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姫様の御御足、四章四十話

 部屋の雰囲気と姫様の美しい姿に魅了され、竜宮城に来た様な錯覚に陥る(おちい)も、病気の事を考え診察を始める事にする。


「診察を始めますので、ソファーに横になって、足を出して頂けますか」

「……」

 姫様は俺の言葉に頷くと、ソファーに上がり脹脛が(ふくらはぎ)見える所までドレスの(すそ)(めく)るが、膝より下だけだ。

 エルフの族長は姫様に何かを話し、その言葉に姫様が頷くと、族長は隣の部屋へと消えた。俺は嫌な予感はしたが、そのまま続ける。


「もう少しドレスを捲って頂けますか」

「……」

「もう少し宜しいですか」

「……」

 姫様は膝上までドレスの裾を捲った所で手を止め、顔を赤くしながら俺の方を見て来る、それに合わせ若様とスチイも俺を見る。この辺りが限界か、残念。

 姫様と二人きりなら、もう少し行けた気もするが我慢する。

 気を取り直し姫様に診察の為に、次の指示を出す。


「うつ伏せに成って頂けますか」

「……」

 姫様は頷いた後、香りを残す様にゆっくりと体を(ひね)り、うつ伏せに成った。

 姫様を見てみると、金色の髪は左肩に下がり首筋が露に(あらわ)成り艶めかしく、腕を曲げて少し(ひじ)を付いている。

 胸に枕を抱えている様なボリューム有るメロンに支えられて、背筋は伸ばされ少し浮き出た肩甲骨が色香を立たせながら、(くび)れた腰まで滑らかなラインができる。

 その先には二つの美味しそうなキャベツが実り顔を(うず)めたくなる。

 ドレスの桃色と水色の照りが相まって、キャベツは虹の様に丸みを帯びて輝き、二つの野菜の間に有る割れ目まで映し出す。

 視線をもう少し下げるとスカートは重力に逆らえず、太腿(ふともも)に張り付き、二つの膨らみと深い渓谷(けいこく)を強調しつつ、太腿の艶っぽい肉を浮かび上がらせる。


 俺が静かに美を楽しんでいると、いつの間にか戻って来たエルフの族長が、薄めの毛布を二つ折りにして、姫様の首筋から太腿までを覆い隠してしまった。

 俺は、つい族長を(にら)んでしまうも、族長は涼しい顔をして視線を外す。

 何か恨みでも有るのだろうか?これでは診察に集中出来ない。いや逆に集中できるのか?いやいやヤル気の問題だ、俺のヤル気は激減してしまう。「はぁ」


 ヤル気の失せた俺は、姫様の左右両方の脹脛を(ふくらはぎ)手で軽く優しく鳥の羽でなぞる様に触り、両足の脹脛に差異が無いか確かめ、脹脛を触り頬擦りする様に撫で回すと、姫様は腰をくねらせ色っぽい仕草をしてくれる。それを目にした俺はヤル気を取り戻す。

 触診を進め、細く綺麗な足首を掴み軽く持ち上げて診る。そのまま足の甲を支え、土踏まずから足の指までを親指でなぞり、少し指を開いて診る。

 姫様の足の指の付け根には、間接一つ分位の水掻きが有る。気に成って足の指を開き水掻きを優しく指でなぞると、姫様は体を(よじ)り逃げ出そうとするも、俺は逃がさない。その光景はとっても艶っぽい。


ノーバン(NO-BAN)

「……診察中です、お静かに」

「診察は楽しい?ノーバン」

「えぇっと患者が治るなら嬉しく思います」

 エルフの族長の怒気を含んだ声と質問に、当たり障りの無い答えで返すも、皆が俺の事を白い目で見ている気がする、が無視だ。

 姫様は声が出せず、スチイも若様も病気が治せるのは俺だけと思っているのか、竜人の病気を診察し突き止め、竜人と若様を救った恩人と思ってか、何か言いたそうにするも何も言って来ない。苦言や嫌味を呈するのは族長だけだ。


