四階層のボス
ボスとの戦い、その行くへは。弓は刀はいかに
「さてとボス戦へ行くか」
「「「はい」」」
俺達はギルドカードを合わせ四人でPTを組む。色々利点が有る。
ボス部屋に一緒に入れる。魔力の残照の恩恵を受けられる。
ボス部屋は壁で覆われ扉は一つだけだ。中に違うPTが居れば絶対に開かない。
逆に開けば中に他のPTは誰もいない事が確定する。
ボス部屋の広さは階層により違うが四階層では五十m四方位ある。
「マエコちゃんは武器は何を使ってるの?」
「私は此の鞭です」
鞭を見せてくれる。軽く叩いて欲しいと思うのは俺だけだろうか?
マエコちゃんの細く綺麗な指に包まれた鞭。柄は長く五十cm位ある。
マエコちゃんの前に跪いたら、見下ろしながら叩いてくれるだろうか?
いけない、ダンジョンの中だしミミィちゃんも居る。妄想は封印しよう。
「叩かれたいと思うほど良い武器だね。あっと、それとは別に弓は使えるかな?」
「え?!……あ……はい、一応人並みには」
今少し本音が漏れた危ない。いやミミィちゃんは目を細めて軽蔑した様に俺を見ている。手遅れのようだ。だが今の俺の思考にはご褒美だ。テレ嬉しい。
弓で人並みは無い。普通の人は使わないから。
まぁいい。取り合えず使えると言う事だろう。
「弓はボス部屋でしか使えないから、中に入ったらボス相手に練習してくれる」
「ボス相手に練習ですか?」
「大丈夫、俺が引き付けるから安全に練習できるよ」
「はい、分りました」
飛び道具はダンジョンとは言え基本的に使用禁止だ。
意図せず他のPTに危害を加える可能性が有るからだ。
但し例外的に、講習を受け保証預かり金や保険金を納め、誓約書を書く事でボス部屋以外での使用が認められる。許可無しではボス部屋へ行くフィールド上で携帯出来ない。ボス部屋での使用はPTリーダーに、講習義務と保障や許可が委任されている。
ボス部屋以外のフィールドは狙いを外しても、安全が確保出来るように水平より下方のみで、狙いを外しても射手から十メートル以内の着弾が地上で有る事、を条件に使用許可が下りる。一見足止めしか使えない様に思えるが使い方次第である。現にエルフ人が魔物の頭を射抜き一撃で倒したのを見た事が有る。
「但し、ボスと俺がマエコちゃんから見て一直線上に見える時は射ないでくれよ、でないとマエコちゃんにハートを射抜かれてしまいそうだから」
「は、はひぃ」
「ノーバン!」
「ごめんごめん、ミミィちゃんはテイビトと一緒に端に居てね」
ミミィちゃんに抓られてしまった。確かに冗談交じりに言った俺が悪いけど本当に文字道理の意味で射抜かれたら死ねる。必要な注意点だ。
「じゃぁ行くよ!」
「「はい!」」「おう」
ボス部屋の扉を開き中へと入る。荒野の様なボス部屋でボスは一番奥に鎮座している。
四階層のボスは「熊」だ。二m以上は有るだろうか見上げる大きさだ。
こげ茶色をした熊で、体格もいいし爪も鋭い。
俺は熊の近くまで走り少し誘き寄せながら相手をする。
「マエコちゃん、そこから弓で射れるかな?それ以上は近づかないでね」
「はい、やってみます」
マエコちゃんから熊まで二十五m位有るだろうか、素人なら当たらない。いや俺に当たる可能性すらある。が杞憂に終わる、俺より命中精度がいい気がする。
俺は落ちている石を拾いながら熊に投げ気を引く。
それでも弓を射られれば、そちらに熊は気を向けるので、何度も石を投げ気を引き続けた。
マエコちゃんが十本位矢を射た辺りで俺は刀で熊を斬る。
熊が手を空振りする様に、前に出る振りして止まり空振りした所に切りつける。
正面に立ち熊は倒れ込むように襲い掛かってくるが、熊は倒れる前に両手を使い四つん這いになり、片手を挙げ手を振り回す。俺は後ろに回り込もうとするも熊の回転の方が速い。マエコちゃんが矢を射かける。大分効いている様だ、熊は暴れる。
「マエコ!上手い、効いてるその調子で矢を射てくれ」
「は、はひぃ」
戦闘中ならではの呼び捨てだ、反応がとても可愛い。おっと集中集中。
熊はゴロゴロ転がり仰向けになり、手足をバタバタ振り回す。手が付けられない。完全に俺が陽動でマエコちゃんが攻撃になってる。少しは良い所も見せたい。
力は入らないが片手で刀を持ち、半身の状態で膝を使いながら各所に突きを入れていく。
刀術では無い気がするが、膝と肘を使い全身をバネにし刀を加速させて突く。時には前足の膝の力でバックステップで一気に下がる。熊の攻撃を避ける。
弱った所で足を集中的に斬り、機動力を奪った後に、後ろ後ろへと廻り込み背骨を断ち、背中から刀を数度刺し倒した。参考にさせる為に時間をかけて倒した。
「「「「おつかれさま」」」」
