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四話 迷宮都市フィーゼル

 ————『ダンジョン』。


 それは、世界各地に点在している迷宮。その、名称である。

 時にそれは魔物の巣窟と呼ばれ。

 時にそれは一生豪遊して暮らせる程のお宝が眠る場所とも言われていた。


 ダンジョンにはそれぞれ特色のようなものがあり、たとえば『4人以内のパーティー』しか立ち入る事ができない。

 物理的な攻撃手段は一切が不可。

 ダンジョン内にセーフティポイントが存在しない、等。様々な制約が特色として足を踏み入れた者に課せられる摩訶不思議な仕組みとなっていた。


 そしてそれら数々の障害を乗り越えた先に存在するお宝や、ダンジョンを踏破してみせたという名声を求めてダンジョンに潜り続ける人間の事を————人は『冒険者』と言った。



* * * *


 ガルダナ王国北端に隣接する国、ノースエンド。

 そこに位置する地————迷宮都市フィーゼル。

 王都にて偶然再会したショートボブの少女ヨルハ達は、4年前に魔法学院を卒業した後、その地へと向かい、かれこれ4年もの間、ずっと拠点を変えずにダンジョン攻略に励んでいたという。


 その理由は単純明快で、フィーゼルは迷宮都市と呼ばれるだけあって多くのダンジョンが存在する世界的にも稀有な場所であった。

 そして、その難易度も王都のダンジョンとは比較にならない程に困難を極めていたから。


 曰く、ダンジョンの特色が悪辣を極めている、とか。


「王都のダンジョンは、パーティーは4人までって人数制限があったけど、フィーゼルのダンジョンはそれに加えて回復魔法が使えない。とかでね。ほんと、制限だらけだよ」


 でもだからこそ、攻略のし甲斐もあるし、得られるものもその分、大きかったりもするんだけどね。


 そう言って、偶然にも再会したあの日、差し伸べられたヨルハの手を握り、乗り合い馬車で移動する事5日。

 

 ようやく迷宮都市フィーゼルに到着した俺はヨルハと話しながら旧友であり元パーティーメンバーでもあるオーネストや、クラシアの下へ案内して貰っていた。


「……でも、良かったのか?」

「ん? 何が?」

「ここまで連れてきて貰って今更ではあるんだけどさ、フィーゼルのダンジョンっていうと、色々と制約があった気がするんだけど」

「ああ……」


 基本的に、ダンジョンは位置する国によって管理されている。

 たとえば、ガルダナ王都のダンジョンであれば、ガルダナ王国が管理をしている。

 そんな感じに。


 その為、偶にダンジョンへ潜る人間は何歳以上でなければならない。等の制約がダンジョンを管理する国から課されている事があるのだ。


 ……俺の記憶が正しければ、フィーゼルのダンジョンは30層以上の深層へ潜る際、フィーゼルにて2年以上の冒険者経験がある者に限る。

 などという条件があったような。


 うろ覚えとなってしまっていた記憶を引っ張り出して、その旨を尋ねると案の定、ヨルハは居心地が悪そうに「あ、あはは……」とぎこちない笑みを漏らし、渋面を浮かべていた。