 俺も姫様の足が可愛いからと、反応が艶っぽいからと、ただそれだけで触っている訳ではない。足の指先等の至る所まで血液や神経が通っているかの確認は必要だ、患部で神経断絶もシビレの発生や、圧迫による血液循環の悪化の無い事が確認出来て少し安心出来た。

 その為に隅々まで触り、皆に白い目で見られる現状だ、少し悲しく思う。

 まぁ無駄な説明をして言い訳と(とら)えられるより白い目は無視して診察を急ごう。


 次は患部の位置を正確に特定する為の触診をする、指先で脹脛を指し少しづつ撫でる様に位置を移動させ確認をして、患部の位置を特定し墨で印を付ける。

 横からも同じように探し、深さを特定し反対側の横からも探して精度を上げる。

 特定した患部を指で軽く押さえ……放す。強く抑えてから……放す。何度か試して痛みを確認して行くと、間欠性の痛みが始まってしまい姫様には痛み止めを飲んでもらった。


 姫様の痛み止めが効くまでの間に俺は次の準備をしながら待つ。

 スチイは若様の隣で心配そうに俺と姫様の顔を見るが、まだ何も言ってあげられず抱き寄せる事も出来ない。俺が若様とスチイを交互に見ると、何かに気付いた様に若様はスチイを抱き寄せた。少々寂しいがこれで良い。


 姫様の薬も効き始め、落ち着いた様なので診察を再開する。

 ソファーが汚れない様にシーツを敷いた上に、俺の血を水で薄め染めた紙を敷く。

 竜人の国で若様の体内を超音波で透過させ、骨を写し出した要領で姫様の患部も写すつもりだ。ただ前回の様な肉と骨の様に濃淡がハッキリ出るとは思ってない。


 俺はテーブルの上に準備していた魔方陣の書かれた手袋を、右手に嵌める。

 魔方陣は音、水、風、の三種で音を中心に目の様な魔方陣で、楕円形の中心に円を描いた様な形だ。魔方陣に合わせて魔石を置き手拭(てぬぐい)で固定する。

 試しに自分の左腕を紙の上に置き、右手で魔力操作をして、音の魔石で超音波を発生させ風の魔石の力で増幅し、水の魔石で隙間を埋める様に水を出して、腕の中へ超音波に魔力を乗せて送りながら、少しづつ移動させる。

 下に敷いて有る紙は超音波に乗せた魔力により反応し、薄めた血が濃淡を作り出して腕の骨の形がハッキリと浮かび上る。がこれでは駄目だ。

 紙の位置をずらして再度魔石を魔力で操作するが、今度は薄く弱く一定の速度で腕を二往復の四回腕を透過させるが、濃淡がまだ薄い。

 更に二往復させて濃淡を重ね、濃淡を積層する、積算とも言うだろうか。

 これで四往復だから積算回数は八回となり、太目の血管や(けん)も薄く見える様に成った。そして更に四往復させ積算回数十六回では、かなり細部まで見えるほど綺麗に写る。

 あまり時間がかかってしまうと薄めたとは言え、血が硬化してしまい写りが悪くなる、俺は急ぎ姫様の脹脛を横から超音波に魔力を乗せて写し出す。

 勿論(もちろん)姫様の足に優しく丁寧に、何度も何度も撫でる様に魔力を流す。


 横から写すのは患部と骨が重ならない様にする為だ。姫様を横向きに寝せて艶っぽい腰の捻りや、横からのキャベツを拝みたいからではない。十分に目の保養には成ったが、それが主目的では無く……下心は少ししかない。

 結局、診察と称して姫様の御御足(おみあし)を何度も触り、何度も撫で回してし十分に人魚族の足を堪能した。


 俺は姫様の脹脛の中を写した紙をテーブルに置き、姫様に肩を貸して起き上がらせ、ドレスの捲れを直そうとしたらエルフの族長に耳を引っ張られてしまう。

 ドレスの(すそ)を直しながら今一度細い足首に触れたかったのだが、残念。

 ドレスの裾はスチイが直してくれて、姫様の足首は隠れ裾が流れて美しい。

 俺は()()耳を引かれたまま、族長にテーブルまで連行された。これでは耳が伸びて俺までエルフに成ってしまいそうだ。


 椅子もソファーも無いテーブルに着き、姫様の美しく艶か(なまめ)しい御御足を写した紙を広げて診てゆくと、患部には糸屑の様な二、三cmの長さで爪楊枝(つまようじ)を少し丸めた様な感じの物が写し出されていた。


