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竜人の国

 俺達の旅は何日も掛けて小さな村々に寄り、ようやく森林から出た。

 森林を抜けた先に大きな湖が有り今日は湖の側で野営する事となる。


 皆は荷物を降ろす中で狩人は弓を持ち湖へと歩いて行く、湖には鴨が浮き風に逆らう様に泳ぎ止まっている。

 魚を見付けたのか鴨は水中に潜る、狩人は矢を(つが)え数呼吸置いて矢を放つ、水中から顔を出した鴨に矢が向かい鴨の体が水に浮いた所で矢が刺さる。

 俺は不思議に思い狩人の立って居た同じ位置に立ち、鴨の居た水面を見るが、ほぼ全反射して対岸に見える山の景色が映るだけで水中なんて見えなかった。

 狩人に聞いてみたが「経験の差」だと「生きる時間が違う」と、やはりエルフは不思議だ。


 湖では魚が跳ね、離れた岸には鹿が水を飲み小鳥が飛び回る。

 湖の周りには背の低い草が茂り、寝転がりたいのを我慢して先に魔王の荷物を降ろしハミと鞍も外す。

 日が沈む前に夕食や野営の準備をしなければ成らないので、ゆっくりもしてられないが少しだけ寝転がり体を休める。

 俺が大の字に寝ると、俺の腕を枕代わりにスチイも寝転がる。


 しばし体を休めてから野営の準備をする。と言っても俺とスチイはテントを持たないから魔王を風除けにして、その隣で厚手の布を敷き毛布に包まって寝るつもりだ。

 スチイと一緒に枯れ枝や落ち葉を拾い集め火を(おこ)し夕食の準備をする。

 皆で夕食を食べた後に、気に成った事を族長に聞いてみる。


「エルフの森林を抜けた様ですが、どちらに向かわれます?」

「あら? ノーバンは『行き先を知らずに旅をする事が楽しい』のよね? 楽しみを奪っては可哀想だから言えないのね」

 うぅん何日か前に言った様な気がする、多分俺が言ったのだろう。

 まぁ付いて行けば分る事だ、族長に聞いても遊ばれるだけの気がするから、これ以上は聞かないが歩いて来た方向から正面に見える山が少し気になる。


「では後を付いて行きますね」

「何処に向かってるか気に成らないのかしら?」

「えぇまったく気に成りませんね」

「それは良かったわ、しっかり後を付いて来てね」

「解りました黙って付いていきます」

「うふふ」

 遊ばれると思い強がっては見たものの、やはり気になるし話を(かわ)された族長がニコニコと笑っているから余計気に成る。悪い予感しかしない。

 族長の顔が悪魔に見える、悪魔に魅入られて行着つく先と言ったら地獄だ。

 今の俺にとっての地獄とはスチイとの別れで、族長と言う悪魔の笑みからは、そんな地獄の未来しか予想できない。


 俺達は野営した翌日は朝早くに出発し湖を回り、休憩をした昼過ぎには対岸に見えていた山を登り始めた。

 ある程度の予想はしていたが厳しい、山の勾配が急だからだ、ただ救いはエルフの森林と違い道が有る事とジグザグに登る事で勾配が緩やかに成る事だ。 

 それでも平地とは違い歩き難く延々(えんえん)と上り坂で体力的にも厳しい。


 山を登り始めてからはエルフの森林と違い蚊が居る、しかも俺ばかりが狙われていて俺の周りには常時、四、五匹の蚊が飛び回っている。

 夕方に山小屋に着き安心したが、一、二匹の蚊に入られた、小屋には網戸も有り入り込んだ蚊を落とせば安心出来そうだと腕を(まく)り待ち構えるが、蚊は俺の耳元を飛び回る仕方なく音を頼りに叩く、が自分の耳まで強く叩き耳鳴りがする。

