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人魚族の病院

 お昼近くまでスチイと魔王と一緒に居た俺は、魔王を厩舎に預けスチイとお城の中へ入って行った。俺は自室へスチイは姫様の所へ。

 部屋に戻った俺は、午後の診察と治療の為の用意をしてから昼食へと向かう。


 昼食後、エルフの族長に午後の予定を確認する。

「姫様の治療は何処の部屋で行いますか?」

「町の病院で治療してほしいのね」

「お城の外ですか?」

「そうねぇ何人か治療をして欲しいかしら」

「……分りました」


 お城の中で姫様だけを治療すると思っていたが、族長はとんでもない事を言ってきた、分ってたなら前もって言って欲しいとも思ったが、午前中に人魚女王か病院関係者と話でもして決めたのだろう、文句は言うまい。


 俺は慌てて部屋に戻り、治療の為に準備した物に、数種類の魔石を追加して入れてゆく。姫様だけではなく数人の治療を頼まれたからだ。

 今一度忘れ物が無いか確認して、身だしなみを整え族長の部屋へと向かった。

 ドアをノックすると少し待つように言われ、しばらくして族長と付き人が現れる。付き人は出た部屋に鍵を掛けると、隣の部屋の鍵も確認している、不思議に思い誰の部屋か聞いてみると、族長の隣に部屋を与えられているが、中で繋がっているとの事だ。

 なるほど付き人とは朝も夜も寝ている時でさえ仕えると言う事か。大変な仕事だ。

 族長の後に続き外に出る、そこには馬車が用意されていた、が馬車は一台、乗るのは人魚女王と姫様とスチイにエルフの族長の四人だけだ、馬に乗った騎士も引き連れ俺と狩人と付き人は歩きで付いて行く。若様の姿は見えなかった。


 国の女王が馬車で進むという割りに、街の雰囲気はあまり良くない気がする。

 姫様の筆談に有った様に、姫様の家系が病気の原因として疑われているのだろうか?


 俺は街中の女性を見ながら歩き、ついつい胸元に目が行ってしまう、多くの女性が胸元の大きな谷間に、真珠のネックレスを輝かせているからだ。

 大きな果物の影で真珠が小さく見えてしまうが、負けじと光り輝き、胸元を艶っぽく見せている。

 首元まで有る服を着た者も居るが、真珠のネックレスは服の外に出し、見せる様にして視線を胸元に集める。皆、自分の持つ果物に自信が有るのだろう。

 中には紐を長くして、大きな果物の間に服を張り、その上に真珠を乗せ、歩く度に跳ねさせている者も居る。

 大きな果物の上で、光り輝く真珠のネックレスがポンポン跳ねている。谷間に煌く(きらめ)真珠も良いが、真珠を跳ねさせるスイカも魅力的だ。

 実に良い、他の顔や手足に目が行かなくなってしまうほどに、果物と胸元の真珠に視線が吸い寄せられてしまう。男の本能に訴えかけられている様だ。


 町行く女性の胸元を見ながら歩いていると、スグに病院に着いてしまう、楽しい時間とは早いものだ。

 馬車が止まり騎士は馬を下りて、馬車の出口の側に立つ、まず出て来たのは人魚女王で続き姫様が、だが騎士は立っているだけで手を差し伸べる事はしない。

 俺は急ぎ馬車の出口に駆け寄り騎士に押さえられるが、人魚女王が軽く手を上げると解放された、(あわ)てて俺は出口に手を差し伸べる、出て来たのはスチイだ、馬車の踏み板の段差が大きく乗り降りは大変なはずだ。

 スチイは俺の手を取ると、そのまま飛び付いて来た、俺は驚きながらもスチイを受け止め、半歩下がり勢いを殺して一度抱き締めてから、スグに降ろす。

「ありがとう、パ……ノーバン様」

「ケガは無いね」

「はい」


 俺は今一度馬車の出口に戻り、もう一人に手を差し伸べる。

「あら、ノーバンが受け止めてくれるのかしらね? うふふ」

「お(しと)やかにお願いします、族長」


 俺がスチイを受け止めた所を見ていたのだろう、人をスグにからかう所はスナックのママと良く似ている、血は争えないと言う事か。


 姫様達が病院の中へ入ると、男は患者も付き添う人も追い出され、中に残った男は俺と騎士と医師だけだ。狩人はエルフの戦士で族長の護衛との事で、騎士扱いと成った。


 病院は増設したのか色違いの部分が有り、意外と広い、中を一通り案内してもらうと、待合室に受付、診察室に処置室、調合室に薬室と、他にも仮眠室や風呂に調理室まで完備されている。