 俺は慌ててソファーを調べたが何も無く、姫様の足に跳び付く様に向かいドレスを捲り一心不乱に足を触りだす。姫様は恥ずかしがる様にドレスを押さえ下ろそうとするも、俺は脚の間に頭を入れ阻止して足を撫で回す。

 そしてドレスの内側も膝下から裾まで何度も摩り生地の肌触りに感心する。

 俺は手と頬で姫様の足を十分堪能し香りを楽しんだ後、姫様を解放した。

 姫様も塩入りのお風呂に入るのか、微かな潮の香りを感じる。


 またしても俺は白い目で見られるが、欲望に走ったわけではない、写し出された物が内部の物か外部の物かを知りたかっただけだ、探したがソファーにも姫様の足にもドレスにも何も見つからず、姫様の脹脛の中に何か有ると確信した。


 確認し終わったソファーを元に戻して皆で座り、俺はテーブルの上に有る紙を(なが)めながら、今までの事を考える。加工品の魚を食べても病人は出なかった、生の魚や海老を食べてから奇病が発生した、発病は食べた内の一部の人だけ、患部や痛みは患者により違う、間欠な痛み、生海老が美味しい、食べてはいけないとの言い伝え、足の指の間に有る水掻き、人魚族とは人魚の末裔。


 最後に、患部に写し出された爪楊枝ほどの謎の物体、病巣?腫瘍(しゅよう)?寄生虫?

 そうだ、あの影は寄生虫に似ている、そっくりと言っても良い。

 俺が顔を上げると皆はテーブルに広げられた紙より、俺の顔を見ている。

 俺は如何したのと言わんばかりに首を傾げながら皆を見渡す。


「ノーバン、診察は楽しかったかしら?」

「えぇそれはもう楽しかったですよ」

 皆が口を閉ざす中、エルフの族長が先程の俺の行動に対してか質問をしてくる、が俺は病気の原因に見当が付いた嬉しさから、ニヤニヤしながら素直に答えてしまった。するとスチイはますます白い目で俺を見て、若様と姫様は俺から目を逸らしてしまう。


「それは良かったわねノーバン」

「えぇとっても良かったです」、触り心地が。

 同じような質問に少し冷静さを取り戻した俺は、何が聞きたいのだろうと不思議に思い、首を傾げながら族長の顔を見る。族長は呆れたと言わんばかりに、無言で両の掌を(てのひら)天へと向けた。


 何かを勘違いしている族長はさて置き、スチイに向き直り手を伸ばす。スチイは少し戸惑いを見せるも若様の元を離れ、俺の隣に座る。

 俺は左手でスチイの肩を抱き寄せ、頭と頭を付けてグリグリと押し当てる。


「スチイ、もしかしたら分ったかも知れないぞ」

「本当にぃ?」

「あぁ、もしかしたらだがな」

「ありがとう」

 スチイは俺の脇腹(わきばら)に顔を埋め抱き付いて泣いている様で、熱い物を感じる。俺は優しくスチイの背中を摩る。

 俺は少しの間、スチイと幸せな時間を過ごすも、スチイを早く喜ばせたい事、早く安心させたいと思う気持ちから、診察結果の一部を話した事を後悔する。


 脹脛だけでは原因が分からなかったと言って、背中の患部も撮影したかった、胸の下に紙を敷き、魚拓ならぬパイ拓が出来たかも知れない。失敗した。


小説中では説明されませんが、どうやらオキアミの事も小さな海老と認識している様です。

見た目の形だけの分類で正確では有りませんが適当に読み流して下さい。

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