アリとキリギリス
今話、ほぼ寝物語です。
族長にスチイの両親と過去の話を聞き終えた俺は、ママの話を族長に聞かせたいと思ったが、明日から旅に出ると言われたので準備をしなければならない、ゆっくりしていられる筈も無く、族長の部屋を後にしてスチイの元へ向かう。
スチイに何と言えば良いのか?「両親の居る所に旅に出る」いや言える筈が無い、その辺りは誤魔化して族長に任せよう、俺には荷が勝ち過ぎている。
スチイの元へ行き今からやらなければならない事を話す。
「スチイ、エルフの族長と一緒に明日から旅に出るから今から準備をしようか」
「はいパパ」
「え! 族長が?」
スチイは事の大事さが分って無い様で普通に返事をして来たが、スチイの面倒を見ていてくれた、おば……お姉さんはビックリした様に声を上げると何処かへ走って行ってしまった。スチイの事を見てくれていた事への御礼を言いそびれてしまう。
スチイと明日からの旅に備えて準備をしていると、夕方に魔王が帰って来た。一生迷子に成ってても良かったのだが、少し面倒だけど頭は良さそうだしスチイとも仲良くなって来たから連れて行くか。スチイに手を出したら只じゃおかないが。
「魔王、明日から、また旅に出るから宜しくな」「ヒンッ」
何時も道り話し掛けると理解しているのか、魔王は一鳴きして頷く。まあ良いか。
魔王は厩舎にスチイを引っ張って行き、塩の塊を咥えてスチイに渡している。
スチイに持たせてスチイごと舐める気なのだろうが、スチイが嫌がっていない様で塩の塊を抱えたので見ない様にして、旅の準備を再開した。見たら妬けそうだから見たくない。
旅の準備も整え終わり、俺もスチイも夕食と風呂を頂き後は寝るだけとなった。
俺はスチイと一緒の部屋だ、スチイの今夜の部屋着は、上は淡い桃色に下は白で大きく裾は足首まで捲り、袖は捲らずに手は殆ど隠れ少しだけ出た指先で、袖を摘んでいる。普段よりも幼く見えて可愛い。
スチイの部屋着姿を良く見ると、微かに下着が透けて見える、スチイの肩に両手を置き、スチイの体を上から下までじっくり見てしまう。
「どうしたのパパ?」
「いやスチイの体が少し赤い気がしてな」
「うん~パパとのお風呂と違って……少し熱いかも? でも平気だよ」
「そうか? 熱かったら誰かに言って最後に水で薄めてから入ると良いよ」
「はいパパ」
俺は何とか誤魔化しながら、微かに透けた下着に見入っていた。
下着は薄っすらだが太く青い横縞の柄が見える、一緒にお風呂に入れたら下着の着替えも手伝えたのに残念だ。俺の好みで頼み店長に選んで貰った下着だ。
諦めない、朝の着替えの時に手伝ってスチイの下着姿を楽しもう。今から明日の朝が楽しみで早起きしそうだ。
夜、一緒の布団で寝ているスチイが体を小さくして上目遣いに静かな声で話しかけて来た。
「パパ、御免なさい」
「急に謝って来てどうしたスチイ?」
「私の為にパパに迷惑かけて、また旅に出なきゃでダンジョンにも行けなくなっちゃって……その……」
俺にとっては「そんな事」って思うがスチイにしてみたら大変な事なのだろう、軽くあしらわずに少し考えてから返す。
「パパはスチイとの旅は楽しいし色々な人に出会えて、パパとスチイの両方の為に成ってると思うけど、スチイはパパとの旅は嫌かい?」
「うううん、嫌じゃないしパパとの旅は楽しいけど、ダンジョンで働かないと生きて行けないよねパパ?」
そう言えばスチイは一人で生活出来るように、ダンジョン冒険者を目指そうとしていたのだった、忘れていた。仮に俺が育ててもスチイが納得しないのか? 俺の生活の事も心配しているのだろうか?