 少し準備に時間が掛かるとの事で、せっかくなので姫様とスチイと俺の三人で話の出来る場所を借りた。


 今日は治療の予定だと言う事も有り、姫様の服は簡素だが、大きな胸元には綺麗な真珠のネックレスが輝いている。

「真珠のネックレスがとてもお似合いですね」「……」

「お母さんのネックレスはお父さんからのプレゼントなんだよね」「……」

「そうでしたか、どうりで美しいと思いましたよ、真珠も姫様も輝いて見えます」「……」

 姫様は顔を赤くして頬に手を当て、スチイは頬を膨らませて俺を(にら)んでる。

 姫様は声が出せないが、俺の話に相槌(あいづち)を打つように頷いてくれる。


「スチイも欲しいのか?」

「……ノーバン様がプレゼントしてくれるなら欲しい」

 俺からと言っているが、本当に欲しいなら、両親に買って貰うとか自分で買うとか方法は有る。


「他の人からじゃ駄目なのか?」

「ダメ! ノーバン様からじゃないと」

「じゃぁスチイが、真珠のネックレスも似合う様な女性に成ったらな」

「もぅ!」

 俺は暗にスチイの胸にメロンかスイカを抱える様に、成長し大きく成ったらと言ったつもりだが、スチイは頬を膨らませてしまった、プレゼントする約束をしたつもりだが、今欲しいのだろうか?

 とりあえず今は、頭を撫でて(なだ)める事しか出来ない。

 少し話の出来る雰囲気に成った所で、本題に入る。


「姫様、少し宜しいでしょうか?」「……」

「姫様、今更言うのも恐縮です(きょうしゅく)が、治療に当たり報酬を頂きたいと思っております」「……」

 姫様は背筋を伸ばし真剣に話を聞く体制になり、俺の話に頷きながら『報酬』と聞いてスチイを抱き寄せている。

 なるほど、スチイか若様から聞いてるなら話が早いが、俺にスチイを奪われると思っているのだろう。まぁ姫様の病気の完治を見るまでは()れでも良い、もしも治せなかった場合の事を考えると、今はそのままの方が良い。


「若様にお話は聞いているかと思いますが、若様にも約束して頂いてます」「……」

「そして報酬に、俺は幸せを頂きたいです」「……」

勿論(もちろん)、姫様の病気が治った後で構いません」「……」

 今まで相槌の様に頷いてくれていた姫様が、急に頷く事を止めてしまった。

 勘違いの為か?簡単には頷いて貰えそうに無いので、少し言い方を変えてみる。


「報酬を頂けるのでしたら、人魚族の医師にも奇病の治療方法を教えますよ」「……」

 姫様が俯いて居る所に、スチイが腕を引き自分に振り向かせ、姫様に微笑んで頷く。一瞬、姫様に(にら)まれた気がしたが、小さく頷いてくれた。

 あぁこれじゃ脅迫と(きょうはく)もとれるか?人質と変わらないな、アーサー王の事を嫌な奴とか思ったが、俺も所詮は人間と言う事か、一緒だな。


 姫様との話が付いた所で、ドアがノックされ族長の声がかかる。

 一度、治療室を見て欲しいとの事で、族長に連れられ姫様とスチイを残し部屋を出る。


「ノーバン! 姫様を苛めちゃダメよ」

「苛めてませんよ」

「そぉう? 悲しい顔してたのね」

「……」

 姫様は悲しい顔をしてただろうか?俺には分らなかった、もしそうだとしても、隣にスチイも居るし大丈夫だろう。


 治療室に入ると十二畳かもう少し広いだろうか、だが治療道具や薬品の入った棚が有り、執務机に椅子も有り治療用の診察台も二つ有るので、あまり広くは感じさせない。窓は閉められているがガラスで出来ていて、白いカーテンが敷かれている。そして天井は高く手の届かない高い所と、天井にもガラスが()め込まれ、採光は十分に確保されている。