「そ、それについてはまた後で話すつもりではいたんだけど……で、でもね! 心配はいらないよ! その件に関してはクラシアが解決してくれてるから!」


 しかし、解決していると言う割に、ヨルハの表情の端々からは不安だとか、焦燥感だとか。

 間違っても安心出来る要素足り得ない感情が散りばめられており、素直に「そうか」と言って安心出来る筈もなかった。


「く、クラシアか……」


 何より、俺の知るクラシア・アンネローゼという少女は、〝ど〟が付くほどの脳筋である。

 売り言葉に買い言葉はもちろん、理知的に行動し、誰かを説得する。なんて行為とは無縁の人物であった筈だ。


 そんな彼女と6年も行動した俺から言わせれば、不安以外に言葉は見当たらないのだが、


「フィーゼル支部のギルドマスターにも話はもう通してあるって、ボクがアレクを迎えに行く前に言ってた……よ?」

「なんでそこで疑問形になる」


 ……俺は兎も角、なんでお前までその内容を知らないんだよ。というか、クラシアの事を信頼してなさすぎだろ。


 言葉にこそしなかったけれど、じーっと見詰めて訴え掛ける俺の視線が居心地悪かったのか。

 ヨルハはぷぃ、と顔を背け、「……どうしてだろうね?」などと言い訳にすらならない言葉を続けていた。


「……ま、みんな相変わらずで安心したよ。ヨルハも、クラシアも、オーネストもみんな変わってなくて」


 此処にいないもう一人の友人、オーネストの事については乗り合いの馬車に揺られる中でヨルハから聞いていた。

 曰く————。



『ボク達、フィーゼルのとあるダンジョンの攻略を進めてたんだけど、ちょっとその難易度が高くて詰まっちゃったんだ。で、どうしたものかってなった時に、オーネストがアレクを呼んだら良いんじゃねーのとか言い出してさ。珍しくクラシアもオーネストの意見なのに、それに同調しちゃって……その、うん、じゃあ迎えに行くか、みたいな?』


 俺を迎えに行ってこい。

 と言い出した人物はどうにも、オーネストであったらしい。


 自他共に認める実力の伴った自信家であるオーネストはこうと言い出したら例え誰に否定されようとその意見を曲げる事はない。

 ヨルハがこうして俺を迎えに来てくれていたあたり、頑として「さっさと迎えに行くぞ」と言って聞かなかったのだろう。

 だが、オーネストに任せると面倒臭い事になる気しかしなかったからヨルハが一人で来たとも言っていた。


「まあまだ4年しか経ってないからね」


 4年で変わってたらそれこそ驚きだよと言って笑い合う。



 そうこうしている間に、気付けば俺達は冒険者を取り纏める場所であるギルドの目の前にまでたどり着いていた。

 そして、建物の中へと足を踏み入れようと試みて。しかし、


「————よう」


 突然、俺達に向けて声が掛けられたことで、その足が反射的に止まる。

 聞き覚えのない声音。

 けれど、それが俺やヨルハに向けて発せられたものであるとどうしてか、分かってしまった。


「久しぶりじゃねェか、ヨルハの嬢ちゃん。半月ぶりってところかね?」


 程なく紡がれるヨルハの名前。


「お久しぶりです、ギルドマスター」


 そんな彼の発言に対し、ヨルハは礼儀正しく言葉を返していた。


 肩越しに振り返る事で声の主を確認。

 ヨルハからギルドマスターと呼ばれていた彼は、俺よりもひと回り以上大きい巌を思わせる大男であった。


 顎に拵えた無精髭を右の手で触りながらも、時折、俺と目を合わせ、値踏みするかのような視線を向けてくる。ただ、それも数回程度。

 だから特別、不快に思う事もなかった。


「全く、大変だったんだぜ? ヨルハの嬢ちゃんがいねェからクラシアの嬢ちゃんとオーネストのボケの間を取り持つ事の出来るやつがいねェからよォ……この半月、荒れに荒れてたぜ」

「す、すみません……」


 魔法学院時代もそうだったが、冒険者として活動するようになってもあの2人は変わらず問題児として名を馳せているらしい。

 

 ……どうしてか。不意にずきりと胃が痛んだような。そんな錯覚に陥った。


「まぁいいさ。こうしてヨルハの嬢ちゃんが戻ってきてくれたんだからよ」


 ————あの2人を抑える役目も今日で終わりと思うと肩の荷もおりるってもんだ。やっと枕を高くして寝られるぜ。


 そう続ける彼に対しては、その内情を薄らと理解出来る為、同情の念を抱かずにはいられない。


 ただ、それで終わりではないようで。


「————で。ヨルハの嬢ちゃんが戻ってきたってこたぁ、そっちがクラシアの嬢ちゃんが言ってたアレク・ユグレットって認識で良いのかね?」


 何処か愉しそうに、嬉しそうに。

 ギルドマスターと呼ばれていた大男はそう言って不敵に笑った。

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