「大丈夫だよ、こう見えてパパも少しは蓄え、今までに稼いだお金を貯めていたから」
「パパ本当? でもスチイも一緒に働いて足りない分は何でもするし、出来ない事は頑張って覚えるよ」
パパとは呼んでくれるが親とは思っていない様だ、面倒を見て欲しいとか育てて欲しいとは言わず、多分自立出来る様に成りたいとか俺に負担をかけさせたくないとかなのだろう。少し悲しいような嬉しい様な複雑な気分だ。
ただ「何でもする」という言葉は素直に嬉しい。家に戻ったらフリフリのメイド服を着せて、膝枕で耳カキをしてもらおう。そう考えるだけで少しは気が晴れる。
「旅はスチイの為でも有るけどパパの為でも有るんだよ」
「そうなの?」
「パパとエルフの族長は友達でね、パパも会いたかったんだ」
「会えて嬉しかった?」
俺も旅は楽しいとは言ってもスイチは納得して無い様なので、俺の為である事の具体的な理由を言ったら少しは納得してくれた様だ。
「ああ勿論嬉しかったし、明日からの旅でも色々な人に会わせてくれるらしくて、それも楽しみなんだよ」
「スチイの為だけじゃなかったんだね」
「スチイの為でも有るけどパパの為でも有るから一緒に旅をしてくれるかい?」
「はいパパ」
スチイは小さく成っていた体も声も大きくして、俺の服の胸の辺りを掴んで顔を埋めて来た。俺はスチイの背中を優しく撫でる。
スチイは、まだまだ幼いが頑張り屋だ、その全て含めて可愛く思う。
スチイは少し落ち着いたのかヒョッコリ顔を出して来た。
「パパ」
「どうしたスチイ?」
顔を出し見上げるスチイとその顔を見詰める様に見下ろす俺、スチイと俺の顔はくっ付きそうな位近かった。
「旅でいっぱいお金使っちゃったら、スチイが冒険者に成って頑張って働いて返すね」
「有難う、スチイ」
俺は「有難う」と言うが少し心配だ、スチイは頑張り屋だから働く事に頑張り過ぎてしまうのではと思う。
ダンジョン冒険者として頑張らなくとも体で返してくれても良いのだが、今のスチイに言っても「体で返すとは冒険者として働く事」だと返って来そうで言えない。
俺はスチイが大きく成ってから体で返してくれれば良いので、その前に変に頑張り過ぎて死に急がない様に少し話をする事にした。
「スチイはアリとキリギリスの話を知ってるかい?」
「はいパパ、働き者のアリさんと怠け者のキリギリスさんの話でしょ」
スチイは一般的なアリとキリギリスで話を聞いた様だ、俺はアリとセミとして話を聞いたが、どちらも大した違いは無い、が結末は数種類有るから先にスチイに結末は確認する。
「キリギリスが怠け者かは分らないけど最後はどうなるんだったかな?」
「キリギリスさんがアリさんを訪ねたけど食べ物を分けて貰えずにキリギリスさんは死んでしまうの」
スチイが聞いた話は食べ物を分けて貰いキリギリスが改心する結末ではない様で安心した、改心する話は本当の話じゃないからだ。
何処から話しても良いのだが結末の所を聞いたから、そこから話す事にする。
「キリギリスは冬に死んでしまうんだけど何故死んでしまったか分るかい?」
「夏の間に働かずアリさんの様に食べ物を貯めておかなかったから、食べ物が無くて死んでじゃうんでしょ?」
スチイは自信無さそうに疑問系で返して来た、何故死んだのか説明されて無いらしい。
「じゃあパパが子供には語られて無い部分も語られる、大人向けのアリとキリギリスの話をするから聞いてくれるかい?」
「はいパパ」
スチイは「はい」と言いながら布団の中でモゾモゾと動き俺に背を向けて俺の左手はスチイの体の下から、俺の右手はスチイの体の上から引っ張られスチイのお腹を抱えさせられ、その上にスチイの手が添えられる。どうやらスチイ也の聞く体勢が整った様だ。
