ダンジョン
ダンジョンへとやって来た二人。目指すは四階層
ダンジョンの中へ出発だ。
「ミミィちゃん行こうか!」
「うん!」
地上一階、中央の集中エレベーター室へと入っていく。
エレベーターが数十台ある。エレベーターは一方向仕様だ。行きの下りと帰りの上りで分かれていて十階層毎にエレベーターは分かれている。また百階層用だけは特別仕様となっている。
「エレベーターに乗るよ」
「うん、分んないけど付いて行く」
エレベーターはギルドカードの自動認識で、搭乗者の認可階層までしか指定出来ない仕様だ。
「ここがダンジョン地下一階だよ」
「意外と人が多いね」
各階層ともエレベーター室周辺は、安全地帯となり魔物は入っては来ない。
各階層とも安全地帯には色々な施設がある。
「安全地帯から出て、草原の魔物が居る所に出るからね」
「緊張するよぅ」
「じゃぁフライパンは左手に持って、俺と手を繋ごう」
「恥ずかしいょ。けど良いよ、お願い繋いで」
良かった。これでデートらしくなった。顔がニヤけてしまう。
「一階層は草原に林がポツポツある感じで気持ちいよ」
「う、うん、そうなんだ?」
「大丈夫、魔物も弱いスライムで攻撃は体当たりだけで、当たっても赤くなる程度の物だからね、雨上がりとか大量発生しなければ比較的安全だよ」
「うん分った。手は離さないでね。片手で護れるの?」
そう言われ握った手を見た視線が、揺れるスカートへと移ってしまう。
スカートはミニのプリーツと言ったら良いのか、ヒダが瓦の様な一方向への連続した重なり方だ。ヒダの間隔は広めだ。ミニスカートが揺れている、最高だ。
もう少し視線をお尻の方へ向けると、ミニスカートの中から尻尾が顔を出して静かに揺れている。かわいい。
スカートは、可愛いお尻が隠れる位の、膝の半分までの長さに、尻尾はそれより長めだ。お尻から尻尾の先まで目で追ってしまった。誘惑だ。
「ノーバン!『ギュッ』」
「痛たた」
握られた手に力を込められた。少しビックリしたけど、気持ちいい。
ミミィちゃんが頬を膨らませて俺を見ている。
「ど、どうしたの?」
「ノーバンのエッチ!」
怒られてしまった。視線に気付いてたらしい。可愛いは悪魔の誘惑だ。
言うだけ言って明後日の方向へ顔を向けられてしまった。
「ごめんごめん、真面目にやるよ」
「もぅ頼りにしてるんだからね『ギュッ』」
再度、力強く握られた。不真面目だったから怒っているのだろうか?
一階層とは言えダンジョンだ。真面目にやろう。
包丁と鞘にはロックが付いていて、ロックを外さなければ包丁は抜けない。
ロックは片手で外せる仕様だ。包丁より鞘の方が高く付いた一品だ。
一度、片手で抜けるか確認し腰の鞘に収め、落ちてる石を数個拾う。
石を拾う時、視線は下からミミィちゃんのスカートに釘付けだ。
「林の中に居るスライムを、石を投げて誘き出すけど驚かないでね」
「うん、分った」
この間も手は繋いだまま離さない。
林の端辺りに軽く石を投げる。
強く石を投げたり、飛び道具は基本的に禁止だ。条件付で許可が必要だ。
「出て来たよ」
「任せて」
スライムが二匹出てきた。二匹とも俺の前で真っ二つだ。流石包丁。
叩き切るタイプの剣では、余程手入されていなければココまで切れない。
「スライムには可愛そうだけど簡単でしょ」
「う、うん」
初めてで驚いたのだろう声が強張ってる感じだ。
スライムは別名、紫陽花と言われ大きさも色も紫陽花に似ている。
大きさは紫陽花の花の一塊分位で両手に少し余るくらいだ。
色も紫陽花の様に七色に変われると言われるくらい何種類もの色がいる。
一階層は、俺の髪の色と同じ水色のスライムが多い。
魔石がドロップされた、水の魔石だ。
「一度手を離して魔石を拾ってみて」
「うん、これ水の魔石だよね?」
「そうだね。ミネラルの少ない普通の水だよ」
「こうして採れるんだね」
水の魔石はスナックでも使っているが、ドロップする所を見たのは初めてだろう。
水の魔石はお腹を壊すような純水は出ない。ミネラルの少ない普通の水、硬水、微炭酸、炭酸、強炭酸、等が主だ。勿論水以外のドロップもある。
「せっかくだから採れたてを飲んでみようか?」
「うん、楽しみ」
俺も楽しみだ。上を向いて口を開いて貰い、魔石を使ったらどうだろうか? 口から溢れたり、少し外し零したら、胸元に滴るのではないだろうか?
実に楽しみだ……が、ここはダンジョンの中だ止めておこう。
「今、コップを出すね」
「変な事、考えてなかった?」
「いやいやコップを持って来てたかなぁってね」
「そう?」
考えが読まれる気がして目を逸らして答えた。
勘が良過ぎるでしょう。それとも顔に出てたかな?