 俺は蚊と壮絶な戦闘を繰り広げ、ようやく勝利を手にして休む事が出来た。

 俺だけ小屋から出ないで出来る事で協力させてもらうと言い外に出る事を遠慮させてもらった。


 翌日はオシロイ花の種の様な物を潰して水に溶き、何故かスチイの髪を白く染めてから遅めの出発をして旅を続ける。

 蚊が多い山での旅で俺だけ首や顔を布で覆う姿だ。

 蚊の対策も有るが山を登るにつれ口と喉は渇き気温も下がって来たからだ。

 皆は平気なのに何故俺だけ?と思うも黙って後を付いて行く。

 俺は歩きながら水を飲み干し肉をかじる、道草を食いながら歩くヤギと一緒だ、ついでにスチイにも水と干し肉を渡し食べる様に進めた。


 途中で休憩も取るが日の明るい内に人工的な策が見えて来くる。

 俺達が近付くと鐘が鳴り槍を持った数名の男が出迎えてくれた。

 出迎えに出た男を見て俺は驚いた、頭に角が生えているのだ、短いが二本の角が僅かに髪から飛び出している。鬼か?やはり世界は広い。


 俺は町に着いた事の安心感と始めて見る種族にワクワクしながら指示に従い、町の中を歩き案内されるが、案内人も町の人々も覇気が無いと言うか元気が無い様に思えた。

 広い屋敷の敷地内の離れの様な所に案内され、荷物を降ろし馬もヤギも預けて家の中へと入り俺とスチイは同じ部屋に入る。

 荷物を部屋に置いたら風呂を勧められ頂く事にした。

 風呂の後は少し寛ぎ(くつろ)夕食に招待されたが、とても静かだ。


 可愛い女中が居たから用意が良い事が気になり聞いてみたら、エルフの族長の先触れが有り受け入れの準備をしたらしい。

 女中は頭に三角巾をしているので見えないが女性にも角が有るのだろうか?