スチイの顔が見られないのは残念だが、程よい弾力有るお腹の感触は良く、風呂上りの香りが俺の鼻腔をくすぐり何とも幸せな気分だ。
スチイの首元には下着の白い紐、肩紐だか吊り紐?がリボンに結ばれている、悪戯にリボンを解いてみたいがスチイに嫌われそうなので我慢するが、見ていると少し色っぽい。
俺はスチイの体の感触と香りを楽しみながら再び話し出す。
「キリギリスは餓えて死んだんじゃなく寿命で死んでしまうんだ、アリと違いキリギリスに冬は越せないんだよ」
「そうだったの?」
スチイは聞き返すような返事と共に、少しお腹に力を入れた様に硬くして俺の手を強く抑えて来た。子供に寿命や生死の話は少し重いのだろうか。
「そもそもキリギリスは食べ物が欲しくてアリを訪ねた訳じゃないんだ、最後に死ぬ前にアリが幸せかどうか見たかっただけなんだよ」
「え?」
スチイは明らかに驚いて大きな声を上げて顔だけ俺の方へ振り返って、もう少しで俺の顔とスチイの顔が当たる所だったがギリギリ避けた。危ない危ない油断大敵だ。スチイの聞いた話と少し違ったのだろう。
「夏のある日にキリギリスはアリに気を掛けて貰った事を覚えていてキリギリスもアリの事を気に掛けたんだよ、気にしてくれた者の事を気にするのは当たり前だからね」
「そうだねパパ」
スチイも初めは驚いた様だが話を進めると、少しは納得した様に顔を元に戻してくれた。
クリッとした可愛いスチイの目に見詰められて話すのも好きだが、少し照れくさい。
「キリギリスはアリが幸せである事を確認した後に『僕が死んだらアリさんに食べてほしい』と言ってアリの家の側でそっと息を引き取る、死んでしまうんだ」
「どうして?」
「キリギリスは『死んだ後に腐り異臭を放つ自分は嫌だから』と言っていたけど冬の食料が少ない事を知っていたからアリの食料に成る事を望んで、自分が死んだ後のアリの事も気にしたんだよ」
スチイが「キリギリスを食べちゃうの?」とは聞いて来なかった事に俺は安心した、そう聞かれても「アリは雑食で肉食も居る」としか答えを持っていないからだ。
「キリギリスさんは只の怠け者じゃなかったんだね」
「キリギリスも怠け者では無いんだけどね」
「そうなの?」
どうもキリギリスは怠け者だと思われているらしい、人の中には怠け者も居るが他の生き物は皆が何かしらの役割を持って頑張っている。多くの人に怠け者だと思われているキリギリスが不憫に思えてくる。
「そもそもアリも皆が思ってる程の働き者でもないんだよ」
「えぇぇ?」
予想はしていたがキリギリスとは逆にアリは凄く働き者だと思っているらしい。
スチイもそこまで驚かないで欲しいと思う、またスチイと俺の顔が当りそうに成った。危ない危ない。
「アリは十日の内の二日は一生懸命働いて、六日は程々に働いて二日は休みなんだよ」
「そうなのかなぁ?いっぱい働いてるイメージなんだけど」
元の「二、八の法則」とか「二六二の法則」と言っても難しいから簡単に話した。
スチイの言っている事も分る、多くの人が思う事だから当然に答えも有る。
「アリが家の中で休んでいる所を見られなくて、人には家の外で働いているアリしか見ないから、アリが凄い働き者だと思っているんだよ」
「そうだったんだね」
「アリも十日の内二日は休みで、人も週七日の内一日か二日はお休みだから同じ位だね」
「そうだね」
こでれスチイが働き過ぎる事が無くなれば良いのだが、頑張り屋だから微妙か?
