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青い真珠

 メロンを抱えた親切な女性の御陰(おかげ)で多くの女性が集まり、裏通りの古いお店が良いと勧められ行ってみる事にした。

 他の装飾品店と同じ様に、お店の壁は白く塗られていて迷う事は無かった。

 ただ入り口が小さく、ドアと違い板を横に移動させる引き戸に成っていて、戸の足元の敷居(しきい)が拳一つ分高く成っている、敷居と対を成す上部の鴨居(かもい)は低く俺の背丈では少し屈まないと頭が当るほどだ。


 大通りのお店はドアで開閉も楽で、出入り口に段差も無く入り易かった、それと比べてしまうと実に入り難い、いや何か有っても逃げ難い様にしているのだろうか?

 入り難い入り口を見てしまうと、本当にお勧めのお店だろうかと疑いたくも成るが、美味しそうなメロンを思い出し騙されたとしても良いかなと、ニンマリしてしまう。


 引き戸を開け、敷居を(また)ぎ鴨居に注意しながら腰を屈めてお店の中へ入る。

 お店の中は内壁も白くて採光良く明るい印象だ、入り口は狭いが中は広めで奥行きが有り、突き当りの鏡が更に広く感じさせている。


 お店の入り口付近には貝殻を使った装飾品が数多く並び、見ているだけでも楽しいが、値段も手頃で自分が女性だったらつい買ってしまうだろう。

 その先には他のお店同様に珊瑚(さんご)で出来たバラの装飾品が有るが、他の店の物より花びらの数が多く色も鮮やかで、装飾にあまり興味の無い俺の目にも良い物だと思わせるに十分な出来だ。

 珊瑚のバラは大きさも複数有り、髪留めやブローチにしたら女性を美しく見せる物に成るだろう。


 更に奥に進むと真珠が一つ一つ仕切られ丁寧に置かれている、手前側に小さい物から奥に行くにしたがい大きな物が並べられ、上段には傷の無い物が置かれ下段に行くにつれて傷が有る。傷が有るとは言え、上段に近い物の傷とはエクボや突起等で、糸を通す穴を開ける時に消えてしまうほど小さな物だ。

 そして一番下の段の物でも、装飾品として何かに()めてしまうなら隠れてしまう様な小さな傷しかない。

 他のお店は綺麗な部分を上に向け、小さな傷の物は優良品の陳列棚に並べられていて、手に取るまで気付かなかった。


 中々に良いお店だと思いながら、目を皿の様にして真珠を上から下へ手前から奥へと順に見てゆく。他のお店では白っぽい物も有ったが、このお店は輝きと深みが数段上の気がする、(ただ)し値段も少し高いか? いや品質が二、三段上で値段が一段上と考えるなら安いとも言えようか。

 小さな物から順に大きい物まで見て幾つか気に成った物を、再度見直して迷ったが首を振る、そして更に奥にも真珠が並べられているが此方は変り種の様だ。

 俺はスチイに似合う真珠が見つけられる様にと思いながら、変り種の真珠を一つ一つ真剣に見てゆく。


 まずは二つ繋がりの瓢箪の(ひょうたん)様な形の真珠が幾つか有る、その中でも小さく深みの有る真珠が可愛く迷うほどだ。

 次は金色に輝く真珠が並んでいる、作り物かとも思ったが輝きや照り返しが良く、スチイの金色の髪にも負けないだろうと思う。

 変り種の中には虹色の縞模様を持つ真珠も有った、とても目を()かれるほどに美しいが、スチイには少し派手過ぎる気がした。


 流石に地元民がお勧めと言うだけ有って、迷う様な真珠が幾つも有った、そして陳列棚の先には雑に置かれ特売品と書かれた棚が有る。

 特売品と書かれた場所は、浅い木箱に綿が敷かれた上に真珠が乗せられているが、一つ一つの間隔は狭く不均一に置かれ、並べたと言うよりは置かれただけと言う感じだ。


 諦め半分に特売品を見てゆくが、歪な物や筋の入った物に一部が白い物等、色々と個性豊かで思ってた以上に面白みが有る。

 そしてそれは、その中に有った。遠浅の海の様な青い色、水色と言うべきか、初めは何かの石か宝石と思ったが透き通る訳でも無く、青いだけでも無い、光の角度で桜色にも見える深みの有る照り、輝きが有り真珠だと分る。

