エルフの森林、四章二十話
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俺達は、予想より大分日数が掛かったが、エルフの森林近くまで辿り着いた。
エルフの森林は兎に角広い、中に入ったら道も無く出られなくなると言う。
背中から弓を取って左手に掲げ、ゆっくり馬を進める。
ママに言われた様に弓を掲げてみるが、こんな事で本当に迎え入れてもらえるのだろうかと少し不安になる。不安は加速して余計な事も考えてしまう。
弓だけで矢を持って来てないから違和感しか無いけど平気だろうか?
いや良くないな。此処はママの事を信じて進むべきだ。不安を抑えて森林の中へと進む。
森林の少し奥まで入って行くと一人のエルフが静かに立っていた、見張りだろうか。
エルフ族も人間族と見た目はあまり変わらないが、耳が少し尖っているから髪の短い男なら見分けはつく。
五m位まで気づかなかった。いつの間にか現れたか、元から立っていたのかも不明だ。
森林で火事でも起こそうとしない限り、いきなりは襲ってこないから良いが、普通は追い返される。弓を掲げた俺をどう見るのやら。
「「こんにちは」気持ちの良い森林ですね」
「こんにちは人間族の旅人ですか?」
挨拶をしながら先にスチイを馬から下ろし俺も降りる。
すぐ森林には入れないだろうから馬の手綱を木にかける。
「はいそうですが、エルフの村へ案内お願い出来ますか?」
「訳知りのようですが、その弓を見せて頂けますか?」
「構いませんが友人からの借り物です大切に扱って下さい」
「分かりました」
ママからの借り物の弓だ。俺以外の奴に触らせたくも無いが森林に入る為だ、仕方ない。
「エルフ族の弓ですね」
「分かる物なのですか?」
見張りの男は弓を受け取ると、少し弦を引いたりしながら話してくる。
「勿論分かりますよ。矢はお持ちしてないようですが?」
「はい、ここに来る為に弓だけ借りて来ました」
やはりそうなるか。俺でも弓だけで矢を持っていなければ怪しむだろう。
「そうですか。私のこの矢を番えてあの白い木へ放ってください」
見張り人が指差したのは、真っ白な細い木だ。嫌がらせだよな?
距離も二十五m位有り、当てられる気がしないがエルフにとっては普通なのだろう。
弓を引いたが見た目以上に硬く、少しだけ全身と弓と矢にも魔力を流してみる。今度は軽く引けるようになる。行けそうだ。
「いきます」
「あ!」
なんだその驚きともガッカリとも取れる反応は、エルフじゃ無いんだから細い木に当たるわけ無いだろう。矢は少し左にそれて地面に突き刺さった。
「外れてしまいましたが当たらない前提で低めに狙ったので、近くの地面で助かりました。矢を取りに行ってまいります」
「はぁ」
何だろうさっきから反応と言うか変な顔してる。
「矢を有難うございます」
「いえいえ、こちらこそ取りに行かせてしまい申し訳ない」
俺が矢を取りに行っている間に、見張り人は少しは落ち着いたようだ。
「村へ案内します。付いて来て下さい」
「子供も居ますのでゆっくり草木の説明しながら案内して頂いて良いですか?」
「かまいませんよ」
変な要求してしまった。ゆっくりでと言いたかっただけだが何か言わなきゃとか変に考えすぎた。ずうずうしいと思われただろうか。
「着きましたよ。エルフの村へようこそ」
「「有難うございます」」
急に来て族長に会わせろは不審に思われるだろうから、まず分かる人って言っても族長とその旦那しか覚えてないから、お偉いさんを紹介してもらおう。
どう話を持って行こうか考えながら歩いていると、女性に声を掛けられた。
「あら、もしかして以前いらした方じゃないかしら?」
「はいご無沙汰しております。ノーバンです」
「久しぶりね。そうそうノーバンね。思い出したわ。見かけた顔だと思ったのよ」
「知り合いに会えて嬉しい限りです」
エルフのおば、いや、お姉さんは寄って来て俺の手を握り喜んでいる。
俺はお姉さんの顔は覚えてないが、相手が覚えていてくれたならと思い話に乗った。
「またゆっくりしていってね」
「とりあえず馬とこの子を休ませたいのですが」
スチイも長旅で疲れている筈だ。早く休ませてあげたいと思う。
「今、皆を呼ぶわね」
お姉さんは通る声で歌う様に皆を呼んでくれる。
