けて癇癪を起こす。


 極め付けに、荷物持ち扱いをされていた俺は荷物を持っているせいで満足に両腕を使う事さえ出来なかった。

 だから、補助魔法を使って援護するくらいが俺に出来る最大限の貢献であったのだ。


「ですけど、心配はいりません。人前で使う事はここ数年ありませんでしたが、サボっていたわけではないので」

「くはッ、そうかい、そうかい」


 明らかにソレと分かる「……大丈夫なのかよ」と気遣う色がレヴィエルの表情から見て取れた為、その心配を払拭するべく言葉を続けていた。


 国王陛下からの命は王太子を死なせない事。

 だからこそ、普段は禁じられているとはいえ、戦う手段を疎かにする事は出来なかった。

 故に、剣はちゃんと使える。


「————〝魔力剣(ソード)〟」


 先のレヴィエルに倣うように右の手を突き出し、そして言葉と共に生み出される魔力で生成された青白の剣をガシリと掴み取る。


「どうするよ。先手、譲ってやろうか(、、、、、、、)?」


 す、とレヴィエルの目が細まる。

 獰猛な笑みを浮かべながらやって来るのは値踏みの視線。この言葉のやり取りからもう既に、彼は俺という人間を測っているようであった。


 視界に映る彼の表情より感じられる絶対的自信。自分が負けるとは微塵も思っていないその泰然とした佇まいを前に、柄にもなく少しだけその鼻を明かしてやりたいと思ってしまった。


 だから、あえて挑発をするように言葉を選ぶ。


「余計なお世話です」

「くかかっ、そうかいッ!? そういう事なら、じゃあ加減もいらねェよなぁ?」


 それが————始動の合図だった。


 次の瞬間、レヴィエルの右手が突き出され、握り拳になっていた手が開かれる。

 同時、俺は右足の爪先で地面を小突く。


「————〝加速術式(スペルブースト)〟」


 キン、キン、キン、と耳障りな金属音が立て続けに場に響く。直後、俺とレヴィエルとの間にあった間合いに等間隔で真正面に浮かび上がる銀色の魔法陣。


 そしてレヴィエルが一歩踏み込んだと同時、まるで弓から放たれた矢の如く、その場に残像だけを残して姿が掻き消える。

 浮かび上がった魔法陣をくぐる事で己自身に加速の補助魔法を重ね掛けする魔法——〝加速術式(スペルブースト)〟。


 けれど、直線的すぎる攻撃を行う相手ほど、与しやすい相手もそうはいない。


「〝雷鳴轟く(サンダーボルト)〟————ッ」


 先程地面を小突いた時に用意した魔法陣を展開。


「おいおいオイ!! そんなんでオレを止められるもんかよ————ッ!!!」


 分かってる。

 そんな事は、言われずとも分かっていた。


 だから、こそ。


「————〝五重展開(フュンフ)〟ッ!!」


 一方向だけではなく、四方八方あらゆる場所に同時展開をする。

 展開された〝加速術式(スペルブースト)〟のお陰でレヴィエルがどこにやって来るのかが既に分かっているからこそ、俺の魔法は確実に命中する。


 相手が幾ら速くなろうと、それすらも上回って攻撃を命中させる自信が俺にはあった。


「ほ、ぉ?」


 視界を覆う雷光。五重に展開された魔法より、撃ち放たれるは、容赦のない雷撃。

 その直前に見えたレヴィエルの表情は驚きの色に染まっていたようにも思えて。


 けれど、ずどんっ、と劈き、撃ち貫いたであろう攻撃にあてられて尚、


「————だが、それでもまだ足りてねェ」


 オレを止めるには、まだ。


 直撃した筈だというのに、目の前から覚えのある声がやって来た。そして、舞いあがる砂煙をその身でもってかき分け、突進。


 やがて、竜の腕を思わせる籠手と先程造り出した魔力剣が衝突した。


「…………っ」


 向こうは助走をつけた上で突撃をしてきた分威力が上乗せされているが、俺はそうではない。

 故に、柄を伝って来る尋常でない重みに、歯を食いしばり、隙間から呻き声を漏らしながらも受け止めようと試みるも、すぐにそれが不可能であると悟る。


「こ、の……っ」


 真正面から受け止めるのが無理であるならば、その攻撃を逸らすまで。

 常軌を逸したその攻撃に対し、身体を強引に捻り、後ろに受け流す————ッ!!


「……っ、とッ!?」


 もう少し粘るとでも思っていたのか。

 思いの外、簡単にその攻撃を後ろに受け流す事に成功した俺は、真っ向から対抗していた力が失われた事で前のめりにバランスを崩したレヴィエルに対して、追撃にかかる。


 この好機を、逃すわけにはいかなかった。


 手に握る剣の柄にありったけの力を込め、今頃たたらを踏んでいるであろうレヴィエルに対し、真一文字に薙ぎの一撃を見舞おうと試みる。

 しかし、


「甘ェ、んだよ————ッ」


 予想していた光景はそこには広がっておらず、あろう事か、たたらを踏むどころか一足で踏み止まり、不敵に笑って迎撃態勢を整えていた。


 そして再び合わさる剣と、籠手。

 飛び散る火花と共に、ひときわ大きな金属音が響き渡った。

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