 形は真球とは言えないが(なめ)らかで猫が丸まった様な可愛い感じがして、見ているだけで自然と笑みがこぼれる丸みだ。

 心の中では此の青い真珠と決めたが、一応最後まで全て見て、やはり青い真珠が一番だと思った。


 真珠は決まり、次は首に掛ける為の金糸かチェーンが必要だ、それらは店員の近くに並べられていて、店員に見られながら一つ一つ見てゆく。

 多くは金製品だが色々な色が有る、深い山吹色から光沢の有る金色に桃色の物もある。金製品の隣には少し鈍い輝きの銀製品が並べられている。

 銀製のチェーンは落ち着いていて良いが、スチイの輝く様な綺麗な肌に負けてしまうだろう。

 金製品の中では桃色の物が柔らかさの中に輝きが有り綺麗に映った、ただ少し肌色に近い気がしてメリハリが無く成ってしまう気がする。


 迷いながら見てゆくと、銀製品とは反対側にも銀色のチェーンが数本並んでる。

 銀より滑らかで光沢が強い、ステンレスだろうか? いや俺はステンレスの包丁を見慣れている、研いだばかりの刃先でもココまでの光沢は発しない。

 造りは(ほそ)く小さな輪が連なっているだけの単純な物だが、その素朴さと細さが光沢の輝きを抑え、程好(ほどよ)く見せて好感が持てる可愛らしさだ。

 先程の青い真珠と、このチェーンとの組み合わせを想像して決めた。

 だがチェーンの値段を見て驚く、金製品と変わらない金額だ、いや素朴で線の細い造りから、材料の量と細工の手間を考えたら金製品よりも高い。

 見えない所にダイヤでも付いているのかと思い、何度も見たが細工は単純な物で特に変わった様には見えない。


 少々値段に納得が行かないだけで、俺の中では組み合わせは決まった、店員に値段が間違ってないか尋ねてみる。

 俺の聞き方は少々怒気を含んでいたかも知れないが、店員は何でも無い事の様に説明してくれた。

 金と同等に価値の有る白金だと言う、そして金より硬く溶けにい為、細工や加工が難しくて作れる数は少なく、細工も単純な物に成ってしまうと言う。

 だが見た通りの輝きを放ち、金と同じく肌の敏感な方でも身に付けられると言う。


 俺も白金の事は話しに聞いた事は有った、耐熱温度が鉄の倍も高いと聞いて、白金で耐火性の盾を作れないかと考えたが、耐火性が高いが為に溶かす事適わず、純度を上げる事も加工もドワーフの国に依頼すれば出来なくは無いが、希少性も相まって値段が付けられないと言われた。


 武器や防具と違い装飾品なら少量で済む、加熱とは別な方法で溶かして純度を上げたのだろうか?純度の低い白金は、銀の様な見た目だと聞いた、純度を相当に上げたのだろう。

 他の金属の可能性も有るが、このお店を教えてくれたお姉さん方と、お店と自分の目を信じよう。


 高いとは言え相応の理由さえ聞ければ文句は無い、俺は青い真珠と白金のチェーンの組み合わせでネックレスにしてくれと店員に頼んだ。

 一度店員に真珠は間違えないか確認されたが、その真珠が良いと言い切った。

 加工に時間が掛かると言うので、内金に金額の一割を払い、「夕方に取りに来る」と言って装飾品店を出た。


 お店を出た時には日は高くいい時間だ、目印を覚えながらお城に戻った。

 急ぎ裏庭に向かったが、スチイも魔王とヤギの姿も無く、俺は昼食に向かう。

 昼食を頂いたら、もう出発の時間だ、今日は俺とスチイにエルフの族長と付き人に狩人の五人と、馬車を操る御者(ぎょしゃ)と馬に乗った護衛の騎士達だ。


 若様は目立つのかお城から出る事は無く、今日は女王様も姫様も見えない。

 スチイは始めエルフの三人と一緒に馬車に乗せられたが、出発前に降りて俺と手を繋ぎ歩いて馬車の後を付いて行く。

 町の建物と建物の隙間に海が見える、遠いが青くてキラキラと輝いていた。


「スチイ、海が遠くに少しだけ見えるな」

「えぇ? どこパパぁ」

 スチイに話し掛けるが、スチイには海が見えてないらしい、俺は屈んで指を差そうとしたが確かにスチイの目線からでは人混みで見えない。


 肩車をしてあげようと思ったが、今日のスチイの服は少し濃い青と緑のワンピーススカートで、肩上は紐だけで露出的だが上から大きな薄布を羽織っている、頭には小ぶりな麦藁帽子で、見た目はとっても可愛いが肩車には向かないだろう。

 俺は一度しゃがみ込んでスチイを左肩に乗せ、左手で太腿(ふともも)を右手で足首を押さえてゆっくりと立ち上がる。

 スチイは薬指と小指に薄布を持ちながら、右手を俺の頭に回し、左手で遠くの海を指差す。


「スチイ見えたか?」

「パパありがとう、海が見えるよぅ」

 スチイは嬉しそうに体を小刻みに動かし、俺の左肩と二の腕に、可愛いお尻と柔らかな太腿の感触がプルプルと伝わって来て、とても幸せだ。


「スチイは海が好きか?」

「大好きだよ、スチイはねぇ泳ぎが得意なんだぁ」

 海が見えたせいか、今日のスチイは何時もにも増して声が明るい気がする。

 スチイが海好きで泳ぎが得意と言うなら、後で遊びに行くのも良いかもしれない、可愛い水着を着せても良いし、濡れたら透けてしまいそうな薄着で遊ばせるのも良い、そんな事を考え水着のお店を目で探しながら歩く。

 ……だが実際には難しいだろう、町でスチイが帽子を脱ぐ事は無い、目と髪の色をさらけ出して海で泳ぐとは思えない、精々(せいぜい)海水に足を()けるくらいだろう。


 俺とスチイは町行く人に見られ、お姉さん方には「可愛い」とか「良いわね」なんて声を掛けられ、スチイがその度に手を振るのか?可愛いお尻がプルプルと揺れ動き、俺に幸せを与えてくれる。ついつい顔がニヤケて、いい子いい子する様に頭の代わりにスチイの太腿を気付かれない様に少しだけ手を動かして撫でる。

 スチイの体は何処を触っても良い感触を返してくれる、俺の宝物だ。


 風に乗り潮の香りが漂う町中を、スチイの笑顔と共に病院へと向かい歩て行く。


読者の望む物を筆者が持ち合わせているか分りませんが日々努力しお届けします。

そして筆者の欲しい物を、読者の皆様は持っているかもしれませんね。

そしてスチイちゃんの幸せは誰が守る事に成るのか?

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