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土の魔石

 少し早いが馬車の止まる庭へ魔王と一緒に向い、皆を待つ。

 俺は手持ち無沙汰(てもちぶさた)に魔王の首を撫でたり軽く叩いたりする。

 魔王は落ち着けと言わんばかりに、鼻息で俺の顔に風を当ててくる。

 スチイと旅が出来る事が嬉しくて、ワクワクしていたが少しだけ冷静になれた。


 魔王と待っていると、多くの馬が連れてこられてヤギも一緒にやって来る。

 旅に出るのは八人と聞いていたが、馬の数がずいぶんと多く、騎士が引いている。

 そして皆がお城から出てくる、スチイは姫様と手を(つな)いで真っ直ぐ魔王の元へと歩み寄る。


 姫様は旅用であまり色気の無い服だが、胸の大きなメロンが存在を主張している。

 一歩毎に揺れる果物についつい目が引き寄せられてしまう。

 そして今日は女王様も見送りの為か、お見えに成って居て、その胸のスイカ、いや存在は姫様以上に存在感と迫力が有る。

 女王様は見た目は若く、男なら誰でも見入ってしまうだろう。


 スチイが前を通る時に、俺の右足を踏んで行く『痛!』いや重さは然程(さほど)感じなかったが反射的に僅かに声が出ただけだ、スチイは頬を膨らませて一瞬俺の方を見たが、スグに魔王の方へと向き直る。

 ワザとじゃないよな、俺の足を踏んだ事さえ気付いてないのだろうか?頬を膨らませてから魔王の方を見たから、魔王に対して何か怒っているのだろう。

 まさか俺が女王様や姫様ばかり見ていた事に気付いた訳ではないだろうな?

 そんな事を考えていたら、エルフの族長が話し掛けて来る。


「ノーバン、小さな女性の前で、大きな女性ばかりを見るのはどうかと思うのよね」

「はぁ?」

 まさか果物の大きさとは言わないだろう、男の俺にそれを言われても無理な相談だ、おそらくスチイを気遣って身長の事を言ったのだろう。そう思う事にした。

 族長の話しに気を取られている間に、スチイが姫様に魔王の事を紹介してる。

 姫様を魔王に乗せるなら、お尻に手を添えて手伝おうと思ったが、どうやら紹介だけで乗せる積もりは無いらしい。残念。


 姫様には馬車が用意されていて、エルフの族長もそちらに乗る。

 馬には荷物が載せられて、他の者は馬を引きながら歩く形で出発した。


 八人だけだと思っていた旅も、騎士が数名付いて来て少し大所帯に成る。

 今回の旅では若様は歩いて行く様だ、だいぶ体調が良くなったのだろう。

 スチイもお父さんである若様と一緒に歩いて旅が出来る事が嬉しそうに、俺の前を二人が並んで歩いているが、スチイは俺の事を気遣って、たまに後ろを向いては話し掛けてくれる。なんだか俺が寂しい子みたいで情けない。

 だが俺には魔王もヤギも居る、全然寂しくは無い、そう言いたい。


 人魚族のお城の有る町を出てから、何度か夕立にもあったが、人魚族の村や町を通り順調に旅は進み、立ち寄った所では魚の加工品を買い付けた。


 そして何処に向かって旅をしているのか、スチイに聞いてみたら竜人族の国に向かっていると言う、エルフの国か人間族の国に行くと思っていた俺としては意外だと思った、少し前まで居た国に逆戻りとは。

 エルフの族長に聞けば、その理由も知っている筈だが、素直に答えてくれるとも限らない、面倒だから族長には聞きたくない。


 丁度人魚族の国を出て山道に差し掛かった所で、エルフの族長の旦那の率いる団体に会う、どうやら竜人族の国から大量に山の幸を運んで来た様で、若様も立ち会って人魚族の騎士が運んで来た魚の加工品と交換している。