「次はキリギリスの話をするよ」
「はい、お願いパパ」
スチイは起伏激しく強張ったり驚いたり疑う様に疑問を言ったり、今は次の話を催促する様な少し高い声で嬉しそうに返事をしてくれる。
話をしている俺も話し甲斐が有り、時間を掛けて話しながらスチイの体を俺の方へ少しづつ引き寄せて今は密着している、言葉で表せないくらい幸せだ。
多分スチイも俺もニコニコ顔だ、いや俺のはニヤニヤ顔と言うべきか?笑みが漏れてしまうのが自分で分る。
「キリギリスは自分の寿命が冬を越せないと分っていたから、一生懸命に赤い糸で結ばれた相手を探す為に音を奏でていたんだよ」
「キリギリスさんも頑張っていたんだね」
赤い糸が本当に有るかは分らないがスチイに理解しやすい様に話した。
「そしてキリギリスは最愛の相手と結婚して子供を残したんだよ」
「短い寿命でも幸せだったのかな?」
「寿命は神が決めた事で変えられないけど、その中で精一杯生きて好きな相手と結婚して子供も残せたから幸せで満足していたんじゃないかな」
「そうだよねパパ」
スチイの返事は「そうだよね」で終わってしまった、そこは「大きく成ったらスチイがパパと結婚してあげるね」と返してくれる所じゃないだろうか?そしたら抱き締めてキスの一つもして御礼を言いたいが……少し残念に思いながらも話の続きをする。
「キリギリスはアリも幸せに成れたか気に成って家を訪ねて聞いてみたんだ」
「何を?」
「好きな相手を見つけて結婚出来たかをね」
「アリさんも結婚出来たの?」
「アリは働く事だけで、赤い糸で結ばれた相手を探そうとしなかった為に結婚出来なかったんだ」
「そうだったんだ、可哀想だね」
俺も働くだけで結婚出来ない働きアリは少し可哀想に思うが、持って生まれた役割が有り大切な事だ、その生き方を否定は出来ない。
「結婚は出来なかったけどアリは『女王の子供の為に食料を運ぶ仕事が出来て幸せだ』と『女王の子供の為に一生働くんだ』と笑顔で言ったんだ。それを聞いてキリギリスは安心して笑顔で自分も幸せだと伝えたんだよ」
「そうかアリさんもキリギリスさんも幸せだったんだね」
方や短命で方や結婚出来ないが、スチイは両者とも幸せだと納得してくれた様で安心した。
「そうだね幸せは生き物それぞれに違うからね、人も何を幸せに思うかは人それぞれ違うんだよ」
「そうだよね……、パパの幸せはなぁぁに?」
「パパの今の幸せは、こうしてスチイと一緒に居られる事かな」
「今の?うぅぅん?……パパ大好き!」
スチイは時間差で「大好き」と言ってモゾモゾと動き背中を向けていた体を、俺の方に向き直り俺の胸に抱き付いて来た。まるで匂いを嗅ぐ様に顔を埋めて少しだけ顔を左右に振りながら擦り付けて来る。
スチイの事が堪らなく可愛くてスチイの背中とお尻を軽く抱きとめる。スチイは微かに「ビクッ」と反応して体ごと少し俺に近づく。お尻を触られた時の反応だ、スチイは本当に可愛い。
スチイの体は最近、柔らかいだけじゃなく張りと弾力が出て来て、とても触り心地が良い、背中は余分な柔らかさが抜けて微かに骨の感触が有り女性的な体に成りつつ有る、良い触り心地だ。
お尻はまだまだ小さいが、張りも弾力も出て来て少し大人のお尻に成った感じだ、女性の胸は触ったり揉んだりすると大きく成ると言うから、スチイのお尻も触ったり揉んだりしたら少しは大きく成り安産型に成るのだろうか?スチイの将来の為にも今からいっぱい触るべきだと心に刻む。スチイの為だ少ししか下心は無い、とは思いつつも顔はニヤケてしまう。
「パパはアリさんとキリギリスさんとドッチに成りたいの?」
「難しい質問だね、パパは人間だからドッチにも成れないけど、両方の良い所を真似したいな」
「どんな風に?」
「仕事をしてお金を貯めて綺麗で優しいお嫁さんを探して、スチイの様な可愛い子供も欲しいかな」
「ふううぅぅん」
スチイは目線を下げ何か考える様に唸りながら良く分らない返事をしている。
俺の回答が気に入らなかったのだろうか?切り替える為に俺もスチイに聞いてみる。
「スチイはアリとキリギリスのドッチに成りたいんだい?」
「スチイも人だからドッチにも成れないのよね?」
「そうだね」
「なら、このままパパの子供で居て大きくなったらパパのお嫁さん?」
可愛い回答だけど子供と親では結婚出来ないのだ、血の繋がりが無いから良いのか?
スチイも何故か最後は疑問系の様に語尾が上がって少し首を傾げていた。俺としてはハッキリと言い切って欲しくも有ったところだが、でも嬉しいから今は素直に喜ぶ。
スグ先の未来はスチイに本当の親を会わせて俺の手から離れてしまうのだから。
「有難うスチイ、とっても嬉しいよ」
「パパ大好き」
「パパもスチイの事が大好きだよ……。スチイは結婚してパパの子供を産んでくれるのかな?」
「うぅぅん?パパとスチイが結婚したら子供が出来るんじゃないの?」
「まぁそうだね、スチイが大きくなったらだね、それまで楽しみに待つよ」
「はいパパ」
スチイは俺に抱き付き、俺はスチイの背中とお尻を触ったままに、一緒の布団の中で眠りについた。




