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スチイの過去

 俺は心を落ち着かせて体制を整え話の続きを聞く事にした。


「ノーバンはスチイちゃんが苛められた原因は詳しく聞いたのかしら?」

「髪と目の色じゃないですか?」

「それだけじゃないのよね」

「はあ?」

 あらためて考えてみると孤児院に居た頃の話は必要で聞いたが、それ以前の事は聞いた事は無い。孤児院に来る位だから親に何か有っただろうと思い、辛い事を思い出させるだけだと聞いてない。俺は少し首を傾げてみせる。


「始めから話すわね」

「はい、お願いします」

「お父さんとお母さんはお互い族長に成る人なのね」

「はい」

 お父さんは竜人のペンドラゴンで、お母さんが人魚の姫だったか。


「その二人が愛し合ったらどうなるかしら?」

「幸せに成れるんじゃないですか?」

「そうはならないのよね」

「はい?」

 いやいや愛し合う二人が結婚したなら幸せな未来しかないだろう。

 現にスチイが産まれたと言うなら、幸せだったんじゃないだろうか?


「族長同士が結婚したらどっちの国に住むのかしらね?」

「境界線で良いんじゃないですか?」

「くふふふ、今度二人に教えてあげるわね」

「はあ?」

 あれ?今度教えるって会いに行けるって事だろうか?

 やはり直接話に来て正解だったのか、話の続き次第か。


「二人はどちらかの国に住む事に成ってしまうから全員に反対されちゃうのね」

「はあ?」

 反対する意味が分らん、会議とか国政とか多いのだろうか?それとも互いの国が遠いのだろうか?両国をあげて二人の結婚を祝えば皆が幸せに成れると思うのだが。


「でも二人は愛し合っていて反対を押し切って結婚しちゃったのね」

羨ま(うらや)しいと言うかカッコいいですね……、すみません続けて下さい」

 世界を敵に回してもって感じか、駆け落ちみたいな感じかな?

 真面目な話を聞いているのに、何だか少しニヤケてしまう。


「どちらに住まわせるかお互いの国で、いがみ合ってたわね」

「はあ?」

 国でいがみ合うって現族長同士とか大臣とか? それとも国民だろうか? 話の流れや族長の言い方から何となく全てなんだろうな。


「でも分かれて住まないわよね?」

「別居ですか? ないですね」

「そうね、出来ないから二人で決めてしまったのね」

「はあ」

 まあ皆の反対を押し切ってまで結婚した二人なら別居は無いよな。

 ただの物語ならこのまま幸せに暮らしましたで終わるのだろうが、スチイの苛めの事も有るしどう考えてもハッピーエンドの話じゃなさそうだ。


「竜人は山岳に住んでいて人魚は海の近くに住んでいるのね」

「はい」

「人魚は山岳では厳しいので竜人が海辺に来る事に成ったの」

「はい」

 まあ山岳に住むなんて人間の俺でも厳しいだろう、ましてや人魚と言うなら山岳処か海が無かったら厳しいんじゃないだろうか? 川でも良いのかな?


「結婚してしばらくは幸せだったのよ」

「しばらくはですか?」

 しばらくはか、この先の話は聞きたくないが自分の為にも聞くしかなよな。

 ただ次期族長を奪われた竜人は兎も角(ともかく)、王子と姫君が住む事に成った人魚の国は皆が快く(こころよ)受け入れてくれる筈だ。


「スチイちゃんのお父さんの前の族長も健全だったので、まだ何とか平穏だったのね」

「はい」

「しばらくして、人魚族に奇病が発生しちゃうの」

「はい」

「時を同じくしてスチイちゃんが産まれたのね」

「はい」

 奇病が発生した頃にスチイが産まれた? 本当に聞くのが怖くなる話の流れだ。

 族長も声のトーンを徐々に落としてくる、要らない心遣いをしてくれる。

 族長は怪談話でもしているかの様な雰囲気を出している。

 俺は話の流れと雰囲気に呑まれて、「はい」しか言えないし喉が渇いた気がして唾を飲み込む。


「初めは竜人が住み着いたからとお父さんが苛めにあうのよ」

「はあ?」

「でも我慢して三人は隠れる様に小さな家に引っ越すのね」

「はい?」

 竜人を苛めるとか竜人が弱いのか? ペンドラゴンで最強の筈だから、数と言葉の暴力なのだろうか?


「小さな家に引っ越したら子供同士で遊ぶ事も増えるのね、スチイちゃんがね」

「はい」

「その頃は人魚に奇病がだんだん増えるのね」

「はい」

 スチイの母親も人魚でスチイもその血を引いているが奇病は平気だったのだろうか? 両親も生きていると言っていたし、スチイも元気だ、奇病と言っても死ぬような物じゃないのだろうか?