 山の幸が沢山の夕食後、族長の旦那にこの町の事を小声で聞いてみる。

「この町の人には角が有りますが『鬼』とか『鬼人族』なのでしょうか?」

「え? はははは」


 族長の旦那は笑いながら族長に視線を送ると、族長が俺に話し掛けてくる。

 どうやらエルフはママと同じ様に皆、耳が良い様で聞こえていたらしい。

「あらノーバンは私には聞かないのね?」

「族長に聞いたら素直に教えてくれますか?」

「当然なのね」

「では教えて頂けますか?」

「そうねぇ違うとだけ言っておこうかしらね」


 やはり素直に、いや俺の質問の仕方が悪かったのか?確かに質問には答えている。

 俺は族長を半分無視して、旦那の方を攻める事にした。

「御主人はお孫さんの話を聞きたいですよね?今夜どうですか?」

「おぉ、また聞かせてくれるかノーバンさん」


 旦那は(ママ)の話が聞きたい様で族長に(にら)まれている事にも気付かずにニコニコ顔だ。

「ノーバンはズルイのね」

「では一緒にお孫さんの話を聞きますか?」

「仕方ないわね」


 そんな話をしながらお茶を飲んでから部屋へと戻った。

 俺はスチイを寝かし付けてから族長の部屋へ行こうと思ってスチイと遊んでいたら族長夫婦が部屋に入って来た。

 宿屋でもない客間だから鍵は無い、遊んでいる所をしっかり見られてしまった。

 変な事はして無いがノック位して欲しかった。少し恥ずかしい。


「本当に仲が良いのね」

「そうですか?」

 何か弱みを握られた気がするが曖昧(あいまい)な返しをして誤魔化す。


「ノーバンさん孫の話を聞かせて貰っても良いかな?」

「……はい」

「良いのよスチイちゃんにも後で聞いて欲しい話が有るから」

 俺は族長の旦那の要望に「はい」と言いつつ族長に視線でスチイが居る事を伝えると、族長は「良い」と言うのでママの話をゆっくりと話し始める。

 今日はスチイも隣に居るから、最近のママの話でスチイの居た孤児院のシスターがママの店に来た時の話や、俺とスチイが町を出る朝のママとの話をした。

 手紙は俺が町を出る前日の夜に書いてるので出発当日の事は手紙には無い話の筈だ。スチイも俺の手を(つか)み何度も頷きながら話を聞いている。


「お孫さんはとても元気にしています、またお話しますね」

「「ありがとうノーバン」さん」

 長寿で孫も沢山居るエルフだけあって涙は見せないが喜んで貰えた様だ。

 喜びの雰囲気も余韻も壊すようで悪いが今度は俺が話を聞かせて貰う番だ。


「この町の事を教えてもらえますか?」

「この国はスチイちゃんのお父さんの母国なのね」

「えっお父さんの?」

「えぇそうね、ただお父さんの居る所はもう少し先の町ね」

 あぁそう言えばスチイのお父さんは竜人と言っていたか、俺が鬼だと思った角は竜の末裔の証か?


「でもスチイの頭には角なんて無いですよね?」

「竜人も角が生えるのは大人に成ってからなの、それにスチイちゃんはお母さんの血も流れているから角が生えるかは分らないのね」

 俺はスチイに角が生えた姿を想像して、何度もスチイの顔を見る。

 これで話は終わりと思ったが、まだ続きが有った。


「でもスチイちゃんのお父さんは忙しいから、会うのに少し時間が掛かるのね」

「そうなの?」

 スチイは俯いて小さな声で再度確認の声を上げたが、皆も俯いてしまい誰も答えられずにいるなか俺はスチイを優しく抱き寄せる。

 俺がスチイを撫でながら族長に目で話の続きを催促した。


「少し時間が有るから数日ゆっくりして長旅の疲れを癒したいのね」

「そうですね、スチイも疲れてるよな?」

「…………」

 スチイは話を聞いたせいか旅の疲れか元気が無い、族長夫婦も部屋に戻り話しは終わったと思っていたが、スチイを寝かし付けた深夜に俺は族長の部屋へと呼び出された。


「夜中に悪いわねノーバン」

「何か有ったんですか?」

 族長夫婦と俺の深夜の会談が始まった。どうやらスチイにも一緒に話すつもりだったが、「お父さんは忙しい」と言っただけでスチイが落ち込んでしまって話すに話せず深夜に俺だけを呼び出したらしい。


「今、竜人の間では原因不明の病が広まっているのね」

「え?それは人魚の国と言う話では?」

 俺が聞き間違えか勘違いをしていたと思い、少し驚きながらも聞き直してしまう。


「病気の種類は違うけど竜人の国もなのね」

「もしかしてスチイのお父さんもって事ですか?」

「そうなのよね、でもノーバンなら、もしかしてと思って連れて来たのね」

「そう言う大事な事は先に言って下さい族長」

 俺は怒りたかったが色々良くしてくれる族長が相手だ、少し呆れた風に「先に言って」とは言ったが本当は、どんな病気かも分らずに俺やスチイに移ったら如何したいと言いたい。


「あら『行き先を知らずに旅をしたい』と言ったのはノーバンよね?」

「そうですが……、まぁ良いです。それで()()()の族長でも分らない病気ですか?」

「そうねぇ症状だけは色々聞かされたけれど知らない病気なのね」

 族長が変な言い訳をするから、俺も嫌味で年寄りと言う意味を込めて『長生き』と言ってみたが、族長に何でも無い事の様に流されてしまう。


「どんな症状だと聞かされたのでしょうか?」

 その後も族長との話は続き竜人の病気の事を聞かされたが、死ぬ様な病気では無いと言うので少しだけ安心できた。

 族長も人伝との事で詳しい話が分らず、明日から少し別行動で町の人にも話を聞き病人にも会って()()事にする。

スチイちゃんはもう少しでお父さんに会えるがしかし、いったいどんな病気なのか?

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