ぬるい湯
前日は風呂に入らずに寝てしまったので今日は朝風呂です。
もちろんスチイもお風呂に入れます。
孤児院からスチイを連れ出した翌日の月曜日、俺は朝日の明るさで目が覚める、日の出には起きようと思っていたが少し寝過ごしたしまった。
急いで風呂を洗って水を張り風呂を沸かす。
朝のバタバタを何事も無かった様にスチイを起こし、顔と手を洗わせ、うがいもさせて掘りコタツに座らせる。
季節柄、コタツとは言っても火も入れてなければ、布団も掛けてはいない。だがコタツだ。
コップに水の魔石を入れコップを通し魔石に魔力を流す、魔石の外殻が消えコップに半分ほど水がたまり、それにオレンジの魔石を入れ魔力を流してオレンジジュースを用意した。子供に大人気の逸品だ。
スチイにオレンジジュースを勧め飲み終わったら待つように指示し風呂に向かう、湯船には浸からずお湯を浴び洗って流して、湯船の湯加減を見ながら少しづつ湯を体に掛け流していく、少しぬるめのお湯にして風呂場を出る。
すぐ部屋着を着てスチイを風呂場に連れて、水の出し方と湯加減の調整を教えて自分で入るよう言いつけた、スチイの服は無いので昨日着てた服をそのまま着てもらうしかない。
スチイは幼くも女性って事だろう風呂には時間がかかった。覗こうと思う程に。心配でだ、下心は少ししか無い。
一緒に入り隅々までスチイの体を洗わせてもらえば良かったと、少しだけ後悔した。
スチイが風呂から上ったが、ゆっくりしたいだろう俺は席を外し風呂場へと向かった。
スチイの残り湯、飲んだりはしないが少しだけ手と顔を洗わせて貰う、良い香りがする気がするだけだ、スチイの成分が染み出てるかもしれないが、ただのお湯で何も変わらない筈だ。が、ぬるい凄くぬるい、酷い怪我でも有るのだろうか?急に心配になり高揚した気分が冷めてしまった。
心配になった俺は、すぐに戻りスチイの治療を始める事にした。
「スチイ今から見る事は誰にも言ってはいけない事だから約束してくれるかな?」
「はい」
「よし良い子だ」
自分の腕の血管に太めの針を刺してお茶碗に少し血を採る、血で右手に嵌めた手袋の甲と掌に命を中心に水と光と音の魔方陣を書き上げた。
それぞれの属性の魔石を手の甲の魔方陣に載せて手ぬぐいで巻き付ける。
「スチイ右腕を捲ってコタツに乗せて」
「……右手ですか?」
「右手だ、俺はスチイの味方だから安心しなさい」
スチイは微妙な顔をしながらゆっくり捲って腕を出す、そこには古くは無い痣が有り見ている俺の方が痛く感じてしまう程だ。変だなぁこれだけの痣を誰も気づかないのか?
確かに身の回りの事は一人で出来そうだが、それだけじゃない子供の力で出来るような痣とは思えない。
連れ出して正解だな。そもそも、それしかなかった、院内の苛めを院長に言って上から注意した所で苛めは無くならないだろうし、表面上無くなっても陰湿に成るか完全な孤立ににり苛めに変わりはない。よく我慢したものだ。
「スチイここの痣をよく覚えておきなさい」
「はい?」
俺はスチイの右手の痣を指差し状態を良く見させる、が辛いだろうとも思う。
「少し痺れたり痛かったり感じるけど動かず我慢するんだよ」
「……はい」
痛い事をされると言われて怖いだろうが、動かない事を約束させる。
右手の掌が痣に微かに触れる所で右手の魔力を操作し魔石を操る。
痣の上を少しづつ動かし五分位続けて止める。
「どうだ? 少しは良くなったか?」
「……え!……」
「少しは良くなってるな触るぞ」
「……触られても……痛くないです」
まだまだ一箇所だしそれすらも完全には消せていない。
「良く我慢したな、これが神の書の魔法だ」
「有難うございます何でも手伝いますから言って下さい」
スチイが『何でも』と言った、その思いを無駄にしない為にも、何かスチイに対する要求を考えなくては。俺の為で無くスチイの為にだ。でも嬉しさで顔はニヤケてしまう。
「それじゃ他の痣を治す時、痛いが頑張って、もう少し治そうな」
一時間位、治療を続けて魔石が空に成ったので終了する。
「良く我慢したな」
「はい平気です痛みより嬉しさの方が……」
スチイはポロポロと涙を零してる、治療の痛みは内側から走るからとても痛い事がある、色々な感情も溢れているんだろう、タオルを渡し、軽く抱きしめる。スチイの体は柔らかく暖かい。
「絶対に他人には言ってはいけないよ、いいね」
「……はい?」
「今は分らなくても良い、ただ誰にも話さなければ良い、スチイが強くなって同じ魔法が使えるようになったら分る事だから」
「はい」
効果の大きな魔法には大きなリスクが有る今はまだ言う時ではない。
