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ママからの依頼

 見惚れてしまう美しさを持つアールヴだが、肌の露出が極端に少ないのは気に成る、と言うか俺的に少々残念では有るが、気にしない振りをする。


「ノーバンさんは冒険者の方ですか?」

「そうだけど、分かるか?」

「ええ、何となくですが分ります」

「そうか」

 何か冒険者の行くダンジョン特有の匂いでも染み付いているのかと思ったが、そう言う事ではない様で少し安心した。


「それで今は何階層まで潜られているのですか?」

「あぁ俺はソロだから、浅い階層だな」

 何の意味も無く世間話的に聞いて来たのだろうが、一応明言は避けた……ら、明らかにガッカリした様に肩を落とされた気がした。いや気のせいだろうか?

 少し気になるので話しを引っ張ってみようと思う。


「ダンジョンに興味が有るのか?」

「ええ、お店が休みの日にはダンジョンに潜ってるの」

「そりゃぁ凄い、で、何階層辺りを?」

「今は七十五階層よ、もしそれ以上の階へ行っているのなら御一緒したいなぁ」

「いやぁ俺には厳しいかな」

 その後も俺達はダンジョンの話で盛り上がった、俺もダンジョンの話が出来る女性と話すのが楽しくて好きに成り始める。



 その日から、何度か店に行く度に、ママが席を離れては、アールヴが付く様になった。

 そして、その時は何も考えずに楽しんでしまっていた。

 そう七十五階層なんて、ホステスが片手間で潜れる様な階層じゃない事に、そして、その先を目指してる言葉にも気付いてやれなかった。


「七十五階層以上に潜っている知り合いが居たら紹介してほしいの」

「あぁそれ以上の階層となると大商人の雇われか、領主の直属の兵士くらいしか居ないんじゃないか?」

 もう少し真剣に話を聞いていれば、訳を聞いてやれば良かったと思う。

 だが、「そこにダンジョンが有るから潜っているのだろう」位にしか思わなかった。自分がそうであったから。


 ダンジョンの最深部は百階層だと言われてる、そして八十一階層以降は属性の魔石しか出ない、そう、光、風、土、火、水、氷、音、命、の八属性の魔石だ。

 今、七十五階層なら「八十階層までは、まだ高級酒の魔石が出るから」と「キャバクラで働く位にはお酒も好きなのだろう」と勝手に思い込んでいた。


 そして何時もの様にキャバクラに顔を出し、席に着いて見渡すもアールヴは見当たらない。

「いらっしゃい、ノーバン」

「おはよう、ママ」


 挨拶もそこそこに、ママは体を寄せて来て、真剣な表情で俺に話しかけてくる。

「ノーバン、お願いが有るの聞いてくれる?」

「あぁママのお願いなら何でも聞いちゃうかな」


 何か欲しい物でも有るのかと思い、俺は軽口で返してしまう、もっと良くママの真剣な表情に注意すべきだったかもしれない。俺も真剣に答えなければ失礼だったかもしれないが、ママは気にした様子も無く本題を切り出す。


「アールヴちゃんがね、迷宮に潜ったきり戻って来てないの」

「はぁ!?…………ぅう! ケホッケホッ!」

 つい大声が出てしまい、皆の視線が痛かったので咳払いをして誤魔化す。

 ママが泣きそうな顔で、(すが)る様に、恐ろしい事を言ってくるからだ。

 いや、俺自身がダンジョンに潜る事は、それほど恐ろしい事じゃない。

 恐ろしいのは、可憐そうなアールヴがダンジョンから戻ってきてない事だ。


 ママに(くわ)しく話を聞くと、置手紙が有ったらしい「しばらくダンジョンに潜ります」と「行く前に言うと止められそうなので手紙にします」と、書いてあったそうだ。

 それを聞いて飛び出しそうだった俺の心臓も、少しは落ち着いた。

 俺は最悪の可能性を考えていたが、どうやらそう言う訳でも無さそうで安心する。


「それでね、アールヴちゃんを探してきて欲しいの」

「わかった、『何時も世話に成ってるお礼に』……っと言いたい所だけど、何か報酬が欲しいかな?」

 俺は一瞬、真剣な表情でママを見詰めた後に、少しだけ悪い笑みを浮かべてみた。


 ママは俺の視線で何を言いたいかを察した様に、首を傾げながら小さな声で口にする。

「……わたし?」

「そう! 難しいかも知れないが、今度デートしてからの同伴出勤でどうかな?」


 お店的には同伴出勤なら一時間遅れも許されるが、同伴とは言えママが遅れて来たら問題だろう、かと言ってお店が終わった後では時間的にデート出来る店も無い、アフターは無理だ。如何だろうか? 良い答えを望みつつ凍りついた時間の中で待つ。

 ママはしばし熟考してから、ゆっくりと口を開いた。

「それで……いいのね、ノーバン? 報酬は、わ・た・し・ね!?」

「流石はママ! 依頼は引き受けた、結果を楽しみに待っていてくれ。俺も報酬を楽しみにしている」


 少し卑怯(ひきょう)だとは思うが、それでもママは良いと言ってくれた訳だし、ママとのデートを想像しただけで嬉しくて楽しくて(たま)らない、顔がニヤケてしまう。


「ノーバン! さっきから、ずっとニヤニヤして気持ち悪いわよ」

「いや、だってさ」

「もう!」

 その日は店に居る間中、ずっとそんな感じだったが、仕方ない。

 でも仕事は仕事、受けた依頼はキッチリこなす積もりだ、ママとデートの為に。


 そして自分の幸せの為に。

童話等も書いておりますが、こちらの話を気に入って下さっている方は、ジャンルが違います故、お勧め致しません。開かないようお願いします。

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