「少しは参考に成ったかな?」
「はい」「お、おう」
少しは参考に成ったようだ。もう少し見学が必要かな。
熊が消えた後、ドロップ品と矢を拾う、矢は十本は折られてた。
四階層ボスのドロップ品はチョコレートだ。魔石の中にチョコレートが入っている。
「ミミィちゃんドロップ品をあげる。チョコレートだよ」
「わぁあ!チョコレート嬉しい」
ミミィちゃんはチョコレートをニコニコしながら受け取ってくれた。
一度ボス部屋から外に出る。誰も居なくなるとボスは五分か十分で復活する。
その間に休憩しながらミーティングする。
「もう一度同じように倒すけど、マエコちゃん今度は足を集中で射てくれるかな」
「はい、やってみます」
「足を狙えれば機動力が奪えるから、それから頭は狙わなくて正解だ。意外と避けられるから頭は」
「はい、有難うございます」
短い休憩後、再度ボスを倒しに行く。
俺はボスを誘き寄せ挑発する。
マエコちゃんは熊の脹脛に矢を射かける。
「マエコ、膝と膝の上が太いからその辺りを狙って」
「はい」
「膝なら機動力を奪えるし、太ももなら太い魔力線が有って体力を奪えるからね」
「魔力線ですか?」
「人で言う所の血管みたいな物だね」
「分りました。頑張ります」
ミーティングで足を狙うように言っただけだったのは失敗だった。
足のどの辺りを何故、狙うかも教えるべきだった。
だが不幸中の幸いと言うか声の届く範囲で良かった。
マエコちゃんは素直で良い子だ。教えた通り頑張っている。
マエコちゃんが矢を十五本も射る頃には熊の機動力が落ちたので今回は楽に後ろへ廻り込み止めを刺せた。
「弓の命中率も射るタイミングも良いね。とても良かったよ」
「有難うございます」
矢は足に集中して当たっている、矢は弧を描くため余程練習しなければ当たりもしない、射る時も自分のタイミングでは無くボスの止った瞬間に射ていた。これは簡単そうで難しい。よほど師も良かったのだろう。
矢とドロップ品を拾い一度外に出て休憩する。
「テイビトは俺と同じように出来そうか?」
「ああ、やれそうだ」
「弱るか機動力が無くなるまで、近づかず四、五m最低でも三mは離れて石を投げて気を引いていればマエコちゃんが弱らせてくれる。三mなんて一瞬だからな」
「あ、ああ十分注意する」
頭脳戦とも言えるが、逃げ腰で弱気な戦い方だ。苦情の一つも言って来ると思ったが、テイビトも頭は悪くない様で苦情は言ってこなかった。
「マエコちゃん、今度はテイビトに最後を任せるから、足を射て機動力を奪った後は腹部を狙い倒れる位まで弱らせてくれ」
「分りました。そのようにします」
「最初から頭部や腹部を狙って機動力の有る熊の意識がマエコちゃんに集中されても困る。足から狙い機動力を奪う作業は安全の為だ。守ってくれ」
「はい、ご忠告ありがとうございます」
ミーティングを終え再度ボス戦へ、但し、今回はテイビトとマエコちゃんだけで倒して貰い俺は見学だ。
マエコちゃんの白い髪を纏めている紐を解いて戦って欲しいものだが、髪を解いてもらう上手い理由が思い浮かばない。残念だ白い髪を靡かせながら戦う様子を見る事は出来ないようだ。
テイビトが気を引き、マエコちゃんが矢を射ていく。マエコちゃんの矢は回を追う毎に急所を的確に捉えていく。機動力を奪われた熊が手を振り上げ、隙の出来た腹部へ射ていく。
テイビトも焦らず無理せず熊が弱るのを待っている。
テイビトが斬り込んだのは、熊がうつ伏せに倒れた後だ。
「「「「おつかれさま」」」」
「初めてにしては上出来だ。焦らず倒れるまで待ったのは英断だ」
「お、おうそうか」
「人によっては、戦闘で高揚した気に当てられ焦り、待ち切れないものなんだがな」
「死にたくは無いからな」
「そうだな、こんな可愛い彼女が居たら死にたくは無いよな。ははは」
「そんなんじゃねぇ」
この二人なら無理はしないんじゃないかと思えてきた。
中途半端に戦い方を教えて早死にされても、目覚めが悪いが少し安心できた。
「マエコちゃん、テイビトと一緒に二、三度同じ様に倒してくれるか?」
「はい、がんばります」
その後、三度ボスを倒す所を見学させてもらった。
矢は半分以上折れてしまったが、折れた矢も回収する、鏃はまた使える。
ミミィちゃんにはボスは危険だと、何が有るか分らないと言い張り、手を繋いで見学した。本当は十分離れてるし俺も居る。危険は無いけど、俺が手を繋ぎたかっただけだ。デート中は出来る限り手を繋ぐべきだと思う。
小さな可愛い手だ。俺が護ってあげなければと思う。
バトルシーンは他とは違った難しさが有ります、書く事で実感しました。
これからも勉強します。