今日の治療を終えた俺は、凄くぬるい湯だった風呂の事が気になり、沁みるような傷が有るのではと心配になり、スチイの全身を診察する事にした。
スチイは恥ずかしそうに服を脱いだが、そもそも上半身には下着つけていなかった。
スチイの体の隅々まで診察したが、水やお湯に沁みる様な最近の傷は見当たらなかった。
診察中スイカやメロンは無かったが、とても小さな可愛いサクランボを二つ見つけた、とても美味しそうで舌の上でコロコロ舐め回したいと思いながら我慢した、俺のじゃないスチイのサクランボだ。
治療に使った道具を片付け着替えた、朝食を食べてないのでパン屋に向う。
パンを二人分買い込み、冒険者ギルドに向かった。
「ギルド長は居るかい?」
「上でお待ちしていますのでそのままお上がり下さい」
「ありがとう」
受付に確認してギルド長室へ向かう。
「おはよう」
「おはようございます」
「遅いぞ」
「おう、用事があった」
「まあ座れ」
俺に続きスチイも挨拶をする、やっぱり遅かったか気には成ってたが仕方ない。
「お茶貰えるか?」
「今もってこさせる」
「助かる」
流石にパンは水分なしでは食べにくい。
「お茶をどうぞ」
「「ありがとう」ございます」
お茶と言ったら本当にお茶を持ってきた、パンを持ち込んでギルド長室で食べようとしている俺が言えた事ではないが、子供が居てパンも持っているんだ少し考えて欲しいと思う。
俺とスチイはパンを食べながら一息ついた。
「話を始めようか?」
「ああ、今朝早速シスターが来たぞ」
「シスター位なら無視で良いだろう?」
面倒なシスターだ流石は神の僕と言った所だな。
「だと良いんだが司祭が動く可能性があるかもしれん」
「司祭ならギルド長の力で何とか成るだろう!」
「それでも少しは相手の面子も立てなければ恨みを残す」
ギルド長の力でも駄目と成るとやはりそれだけの理由が必要か、穏便にと思って動いてるのに分らん連中だ。
「そもそも生きて行けない子供を連れて行かれて何が困るんだ孤児院は?、シスターに聞いただろスチイの事も?」
「今日シスターに聞いた話では、孤児院の子供は神の子として教会に人数が報告され、領主にも報告され領主と教会、両方から人数分の養育費が出るらしい、神に仕える者として虚偽の報告は出来ないそうだ」
一人くらい誤魔化して全員が幸せなら良いと思うんだが。
「あまり大事にはしたくないのだが、ギルド本部とか大司教とかもっと上の伝手は無いのか?」
「居たら苦労はしないし居ても動かすには見返りは要求される」
ダンジョンの中の事ならどうとでも成るが、外では俺には何も力が無い、正攻法で無いなら何か有り得るのか脅し賄賂、大事件、災害、人質、何か有る気がするが。
「何でも良いが大ニュースが無いか?人災自然災害事件事故お偉いさんの裏事情とか、世界では毎日何かしら有るだろう?」
「何する気だ?さらに大きい事に首を突っ込むきか?」
何か有る筈なんだ大災害か何かを鎮めて報酬としてスチイを貰うとかが理想だが、他にもスチイの新しい痣を確認させて黙らせる方法も有るが、皆が不幸になる可能性が有るから最後の手段だし、日に日に消えていく。
「大貴族の裏事情とか、スチイの養子縁組の線や就職丁稚奉公の線でも可能か調べてくれないか?」
「調べるが目の前の問題から目を逸らすなよ」
「ああ分ってるよ、この世界に神は確かに存在する、だからこそ何かある筈なんだ」
「教会相手にするのに神頼みとかやめてくれ」
この広い世界はダンジョンって言う不思議の塊が有るのに神を信じてる者が少ないのか?
「じゃ、またちょくちょく顔を出すから情報宜しくな」
「わかった、あまり目立つような事しないでくれよ」
「はいまた」
「また」
「失礼しました」
俺は軽く挨拶スチイはしっかり挨拶して出てきた、スチイのギルド登録も頼めば良かったか失敗。
「服と装備を買いに良くか?」
「はい」
服屋に向かって歩いてると雑貨屋が目に入り歯ブラシとか必要だなと思い雑貨屋へ入る。
歯ブラシ以外にも手拭や手袋など治療に使った物や、タオルやチリ紙等一人の時より使いそうな物は買った。
店をでて歩き出し、次に目に付いたのは化粧品店だ、スチイに化粧をさせる訳でもないが、子供だから肌に優しい石鹸を買った。髪用の石鹸も迷ったが買わなかった、スチイの髪が伸びてからで良いだろう。
色々とお金を使い過ぎたから、商業ギルドでお金を引き出してから高級服店へ向かった。
店に入ると店長が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ」
「「こんにちは」」
話が中途半端に切れてしまいました申し訳なく。
次話でスチイの服を選びます。可愛い服が良いかそれとも……。