「ある日、誰かが言ったのよ『吸血鬼に血を吸われるんだ』ってね」

「うん?」

「悪い奇病でね、死ぬ時に首から血が出る事があるの」

「はいぃ?」

 奇病、死ぬ時? 死の病気なのか、だがスチイも両親も平気? いやいや「吸血鬼に血を吸われる」だって? 嫌な予感しかしない、()き上がる不安や悲しみと怒りを(こら)えて話を聞く。


「全員じゃないのよ数人だけよ首から血を出して死んでいった人はね」

「はあ」

「でもスチイちゃんのせいにされちゃうのね」

「なるほど吸血鬼は首に噛み付くと、そこに金髪、赤目」

 何故そんな事に、怒りや悔しさや苛立ちと歯痒さとか、何かモヤモヤした気持ちが心の中で渦巻いているのが分る程だ。だが族長に怒りを当てて良い者じゃない、自分の中に押し込める。


「そうそう、なので苛められちゃうのね」

「なるほど」

「それでも家族三人は仲が良かったの」

「はい」

 そうか皆に苛められても家族は仲が良かったのか、それだけが救いか。


「時が経ち今度は竜人の族長が大病を患っちゃうのね」

「はい」

「竜人は人魚に次期族長を帰せと、せまるの」

「はぁ」

 次から次へと、その場に俺が居たなら……、いや何も出来ないか?

 何とかしてあげたいと思うも、過去の話しだし、その場に俺は居なかった。


「苛められても貧乏に成っても三人は仲良く暮らしてるの」

「はい」

「でも、最後は力ずくよね、元々竜人はそう言う力の種族なのね」

「はい」

 やはり力任せの種族なのか、エルフの狩人が言っていた気がする「エルフの弓を引けるのは力任せの竜人位だ」と、やはり強いのだろう竜人は。


「お父さんは連れて行かれちゃうのね」

「はい」

「でも子供は吸血鬼で奇病の元だからと置いて行かれちゃうの」

「え?」

 うん? 家族ごとじゃなく父親だけを連れ去ったって事か? 話し方からしてそうなのだろうが仲の良い家族を引き離すなんて……聞きたくなかった。


「残されたのは母と子だけど今まで守ってくれていたお父さんが居ないのね」

「はい」

「お母さんは必死に守ろうとしたけど守りきれなかったのね」

「はい?」

 守りきれない?苛めからスチイを守るって事だろうか? 余計な事は言わずに大人しく先の話を聞いた方が早そうか。


「とうとう子供は村から追い出されちゃうのね」

「え?」

「母である族長候補が探しに行かないように子供は隠されちゃうの」

「それって誘拐なんじゃないですか?」

 スチイを勝手に連れ出した俺が言えた事ではないが誘拐だろう。

 誘拐して最終的に孤児院に隠したって事だろうか? スチイは俺が想像していた以上に辛い思いをしただろう、下手に昔の事をスチイに聞かなくて良かったと思う。


「そうねぇ母はそれでも捜しに行こうとして軟禁されちゃうのね」

「軟禁ですか?」

「家族はバラバラで子供の行方は分らずだったのね」

「はい」

「でも、結局、奇病は無くならなかったの」

「とうぜんですよね」

 仲の良かった家族をバラバラに引き離すなんてどうかしている。

 そんなにも族長が大事なのだろうか?自分の事でもないのに目頭が熱くなるのを感じた。

 スチイに病気の原因が有る訳じゃないだろうに、苛めようが追い出そうが病気が無くなる筈がない。


「ノーバンはどうしたいのかしらね?」

「家族が生きているなら、そんなに仲の良い家族なら一緒に住めるようにしたいです」

 俺は拳を強く握って族長を(にら)み付けるかの様に強く見て思いをあらわにした。


 孤児院に入る前も、入ってからも辛い目にあっていたなんて、過去は変えられないが今からでもスチイにはいっぱい幸せに成って欲しい。

 スチイが俺に甘えていたのは両親に甘えられなかったからだろう、スチイの両親が生きているなら、本当の両親に甘えさせてあげたい。


「そうよね。ノーバン有難うね、スチイちゃんを探してくれて救ってくれてね」

「救えるかどうか、まだこれからですよ族長」

「あら、そうね、でも平気よ多分ね」

「何か良い考えでも?」

 俺は強い意思を持って決意をしているのに、族長は仕事が終わったと言わんばかりに涼しい顔をしている、少しだけ苛立たしく思ってしまう。


「子供が見つかったんですもの両親が救ってくれるわね」

「はい?」

「スチイちゃんはノーバンに(なつ)いてるから、ノーバンにも手伝ってもらうわね」

「はい何でも手伝いますよ」

 両親が救ってくれるとは言うものの、その両親も軟禁状態? なんじゃないのだろうか? まずは両親を救うのだろうか? 俺とスチイを救ってくれるなら何でもしようじゃないか。


「じゃぁ明日から旅に出るからお願いね」

「はい? 一緒にですか? 族長が?」

「あら、平気よノーバンが居るんですものね」

「分りました、お供します」

 族長が簡単に出歩いて良いのだろうか? まぁ次期族長のママは他国で働いている位だしエルフ族は自由なのだろう。


 俺はスチイの家族が幸せに成れるようにと思う一方、何処かでスチイが両親に会ったら俺の元を離れてしまうのだろうかと、何とも言えない不安の中に居た。

 仮にそうなったとしても俺とスチイの一緒に過ごした時間が無かった事になったり、その思い出が消えて無くなる訳じゃない。


 取り合えず今はスチイの幸せを考えよう。俺は邪念を振り払うようにそう思う事にした。

エルフは長生きなせいか話も長かったですが、やっと話しも終わり動き出しそうです。

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