馬を預け鞍は借り物だから大切に保管してもらえるよう頼む。
村では何人も俺の事を覚えてくれていて歓待ムードだ。
特にあまり若いとは言えない位の村人達に、ワイワイと挨拶した後、湯浴みを進められた。
エルフの国では大きな風呂を数件で使うように成っている。
俺とスチイは別々だ、俺は男風呂スチイは女性達に女風呂へ連れて行かれてしまった。
夕方にはスチイと一緒に集会所に案内され少し早い晩餐を楽しむ。
スチイとは別々のグループに囲まれそうだったので魚介類は食べさせないようお願いした、海は遠いと思うが川はある筈だ油断はできない。
女性は皆、髪が長く耳が隠れていて見た目は人間と変わらないが俺は気付いてしまった、耳以外にも違う点がある、人間の女性に比べエルフの女性は皆が小さな果物を抱えている、エルフの女性の中で一番大きな果物を持つ女性でもミカンを二つだ。
持っている果物の大きさで見分けが付きそうだ。果物の観察をしていたら美味しそうで涎が出てきてしまう。
メロンやスイカも良いが、ミカンやマンゴーもとても美味しそうで俺の好みだ。
早く族長に会いたいとも思うが先に疲れを癒したい、今は目を楽しませてもらっている。
「先ほどは失礼しました」
「いえ案内して頂きありがとうございます」
先程案内してくれた見張り人が何か謝って来た。
男に話しかけられても嬉しくない、女性のエルフに話しかけて欲しいと思うが女性陣は皆スチイに興味があるようだ。
「いいえ弓の件です」
「はぁ弓は得意では有りませんので気にしていません」
成る程な何を謝って来たのか分らなかったが弓の件か、もうどうでも良いや。
「そんな筈はありません」
「まぁ練習でもすればそこそこ行けるとはおもいますが」
宴でお酒も出ているから見張り人は酔っているのだろう絡む様に話してくる。
「この方はエルフの弓を扱える戦士です私が確認しました!」
「「「「おお~~~~!」」」」
「「流石「やっぱり「ノーバンね」」」
「……」
あちらこちらで盛り上がり騒がしくなった、意味が分らん。
「すまん驚かせてしまったようで」
「はぁ何の騒ぎですか?」
今度は見た目が中年っぽい狩人風の男が話しかけてきた。
「見張りの男には、やたら口外しないように言っておいたのですがお酒に飲まれたのでしょう、話してしまい騒がしくしてしまいました」
「何のことでしょうか?」
「村の入り口で説明は受けなかったのですか?」
「はい? 弓を放ってみろとは言われましたが外しましたよ」
「くくくく、普通の人間では放つ事すら違わず、無理すれば手を傷めます」
「はぁ? 女性のエルフからお借りしましたので女性用かと」
スナックのママが使っていた弓だ、使っている所を見た事も有るが簡単に矢を射ていた。
長生きのエルフとは言え女性が簡単に引ける弓だ、男でしかもダンジョンで毎日の様に鍛えている俺が引けな方がおかしい。
「エルフの弓は特別製ですエルフ以外で引けるのは力任せの竜人位のものでしょう」
「はあ竜人?」
竜人なんて本当に居るのか? 角でも生えているのか、羽が有ったり鱗もあったりするのだろうか?是非会ってみたい者だ。
「それでも力任せ故に、明後日の方向へ飛んで行きます」
「それはそれは危ないですね」
「報告によれば白樺の木に二十五mほど離れて放って、かする程とか」
「まぁ難しいですね」
「十分に狩で通用します」
「有難うございます」
お世辞だろうエルフなら余裕で当てそうな気がする。
「後ほど試射のお誘いに参ります」
「はい楽しみにしております」
結局、何故騒いだのか良くは分らなかった、弓を引けるだけで凄いのだろうか?俺の場合はダンジョンで毎日の様に鍛えているから竜人並なのだろう。
朝ゆっくりスチイと一緒に起こされ、日も高く顔を洗い着替えて食事を頂いた。
午前中、昨日の狩人が弓の試射に誘いに来たので付いて行く事にする。
スチイには絶対に前に出ないように言い聞かせ試射を楽しんだ。
初めは弓を引ける事に驚かれたが、三射め辺りから手解きを受け少しは上達した気がする。
「エルフの弓は使えば使うほど馴染み魔力が染込む気がしますね」
「ほう驚きました、流石はエルフの弓を引くだけはありますな」
俺はママに借りた弓を使って試射している、だんだん慣れてきて意識して魔力操作しなくても軽く引ける様になって来た。