 その日は遅くなったが頑張って山小屋まで歩いてから休んだ。


 今は人魚族の騎士とは別れ、竜人族の商人と一緒だ、ヤギのミルクは竜人族に優先的に飲ませるので、しばらく俺は飲めなくなるだろう。

 だがスチイにはミルクを飲ませて早く大きく成って欲しい、何処とは言わないが。


 山を登り竜人族の国に入ってからも旅は順調に進み、ペンドラゴンの居る町まで何事も無く辿(たど)り着いた。


 俺はエルフの族長に連れられて、竜人の族長の部屋へと入って行く。

 だが思ったよりも物資の到着が遅い様で、現族長のペンドラゴンは(いま)だに寝たきりの状態だ。

 早馬の連絡では、もうすぐ物資も届くらしいが、山が厳しくてエルフの国側からでは牛は連れて上がれないとの事で、ヤギを連れて歩き道草を食って遅れていると言う。


 本当は牛の方が、ミルクの量も多く、搾れる期間も長く良いと思うのだが、ヤギのミルクの方が人には合うとも言う。

 どちらにしても登山が厳しいと言う事ならヤギに頼るしかない。


 エルフの族長の考えでは、人魚族の時の様に、ペンドラゴンに演説をしてもらい、スチイの事を広く知らしめたいらしいが、肝心の人物が立ち上がれないで居る。

 若様は元々病状が深刻でなかった事と、現族長では無いから説得力に欠けると言う。


 俺は迷ったが若様の病状の改善から、カルシュウム不足は確定的だ、ならばと思いペンドラゴンの治療をエルフの族長にだけコッソリ提案してみる。


「原因がハッキリしているので、治療をさせてもらえませんか?」

「ミルクや魚以外にも何か良い方法でもあるのかしらね?」

「もしかしたら一日で立てる位には治せるかと」

「ならノーバンに任せるわね」

 本人には曖昧(あいまい)な説明をエルフの族長にお願いして、俺は一度部屋を出て必要な物を用意して、また部屋へと戻った。

 ペンドラゴンにはミルクを二杯ほど飲んでいただき、うつ伏せに寝てもらった。

 ペンドラゴンには見えない様にして、魔方陣の書いた手袋を()めて魔石を乗せて固定する。

 今回使う魔石は、土、命、水、音の四種類だ、土の魔石には色々な鉱物と言うかミネラル等が多量に含まれている。

 勿論(もちろん)、水の魔石にもミネラルは含まれているが桁が違う。

 そして今回多く必要と思われる、カルシュウムは土の魔石を使う事で補える。

 他にもリンや鉄分等も含まれているが、体に必要な物だけは取り込まれるが、過剰な物は吸収されずに、抜け出るか排出されるので問題無いと思う、ただカルシュウム不足の人を魔石で治療するのは初めてで絶対とは言い切れない。


 土の魔石にはタンパク質やビタミンは含まれておらず、そこは命の魔石を使う、そして人の体の六、七割は水分だから水の魔石の補助も欠かせない。

 今回、音の魔石は衝撃波や振動で骨の活性を促す効果に期待しての補助魔石だ。

 光の魔石もビタミンDを造る上で迷ったが、命の魔石で十分と判断し症状の改善が見られなければ、光の魔石は穴を開けて近くに置くだけでも効果を発揮するだろうと加えていない、魔方陣が複雑に成ってしまうから仕方ない。

 四つの魔石の魔方陣なら、三角の中に円を描いた様な簡単な物で済む。


 準備が整い右手で魔力操作を行い、ペンドラゴンの頭以外の全身を魔石を使ってゆっくり時間を掛けて治療してゆく。

 一時間ほど治療を行って魔石の魔力が無くなり、今日の治療を終えた。

 ペンドラゴンは少し体が温まったと言い、起き上がれる位には回復をしていた、おそらく骨だけではなく筋肉や神経等にも不足していた栄養素が行き渡ったのだろう。そしてヤギのミルクの影響も有るのかもしれない。


 ペンドラゴンにはヤギのミルクの効果で、俺は体を(さす)って血の(めぐ)りを良くしただけだと言ってある。

 体が温まったと言うのは、音の魔石の微細な振動の影響かもしれない。


 部屋を出てからエルフの族長に、見通しに付いて話をしておく。

「ペンドラゴン様の病気は、明日の朝と昼前に、あと二度ほど治療を行えば、午後には立って歩く事も可能でしょう」

「それは何よりだわ、ありがとうねノーバン」


 実の所、使う用途の少ない土の魔石は、持ってくるか迷ったが、大怪我で血を大量に失う事でも有れば鉄分等が必要に成ると思い、持ってきた物が違う所で役に立って良かった。


 これでスチイ達、親子三人が何処ででも安心して生活出来る様になるなら安い物だ。

 だが俺としてはスチイを人間族の国に連れて帰りたい、一緒に居たいと言うのが大きな理由だが、受けた依頼の件も有る。

 俺はスチイから独り立ちが出来る様にして欲しいと、依頼を受けているからだ。

 そして、それは契約であり守らなければ成らない、ただの言い訳か。



 俺達には個別に部屋が与えられ、一晩休むことが出来た。

 翌朝もペンドラゴンの治療だ、ミルクを飲ませてから始める。

 朝の治療だけでも歩けるほどに回復し、見通しが立ったので、夕方には民衆を集めて演説をする事に成った。


 昼前に今一度治療を行い、ペンドラゴンは大分良くなり、スチイを呼んで抱かかえて持上げられるほどに回復していた。

 抱き上げられたスチイが困った様な顔をしていたので、俺が微笑みかけると、苦笑いをしていた。まだお爺ちゃんには()れていない様だ。


 スチイと一緒にペンドラゴンの部屋を出てから、俺がスチイの事を抱き締めて頭を撫でてあげて、やっとスチイに笑顔が戻った。


 そして夕方、演説は町の広場で行われ、人魚族の国から運んで来た魚の加工品を配りながら、話をされる。

 族長が病気で()せっている話が広まっていたのであろう、ペンドラゴンが壇上に上がっただけで歓声とザワツキが起こった。

 そして病気が治る事の証明に成った様で、皆がペンドラゴンの話に耳を傾ける。


 話の内容は病気の原因と治療方法、勿論カルシュウムの摂取(せっしゅ)と共に日に当たる事の説明もされた。

 カルシュウムが何に多く含まれるのか、日に当たる事でビタミンDが出来てカルシュウムを取り込む為の助けに成ると。


 そして、スチイと御両親が紹介されて、病気の解明に貢献し、人魚族との貿易の再開も取り付けて来たと言われた。

 人魚族との貿易と聞いて、顔をしかめる者も居たが、魚が配られると表情は和らいだ、きっと皆、魚が好きなのだろう。

 皆に魚が行き渡った頃を見計らって、『人魚族と昔の様な関係を望む』と族長であるペンドラゴンの言葉で締めくくられた。


 帰りには拍手が沸き起こり、スチイ等は沢山の人に握手を求められていた。

 そして今のスチイは、髪を染めてもいなければ帽子も(かぶ)ってない。


 ようやくスチイがスチイで居られる気がして、(うれ)しく思う。


属性の魔石には光風火水土氷音命と数多く存在するようです。

週間ユニークアクセスが二百を超えました。

読者の皆様、感想を書いて下さった方、有難う御座います。

連載当初から読んで下さっている方もいて本当に嬉しく思います。

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