俺の子
旅に出る前の挨拶です。
ブックマーク有難う御座います。
必要な魔石とスチイの靴を持ちダンジョンの受付に向かう。
受付でダンジョンから持ち出す魔石と、買い取って貰う魔石に分けて出す。
お酒の魔石以外は僅かづつだが劣化する。長旅に成るかも知れないからロッカーに保管していた魔石の多くを換金してしまう。
量が多い為に預り証を受け取り、少し待つ事に成った。
預り証の紙をを見て、午後に商家で買った紙と鉛筆をロッカーに置き忘れた事に気付いた、待ち時間の内に取りに戻る。
受付に帰って来てしばらくすると、計算が終わった様で呼ばれて現金と持ち出しの魔石とその証明書を受け取る。
予想以上に現金が多く商家に寄る必要が無かったと思う程だ。
ダンジョンで出入り口で証明書と持ち出す魔石を渡し、ゲートを潜る。係員が証明書と持ち出す魔石の照合をして、ゲートでそれ以外の魔石の持ち出しが無い事を確認する。ゲートは魔石を持っていると反応する。
ダンジョン施設を後にして外に出ると日は赤くなっている。夕日を見て洗濯物を干してある事を思い出す。家に帰る予定ではなかったが仕方ない。
「スチイ一度家に戻ろう」
「はいパパ」
帰るならと思い、明日の朝食用にパンと卵とお惣菜を買って帰る。
家に帰り洗濯籠を持って裏庭へ行く。
洗濯物は一枚づつ手でハタキ、何度か振ってからスチイに渡す。
洗濯物は埃や花粉が付いているし、中に虫、特に蜂が入っている事も有る、スチイの服も有るから気を付ける。
スチイは受け取った洗濯物を、簡単に畳みながら籠に入れていく。
スチイに籠を持って貰い、俺は布団と毛布を持ち家に入る。
「ありがとうスチイ」
「えへへ」
スチの頭を撫でながらお礼を言うと、スチイは嬉しそうに目を細めている。
「パパはお風呂を掃除してくるから、スチイは自分の服を畳んで仕舞うんだよ」
「はいパパ」
俺はスチイにお願いしてから風呂場へ向かい掃除を始めるが、スチイが俺の事を追って来るのではと思っていた、が自惚れだったようだ、少し悲しく思うも、風呂の掃除を終わらせ居間に戻る。
スチイは自分の服を仕舞い、俺の服も畳んでコタツの脇に置いて、小さな体で大きい布団を畳んでいる所だった。
俺も手伝い布団と一緒にスチイまで畳んでしまった。
「パパぁ、スチイも畳んでるょぉ」
「ごめんごめん」
俺は謝りながら顔しか出てないスチイの頬を突ついて、『カワイイ可愛い』と褒めてから解放した。
「もぅパパの意地悪ぅぅ」
スチイが頬を膨らませ口を尖らせて、俺の胸を叩いて来たので、叩き終わるのを待ってから『ごめん、スチイ』と謝り抱き締めて背中を擦った。
スチイに許しを貰い一緒に布団を畳み片付ける。
「スチイ、夕食を食べに行こう」
「はいパパ」
今度は忘れ物をしない様に確認してから家を出る。
食事が毎日、同じ店になってしまうが俺は料理は得意じゃない、一人ならともかくスチイが居るから馴染みの店で安心できる所が良い。
「よう」
「いらっしゃい、最近良く来るな」
「こんにちは」
挨拶して店主の問い掛けにスチイをチラ見する事で暗に『スチイが居るから』と答える、スチイも挨拶している。
「子供に美味しい物を出してくれる優しい店主だよな?」
「分ってる飲み物はオレンジジュースで良いのか?」
同意を求める様に店主に言うと、スチイの為の料理だと理解した様で、注文を聞く事無く料理を始めてくれる。
なんだかんだで美味しい物を安く作ってくれる良い店だ、ま、適当にと頼むから野菜の芯をスライスした物や、肉も細切れだったり切れ端なのか不揃いだけど、それも美味い。
「スチイ違う物飲むか?」
「オレンジでお願いします」
「オレンジジュース二つと主食はご飯にしてくれ」
「はいよ」
ジュースを飲みながら待っていると、テーブルに料理が並べられる。
今日は天ぷらだ、俺には作れない料理で嬉しい、元々料理は得意でないし、焼く炒める茹でる蒸す位は頑張れば出来るが、煮ると揚げるは出来ないと思う。
煮物は食材も多く下拵えが大変な物が多い、煮ている間も長時間離れられない。
揚げ物は暑さと油だ、油は揚げ物用の良い油でないと美味しく揚がらない、その割りに使っても使わなくても劣化や酸化する、油の管理も大変だ。
揚げる時も暑いし火傷もする。炭火でも火加減や温度の管理も大変だ。