 奥の診察台は薄いカーテンで仕切られているが、中が透けて見える、大怪我を負った人の処置用だろう。

 姫様の治療には切開をする予定だから、使うなら奥の診察台だ、俺は薄いカーテンの中も(のぞ)き込み、中も確認する。とにかく綺麗で十二分だ。


 次に治療道具の棚を見せて貰うと、俺が買った刃物よりも上等の物が沢山有る、使わせて貰おう。ついでに薬品棚を見ると、『酒』と書かれたビンが有る、中の液体は透明で、もしやと思い医師に聞いたら、何度も蒸留した高純度のお酒らしい、薬草やその加工品ばかりだと思っていたが、良い物を見つけてしまった、使わせてもらおう。


 他にも治療室の中の物を色々物色し、質問もしてみて、綺麗な水も布も沢山使える事が確認できた。

 だが問題が一つ、痛み止めだ、流石にモルヒネ錠の魔石は手に入らないらしい、通常の痛み止めでどの程度抑えられるのか不安だ。切開したとしても、痛みのあまりに力まれたり動かれたら、小さな寄生虫を取り出すのは難しいだろう。

 医師には蜂の毒や蛇の毒も有ると言われたが、扱いが難しそうだから遠慮した。


 試にと思い今有る中で一番強い痛み止めを貰ったが、これから治療を行う自分で試す訳にもいかず、そして出来れば同じ種族の人が望ましい、見回してみて一人の看護師が目に止まる、正確には若い女性看護師のスイカに目が行っただけだ。

 少々実験台に成って貰おう。


 俺は痛み止めを手に持ち、看護師を真っ直ぐに見つめて微笑むと……、逃げられてしまった。だが看護師は他にも居る、逃げ遅れた看護師に目線を合わせ微笑むと、医師の陰に隠れようとするも、医師により俺に差し出される、俺は神ではないが看護師は人身御供の様な者だ。

 俺はニヤリと微笑み、看護師の手を取り診察台に上げる。


 逃した果物は大きいと言うが、捕まえた果物も大きかった、胸にメロンを抱えている、逃した果物ほどではないがスイカにも負けない要素が有る、何故なら、ただのメロンではないからだ、なんとマスクメロンを抱えていたのだ。弾けんばかりのギュウギュウの果肉を、無理やり締め付ける様に、押え付ける感じの見た目は、とても甘美で、スイカにも勝るとも劣らない。布越しに見ただけでも涎が(よだれ)出そうだ。

 看護師は診察台に上がるも、俺の視線に気付いてか、(ひざ)と腰を曲げてメロンを抱え込み、腕で隠してしまう、が隠しきれてない、こぼれそうだ。


 俺から逃げているのか? 薬から逃げているのか分らないが、説得してみる。

「可哀想だけど、今日は女王様と姫様がお見えに成っていて、姫様に試しもしない薬を使う訳にはいかないんだよ」

「……」


 俺の説得にも看護師は一度俯いた後、医師を睨み付け返事もしてくれない。女王様の名前を出せば折れると思ったが、もう少し説得が必要か。

「俺はこの後の治療が有り、医師にも治療方法を覚えて貰わなければ困る、君にしか出来ないんだ、頼むよ」

「……わ……わかりました」

「有難う、君こそ白衣の天使だ」

「……」


 何とか説得できて一安心だ、これで合法的に目の保養が出来る。

「この薬を飲んで、仰向けになって診察台に寝て下さいね」

「仰向けですか?」


 マスクメロンを抱えた看護師の質問に、俺は無言で頷いて見せる。

第四章は長くなってますが、本来、スチイちゃんを冒険者に成れるように育てて終わる筈でした、主人公が連れ出してしまった為に長くなっています、尚、まだ四章終わりまで話数が掛かります。

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