表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/177

第九十五話、スチイの新たな依頼

第四章、最終話


次話より「神に会った冒険者3/4(第3/4章)」が始まります。ご期待下さい。

 孤児院でスチイがお別れの挨拶を済ませ、御両親の待つ教会に寄り、俺はスチイの手を姫様に委ね教会から出た。

 俺は昂っ(たかぶ)ている気持ち悟られまいと、少し前を歩く。

 駄目だ、まだ落ち着かない、歩きながら深呼吸をする。

 そんな俺の事を気遣ってか? 姫様に預けた筈のスチイが駆け寄り、俺の手を取る。

 両手で握り取った左手を、スチイは自分の頬に当ててお礼を言って来た。

「ありがとう、ノーバン様」

「……ああ」


 その一言で俺の気は晴れた、その一言で全てが終わり俺の苦労は報われた気がする。そう、全てが終わり、スチイも御両親に会えて、孤児院にも話を付けた、後はスチイの幸せを祈るだけだ…………、ただ一つを除き。


「スチイ、ごめんな」

「なぁに、ノーバン様?」

「スチイの依頼を達成出来なくなってしまった事だよ」

「え、なんで?」

 スチイは自分で気付いてないのだろうか? 俺の受けた依頼は「スチイの独り立ち」だ。そして本来はその目的の為に、冒険者として育て、働き先も探そうと思った。

 だが、御両親と一緒になれた今と成っては、俺の出る幕は無い。


「もう、スチイは一人じゃない、御両親にいっぱい甘えると良い」

 スチイは振り向き、後ろを歩く御両親をしばらく見た後、俺に向き直り見詰める。


「スチイはノーバン様と一緒だよ、『一生一緒』って約束したもん」

「嬉しいが、依頼が達成出来ないのに、報酬だけ貰う訳にはいかないんだ」

 俺は立ち止まり、腰を下ろして目線を合わせて、静かに話した。


「スチイはね、お父さんとお母さん会わせてくれたノーバン様にお礼がしたいの」

「俺はスチイと一緒の時間がとても幸せだった、だからお礼なら既に受け取っているよ」

 俺もスチイと一緒に居たいと思うが、御両親と離れて暮らしていたスチイには、今までの分まで御両親に甘え、幸せに成って欲しい、俺の我侭で邪魔をしてはいけない。


「それなら、お父さんとお母さんの病気を治してくれたお礼をさせてほしいの」

「前にも言ったが、その報酬は『俺の幸せ』で『スチイの幸せ』が俺の幸せだ、それはスチイ達親子にしっかりと払ってもらうよ」

 スチイの後ろに立つ御両親にも目を向けながら答えると、スチイも一瞬、後ろを振り向く。御両親は二人ともスチイの事を大切そうに見詰めている。


 あまり俺の様な中年が一緒に居ると、スチイの幸せが逃げてしまいそうだ、少し距離をとった方が良いだろう。まぁ俺の事なんて直ぐに忘れる筈だ。

 それでもスチイは俺の手を離そうとはしない。


「ねぇ、ノーバン様……、スチイの幸せって誰が決めるの?」

「……それは……スチイ?」

 俺にはスチイが言っている事の意味が、いや、何を言いたいのかが分らなかった。


「ならばスチイは……ノーバン様と一緒に居る」

「……俺は此の町に住んでる、スチイが町に住んでる間は何時もでも遊びに来ると良い」

 まさか御両親の元を離れるとか、俺と結婚するとか言う意味だろうか? それでスチイが幸せになれるとは思わない、当り(さわ)り無く答えた。

 スチイは俺の答えに一瞬、(にら)み付けたかと思うと、胸に輝く真珠を強く握り締め、意を決した様に話し出す。


「ノーバン様! スチイから依頼が有るの!」

「何だい、スチイ?」

 御両親に会えて幸せに成ったスチイが、何を依頼するのだろうか?


「スチイを冒険者にして欲しいの!」

 スチイの依頼に何て答えて良いか分らなくて、御両親に目を向けると、若様は頷き、姫様は微笑んでいる。

 おそらく依頼を受けて良いと言う事なんだろうが………、冒険者なんて危険な仕事をさせて良いのだろうか?


「分った、その依頼を受けよう」

「ありがとう、ノーバン様」

「但し……、報酬次第だ」

 俺の答えに、スチイが喜んでいる所、悪いが、報酬の話をする。

 スチイが後ろを振り向くと、姫様が優しく肩に手を乗せて頷きながら少しだけスチイの体を前に押す。


「スチイは何でもするよ」

 スチイは「出来る事なら」とは言わない「何でも」と言う、それだけで本気度が分る。これは断れないだろう。


「それじゃぁスチイには一日おきに、俺の家に来て貰い、家事の手伝いでもして貰おうかな」

「かじ?」

「えっと、料理や洗濯に掃除の事だな」

「はい、何でもお手伝いするね」

 取り合えず一日おきとして、スチイには御両親と一緒の時間も作り、尚且(なおか)つ俺との時間、そして俺の家に泊まれる可能性も作っておく。下心は少ししかない。

 始はスチイの幸せを考えていたが、結局最後は自分の幸せを求めてしまった。


 姫様はスチイの頭を撫でて、良くやったと言わんばかりに微笑みながら頷き、スチイも撫でられる手が気持ち良いのか、目を(つむ)り微笑んでいる。

 そんな二人を(まと)めて抱き締めたい所だが、その役を若様に任せる様に背中を押した。

 俺にはスチイの報酬が待っている、一日おきにスチイが来てくれるのだから、今は若様に譲っても良いだろう。


 そしてスチイにはメイド服を着てもらおう。それで俺の夢が一つ叶う。

 その後の話は、またの機会に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