食事後スチイと少し休みながら店主と話をする。
「店主、明日からスチイと旅に出るから、しばらく来れなくなるが心配しないでくれ」
「何か有ったのか?」
店主は心配そうに、俺とスチイを交互に見ながら聞いてくる。
「いや何も無いがスチイに広い世界を見せたいと思っただけだ」
「なら良い、戻ったら嬢ちゃんに美味しい物を作ってやる」
「ああ、ありがとう、戻ったら顔を出す」
「有難う御座います」
戻ったら顔を出せと言っているのだろう、俺もスチイも、それに答える。
精算をして清酒の魔石を三つほど店主に渡した。多く渡すと変に思われるし返って気を使わせてしまうから少しだけだ。
「旨い物を出してくれる礼だ、飲むでも料理に使うでも好きにしてくれ」
「ありがたく受け取るよ、気を付けてな」
「「ご馳走様」です」
食事処を出た時には外は暗いくな成っていた。
暗い夜道をスチイと一緒に手を繋ぎ、行き付けのスナックへ向かう。
「「いらっしゃいノーバン」」
「おはようママ、ミミィちゃん」
「おはようございます?」
スナックの扉を開け入ると、ママとミミィちゃんが迎えてくれた。
スチイは夜なのに、「おはよう」と挨拶を交わす俺達に違和感が有る様だが、後で説明する、今は頭を撫でて誤魔化す。
「あら、小さな子よね」
「かわいい~」
ママとミミィちゃんがスチイに近付くから、俺が守る様に間に入る。
「あぁえっと、俺の子だ……」
「「……ええ~~!」」
俺が少し冗談を言っただけなのに、店内で二人とも大声を出して驚いてる。
「ちょ、ごめんごめん冗談だから! 二人とも驚きすぎだから」
「そりゃぁ驚くのよね」
「うんうんビックリしたぁ」
忘れてたが孤児院出身の子相手に、親子関連の話は不味かったか?
スチイを見てみるが、特に変わった様子も無い大丈夫だと思う。
「スチイって言うんだが訳有って俺が預かってる、帽子は被らせたままで端のボックス席でしばらく見ていて欲しいんだ、ミミィちゃん」
「いいよ」
ミミィちゃんは快く引き受けてくれる。
「スチイこのお姉ちゃんと向こうで待っててくれるか優しいお姉ちゃんだから」
「はい」
「いい子だ」
「じゃぁ一緒に行こうね」
「はい」
俺がスチイの背中を押しミミィちゃんに差し出すと、ミミィちゃんに手を引かれる、スチイは一度俺の顔を見る、俺は一つ頷きくとスチイは歩き出す。
「税金分も要らないから、これで適当に子供が喜びそうな物出してくれミミィちゃんにも、あ! 魚介類は避けてくれアレルギーかもしれない、頼む」
そう言ってママに魔石の入った箱を渡す。
「どうしたの? 隠し子?」
「まだ怒ってた? ごめんって謝ったよね冗談だから」
「怒ってないわよ、うふふ」
何処かまだ怒ってる様だけど言ったら怖いから流そう。
「先日のシスターの依頼が有ったろう?」
「ええ覚えてるわ? でも普通の子よね? 神の祝福が届かない竜とか人魚?」
ママはスチイの居る方を見て、首を傾げながら聞いてくる。
「ああ少し違うが吸血鬼だ」
「……また冗談でしょ怒るわよ」
「そうだなぁ半分冗談で半分は本当だ」
「教えてくれるのよね」
ママはカウンター越しに顔を少し寄せて聞いてくる。
「その前に面倒事に成るから先に謝りに来たんだ」
「あら私でも力に成れそうな事?」
ママは少し首を傾げながら、新緑色の綺麗な髪を靡かせ聞いて来る。
「成って欲しい事もあるが取り合えず、必然的に巻き込まれる可能性が高いから俺の事は只の客としてくれ」
「話の内容次第なのよね」
「あの子は孤児院の子なんだが訳有って俺が無理に連れ出したんだ、無理と言っても本人の承諾は取ったんだが孤児院には許可を取る暇が無かっただけだ」
「それで契約の話し合いの場に成ったお店が狙われるのかしら?」
「狙われる……までは行かないがシスターや司祭が話を聞きに来るかも知れん」
「そう? 大した事でも無さそうで安心したわ」
普通は教会の司祭が夜の店に話し来ないだろう
「それであの子の事だ、普通の子なんだが吸血鬼の見た目なんだ」
「見た目がね? 普通にしか見えないのよね」
「金髪で赤目なんだ」
「何それ、憧れちゃうわね」
「あの子の前でそれ言うなよ、ママの審美眼は認めるけど」