魔石を一つ使いコップを洗い、もう一つの魔石で水を注いだ。
「どうぞ、お嬢様」
「あ! やっぱり変な事考えてたでしょう?」
どうして分かる今の言動で、お嬢様呼びして機嫌を取っただけなのに?
そんな事をしながら暫くスライムを狩り、見慣れた頃、言い出してみる。
「今度はミミィちゃんに倒して貰おうと思うけどいい?」
「うん頑張って倒してみる。自分で水の魔石採ってみたいから」
「一匹だけ連れてくるから、フライパンを両手で持って叩いてね」
「うん、よろしく」
林に石を軽く投げると、スライムは二匹出て来たので一匹は倒した。
もう一匹をミミィちゃんの方へと誘う。
「えい!『バチッ!』」
「あっ!ちょっとビックリしたね」
「う、うん」
ミミィちゃんはスライムを倒した後、呆然としていた。
倒せたは良いが一撃で風船の様に破裂した。予想以上だ。
飛び掛って来たスライムに、フライパンがカウンターでジャストミート一撃だった。
今まで包丁で切って倒してたのに。フライパンで破裂したから驚いた。
「おめでとうミミィちゃん」
「うん、ノーバンのおかげだよ」
ミミィちゃんは、とても嬉しそうに喜んでくれた。
そろそろボスを目指そう。
「大きな光の柱が見えるでしょ」
「うん、綺麗だよね」
「あそこにボスが居るんだ、ここから十分位かな」
「行こうノーバン!」
「頑張って四階層まで行こうね」
「うん頑張る」
四階層までは子供の階層だ、順調に進み三階層のボス部屋まで来た。
「ミミィちゃん三階層のボスは黒くて小さめで早いんだ。もし苦手なら見ないでね」
「もしかして台所の黒い悪魔?」
やっぱり、この言い方は連想させてしまうよな、苦手な人は見れば結局連想してしまうし、仕方ない。
「一応スライムなんだけど苦手な人も居るからね、あまり見ないほうが良いかも」
「うん、分った。遠くから見てるね」
驚いて部屋から飛び出さなければそれでいい。
怖いのは飛び出していって行方不明に成ってしまう事だ。
「じゃぁ行くよ。すぐに終わるからね」
「うん、よろしくね」
言った通り戦闘はすぐに終わった。包丁の一撃で真っ二つだ。弱すぎて見せ場も無い。
「もう終わったよ」
「流石だね」
ミミィちゃんが近寄ってくる。
スライムが死んで魔力の残照が光りながら散っていく。この魔力の残照を浴び体に取り込む事により人はダンジョン内で階層なりの強さが増す。またダンジョンの外でも僅かながら魔力を使えるようになったりもする。
「ドロップ品まで黒いんだね」
「それね。コーラの魔石だから黒いね。子供には人気なんだよ」
「コーラなんだ美味しいよね。ここで採れるんだね」
ボスの黒いスライムのドロップはコーラの魔石だ。これを炭酸水の魔石と一緒に使う事でコーラが出来る。四階層までの中での人気商品だ。
「そろそろミミィちゃんも魔力操作出来るように成るかもね」
「魔力操作?」
ミミィちゃんは首を傾げてしまった。
魔力操作とは言っても急に強力な魔法が使えたりはしない。
魔石を使う事が出来る様になったりする。
「今まで水の魔石とか卵のように割って水を出してるでしょ?」
「うん」
「説明より、実際やってみようか」
「うん」
コップと水の魔石を取り出し、コップの中に魔石を入れる
「このコップを持って中の魔石に触れずに割って水を取り出すんだよ」
「どうやるの?」
ここで『コップごと岩に叩き付ける』とか詰まらない事は言わない。
魔力操作は感覚的な物だから説明が難しい。
「体の中の魔力を手に集めてコップを通して、魔石に割れろと念じながら送るんだ」
「やってみる」
十五分くらい、説明したり実際見せたり、魔力操作を教えた。
その甲斐有ってミミィちゃんも魔石に触れずに割ることが出来た。魔力で魔石を割ると魔石の魔力で出来た外皮は消えてなくなり、中身の水だけがコップに残る。
魔力操作の出来ない人は卵のように割り、中身を取り出すと外皮はしばらくして消滅する。
「ミミィちゃん頑張ったね」
「ありがとう。凄い、触れずに水が出せた。お店でも出来るかな?」
「そうだね。もう少し魔物を倒したらダンジョンの外でも使えるかも」
外で使えるようになるには個人差も有るから、はっきりとは言えない。
「もう少し頑張って外でも使えるようになりたい」
「うん分った。そしたらミミィちゃんにも少し狩ってもらうよ」
「うん頑張る」
ミミィちゃんはどうやら、やる気らしい。
三階層のボスを倒すと、ギルドカードにも魔力の残照が溶け込み、ボス攻略が登録されエレベータで次の階層へ行けるようになる。
ボスを倒したら一度中央の安全地帯まで戻りエレベーターにて次の階層へ行く。
中央へ戻る途中でミミィちゃんにも数匹狩をしてもらった。
そして四階層へ。
三階層攻略、いざ四階層へ
SS1 ミミィちゃんが抓るようになった理由
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