「……なにか秘密が?」
「本来は部外者に言う事ではないのですがノーバン様なら良いでしょう、お話します。エルフの森はダンジョンが出来る前、太古の昔から魔力が有るとされています」
「木陰で座らせて頂いても?」
「ええ勿論ゆっくりお話しましょう」
何だか雰囲気的に話が長くなりそうなので座らせてもらう。
「スチイおいで、一緒に話を聞こう」
「はいパパ」
狩人と俺の間にスチイを座らせる。
「では、エルフの森にはダンジョンの出来る前、太古より魔力あるとされています」
「はい」
「エルフの森林に他種族が無闇に入り込むと魔力に酔うと言われています」
「よう?」
「ふらふらしたり、気持ちが悪くなったり、頭が痛くなったりだね」
スチイの問い掛けに狩人は優しく教えてくれる、けどスチイに特別な興味がある様にも見えなくもない。
「広大では有りますが只それだけの森林なので、真直ぐに歩けば抜けられますが、酔った他種族の方は多くが少しずつ左左と周り、森から出れなくなり症状も悪化していきます」
「はい」
「ですから森林には見回りを配して他種族の安全を見守っています」
「成る程そのような理由が、それを他種族へ教え広める事で安全を守る事は?」
「難しいですね、察しの良い者なら酔うと言う事から魔力を疑い、欲深い者は魔力の篭った木々を全て奪い去るでしょう」
「十分に有り得ますね」
流石に長生きだ俺なんかの考えじゃ足元にも及ばないな。
「その森林にはエルフの子が生まれると必ず苗木を植えます」
「はい」
まあ人間でも金持ちはそういう事する人もいるから不思議じゃない。
何となく狩人はスチイをチラチラ見ながら話をしている気がする。
「自分の木が五百年以上魔力を吸収したら弓を作れるとされています」
「はい」
何となく多く魔力が多く含まれた方が良い弓になると?それが五百年とか気が長すぎる。
「ですが五百歳以上でないと弓を持てない様では困ります」
「そうですね」
釣られて答えたが五百歳以上で作っても、そこから数百年使えるから十分だろ。
「ですから両親か祖父祖母が使っていた弓を譲り受けます」
「使っていた?」
中古かよ、新品をプレゼントしてやれよと言いたい。中古を子供に与えて自分が新品を使うのだろう。
「エルフ族も木と同じように魔力の森林で育ち魔力が満ちるとされております」
「はい?」
うん?あぁダンジョンで魔物を倒して魔力の残照を浴びるのと一緒の訳か。それを五百年とか強くなれそうだ。
「五百年以上生きたエルフは新品のエルフの弓でも、ある程度使いこなします」
「はい」
エルフの事情ってやつか意外と大変そうだ。人間の年齢に換算しなくては今一つ共感は出来ないが。
「ですが二百歳を超えた大人のエルフでも新品の弓は扱えません」
「また不思議な」
「また中古の弓でも両親か祖父母の使っていた物意外では扱えません。ですから若いエルフは両親か祖父母の使っていた弓を譲り受けます」
「なるほど」
「そこで先程のノーバン様の『使えば使うほど馴染むと魔力が染込むと』言われた話と合致します、何も教わらずにその感覚や理解に驚かされたのです」
「たまたまです」
「エルフ族でもそこまで魔力を感じると言われた方はおりません」
「はい」
俺の場合はダンジョン生活が長く魔物の魔力残照も多く浴びて、魔力操作や魔力感知が人一倍だからだろう、下手な事を言わない様に注意しなければ。
「もう一つ失礼ですが人間族であれば数十歳で五十とも行かないエルフに比べ若くあると思いますが?」
「その通りです」
エルフに比べたら、人間なんて長老と言われる年でも子供と同じだ。年齢だけで言われると俺なんかガキ同然の存在だろう。
「血縁以外での弓はエルフでも若くして引く事は適わず、それを使いこなすノーバン様に驚いた次第です」
「ただの冒険者ですよ」
「ではそのように」
「スチイ、良い話聞けたね」
「はい、有難うございます」
「こちらこそ、聞いてくれてありがとう」
スチイが狩人の方を見上げてお礼を言うと、狩人は笑顔でスチイの頭を撫でた。
こいつロリコンじゃないか? スチイに対応が良すぎる。
今話の題名を「エルフの果物」とか書きそうになりました。
最近は主人公に毒されてる気がします、読者の方々もご注意を。