ママは何時もは大きくない茶色の目を、今は大きく見開いてスチイの居る方見ている。
「あら何かあるのよね?」
「髪と目の色だけで幼少から苛めにあってたらしい」
「いっそ本物の吸血鬼なら苛められなかったのよね」
「それ、多分エルフ族の感覚だから、あの子には言わないでくれ」
「あら難しいお年頃なのよね」
「先に言っておくが、あの子は女の子で髪はベリーショートだがその辺りも言わないでくれ」
「分ったわ」
「最初に言ったが、ママに力に成って欲しい事なんだが良いか?」
「何でも言って頂戴ね」
「あぁじゃぁ遠慮なく……しばらく旅に出る」
「え?! 何でもとは言ったけど方向性が違うのよね」
変な事は言ってない筈だが、ママに大きく首を傾げられてしまった。
「いや、続きが有ってママにしか頼めない事なんだ」
「あら嬉しいわね、依頼かしらね?、くふふふ」
ママは、しなやかで細く綺麗な指と手を胸の前で合わせながら微笑んでいる。間にカウンターが無かったら抱き締めてしまったかもしれない。
「明日からエルフの里に向かう事にした」
「里に入る手伝いをして欲しいって事なのよね?」
「あぁ顔見知りに先に会えれば良いが、知らない奴だと説明が面倒だからな」
「知り合いは居るのね?」
今日はママが何度も首を傾げている、特別な事を言っているとは思えないのだが。
「一応な、それで里に入る時の合図か識別とか何か有るなら教えてくれ」
「特に許可とか無いのよ、勝手に入って欲しいと思って無いだけなのよね」
少し考えてみるが、俺は目指し迷い込み入れたが、普通は入れない筈だ。
「何か簡単に証明出来そうな物か、一筆書いてくれないか?」
「良いわよ、お安い御用なのよね」
何か方法が有るのだろう、ママは引き受けてくれる。任せるしかない。
「ありがとう助かる」
「それで何をしに行くのかしらね?」
「ちょっと長に会いに行くだけだ、すぐに帰ってくる」
「御婆様にね~? 会ってくれるかしらね?」
ママは右手の中指と人差し指だけを伸ばし、右の頬に当て首を傾げながら、目線を落としているのに遠くを見ている様な目をして考えてしまった。
「そこは問題ない」
「あら大した自信だことね、でもね御婆様は滅多に人に会わないのよね」
ママは顔を上げてはくれたが目の焦点は合ってないし、指も頬に当てたままだ。
「長とは友人だ心配しないでくれ」
「あらあら、やっぱりノーバンは普通じゃないのよね、ククク」
ママがやっと普通に戻り、少し笑ってくれた。
「そうか?」
「御婆様はエルフ族が相手でも、あまり会えないのよね」
「そうか」
「ついでだから私の手紙も届けてくれるかしら?」
「かまわない、明日の午前から昼位には立つから其れまでに書いてくれれば届ける」
「御婆様は私の祖母なのよね、うふふ」
「成る程、どうりで似てるわけだ」
「うふふ本当に御婆様に会った事があるのね」
エルフの長とママは髪も目の色も確か同じだ、顔立ちも何となく似ている気がする。
「まぁな色々有ったがママも長には感謝した方が良いかもな」
「あら、いつも感謝してるのよね」
「そうかなら良い、また時間が出来たらその辺りも話す」
「楽しみに待ってるのよね」
ママに紙の束と鉛筆を渡す、一筆書くでも手紙も書ける。
「明朝ここに寄るから渡す物を用意しておいてくれ」
「ありがとうノーバン」
俺はママに知り合いの商家の連絡先を書いた一枚の紙を渡し話す
「俺が旅に出ている間に希少な酒を頼むなら、この紙に有る商家を尋ねると良い、そこの冒険者がワニ亀を倒したと言っていたし、七十五階層は行ける筈だ、珍しい酒でも予約しておけば特別料金無しで採りに行ってくれる筈だ」
「助かるわ」
大きい商家は敷地も棚も広く在庫は豊富だが、最近は贋物も多い様だし、在庫に無い物を頼むと特別料金を取られる。
「今日はボックスで少しゆっくりしてから帰るは」
「分ったわ、無茶な魔法使ってるみたいだから店でゆっくりしてね」
「普通の魔法だ無茶はしてないが……分るのか?」
「ノーバンの普通は他の人の普通じゃないのよね」
「ありがとう」
後半は会話が多く、間に少しづつ描写を入れたのですが、今度はテンポが悪くなり消してみたりです。
もっと沢山の小説を読み良い所を取り入れねばと思います。
次話も、もう少しスナックでの話が続きます。




